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『アナと雪の女王』〜恐怖で変わる人〜

2021年8月26日(木)に浜松町、JR東日本四季劇場(春)で2021年6月開幕した、ミュージカル『アナと雪の女王』を観に行った。

『アナと雪の女王』は2013年に公開された、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ、53作目の長編アニメーションだ。興行収入は全世界で約12億円を超え、全世界のアニメーション映画の興行収入ランキングは2019年まで世界一であり続けた。(2019年公開の『アナと雪の女王2』が現在は1位となっている。シリーズ累計の興行収入は26億円以上)今や主人公アナとエルサは世界中の子供たちの憧れのプリンセスだ。

そんな超人気ディズニーアニメーション映画は2018年ブロードウェイで舞台化された。

私と本作の出会いはInstagramに投稿された1枚の写真だった。『FROZEN』の楽屋で出演者が撮影した写真。私はその投稿を見てブロードウェイでの舞台化を知った。舞台化を知った時、「あのアニメーションをどのように舞台化したのだろう」という疑問が私の心に湧き上がった。「エルサの魔法やオラフやスヴェンといったキャラクターたちの可愛らしさは舞台上で本当に表現できるのか?」と疑問を抱いたのだ。

舞台化を知ってから1年後、劇団四季による日本での公演が決定。私は心に湧いた疑問が気になり、劇場に向かった。

劇場に到着すると沢山の子供たちがアナやエルサの衣装を着て、入場のために列を作っていた。「ありの〜ままの〜」馴染みのフレーズを口ずさんで待っている子も沢山おり、アナやエルサ、そして『アナと雪の女王』という作品が本当に多くの人に愛されているんだなと思った。愛されているからこそ、舞台化によってファンを幻滅させないのかという不安も大きくなった。「頼む、うまく映画の世界を表現してくれ」と祈るような気持ちで開幕を待った。

雪だるまをつくるシーンで幕が開いた。紙吹雪やLED照明が巧みに使われ、エルサの魔法が舞台に姿を現した。エルサの心模様に呼応して表現方法が変わっていく。多彩な演出方法を見ているうちに、心にあった不安は徐々に消えていき、舞台の上で輝きを放つ魔法の数々や、人形を使ったオラフや、葉っぱを持ちラインダンスを踊るダンサーといった個性豊かなキャラクターたちの姿に魅了されていった。

そして舞台が閉幕する頃には、不安を忘れ、すっかりミュージカル『アナと雪の女王』の虜になっていた。参考に劇団四季公式の動画を載せておく。

舞台だからこそより伝わるものがあるのだと思った。またアナ雪を超えるアナ雪をつくるために、細部までこだわり抜いた作り手たちを尊敬した。

今回の舞台鑑賞を通して、「恐れは人を変えてしまう」ということを学んだ。第2幕の途中、エルサは「MONSTER」という歌の中で、制御できない自分の能力への心の苦悩を訴えていく。モンスターにはなりたくない、力を止めたいという願いを力強く歌うが、その思いとは裏腹に鋭く尖った氷が次々に聳え立っていく。エルサが自分の力を恐れていることで、鋭い氷は増えていき、人々を苦しめてしまう。

そしてかつてはエルサを女王と慕っていた国民たちも恐怖から次第に行動が変わっていく。エルサのことをモンスターと呼ぶようになり、恐怖を取り除くためにエルサを捕まえようとしたのだ。

恐怖に支配されていくエルサや国民の姿が、現代を生きる私たちの姿に重なり、胸がギュッと苦しくなった。コロナという見えない敵との戦いを続けているうちに、私たちもエルサや国民のように本来の自分の姿や、優しさ、寛容さを忘れてしまっているのではないかと思った。曲中、咳をしている人に怒鳴り散らす人や、外国人を目にして舌打ちをして車両を変えた人などを思い出した。そして私もまた同じようなことをしていないかと反省した。

第2幕の最後「Finale」でエルサとアナは「Let it go」のメロディに合わせ声を揃えて歌う。「暗闇と恐怖に別れを告げて、この世界を光と愛で満たそう」と。

光の見えない混沌とした今だからこそ、優しさや愛が必要だということをアナやエルサたちが教えてくれた。

オラフは溶けそうになりながら、アナのために暖炉に火を起こす時、「愛っていうのは…自分よりも誰かのことを大切に思うことだよ」とアナに説く。愛を持つことは難しいかもしれないが、少しでも優しくなりたい。ミュージカル「アナと雪の女王」を見てそう思った。

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