『仕掛絵本図鑑 動物の見ている世界』(ギヨーム・デュプラ)
忙しい先生のための作品紹介。第43弾は……
ギヨーム・デュプラ作、渡辺滋人訳『仕掛絵本図鑑 動物の見ている世界』(創元社 2014年)
対応テーマ 自然・科学
ページ数 34
読みやすさ ★★★★★
図・絵の多さ ★★★★★
レベル ★☆☆☆☆
生徒へのおすすめ度 ★★★★★
作品内容
動物ごとに異なる世界の見え方を、仕掛 絵本の形式で紹介する一冊です。冒頭で人間に見えている景色が提示され、その景色が他の動物にはどのように見えているのかが紹介されています。それぞれの動物の目の部分に扉のような仕掛 が施されており、開くとその動物が見ている景色と解説が書かれています。解説では該当する動物の、視野、色と光の見え方、動きの捉え方、視力などについてまとめられています。
おすすめポイント 動物たちに見えている景色が分かる絵本
今見えている景色が、他の動物にはどう見えているかを考えたことはありますか。嗅覚や聴覚に優れた犬は色の識別力が弱かったり、空から獲物を狙うワシは紫外線も感知できるほどの視覚を持っていたり。この絵本を読めば、それぞれの動物がどのような視覚情報を使って生きているのかが分かります。
この本の魅力は、なんといっても視覚に関する知識を、絵を見ながら学べるところです。例えば哺乳類動物のカテゴリでは、人間のように赤色を認識できる動物は少ないという説明が冒頭に文章で書かれています。そして各動物の紹介ページへと進むと、仕掛をめくることで赤色を見分けられない猫やネズミなどにはどのような景色が写っているのかを知ることができます。また、 各ページに描かれた動物たちは実物そっくりで、B4の紙面に大きく描かれており、とても迫力があります。デザイン面も内容面も優れた、 大人も楽しめる絵本です。
活用方法
動物はそれぞれ異なる知覚世界のなかで生きていて、どんな動物でも受け取っている情報は環境の一部にすぎない、という考え方があります。これは、生物学者のヤーコプ・フォン・ユクスキュルという人が提唱した「環世界」という概念で、2021年現在使用されている高校現代文の教科書に掲載されている評論テーマの一つとしても扱われています。
普段触れることの少ない生物学の話題のため、文章だけで読むと興味を持ちにくい、難しいと感じることもあるかと思われます。そのようなときに、副教材としてこの絵本を使うことをおすすめします。仕掛絵本の特質を生かして、生徒が選んだ動物のページの扉を開けてみるというような紹介の仕方もできるのではないでしょうか。
また、第一印象ではきれいな絵や仕掛けに目がいきがちですが、解説部分も充実しているため、普段は生物に関しての本はあまり読まないという生徒に読み物としても紹介したい一冊です。
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