【映画感想】《悪は存在しない》
予告が始まってすぐから気になりつつも、
どうにも気が進まなかったり
やっぱり観たいと思い直したりを繰り返し、
結局観ることにしました。
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静かに始まった映画はしばらく台詞もなく、
都会に住む人も
自然豊かな街で暮らす人も
少し鬱々とした自然界に引き込まれていきます。
見る人によって
映像に映る自然の印象はきっと異なるでしょう。
私が好み触れる自然の姿とは違うその様が、
違和感を生んで新しい世界へ誘います。
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【悪は存在しない】という作品名じゃなかったら、きっと全体の見方と捉え方が変わったのではないかと思います。
穿った見方をするからこそ、
解釈が分かれる作品なのだと思います。
「え?そんな解釈の仕方?!」
レビューが興味深い作品はそうありません。
レビューを読み漁っても尚、
私の捉え方は変わりませんでした。
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少し前に、
漫画キングダムで
性善説と性悪説を問う件がありました。
桓騎の行いが引き合いに出されて始まったその問いに対するそれぞれの主張が腑に落ちながら、性善説と性悪説をどう捉えるのかは可変的であり定まらないものなのだと感じました。
【悪は存在しない】と思おうとすれば思えるし、肯定が勝るか否定が勝るかはその人のその一瞬による『かん』で成り立つものなので、問答は一生続くのだと思いました。
(※『かん』=感、観、勘)
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作品中はたくさんの『対』で溢れていました。
自然・人間
都会・田舎
よそ者・定住者
肯定・否定
静・動
明・暗
協和・不協和
はじまり・終わり
生・死
ですが、
これらすべての中に『曖昧』がありました。
人間は、
一言で言いきれない『曖昧』と
常に共生しているように思います。
善悪も然り。
その曖昧さとどう折り合いをつけるのか…
『曖昧』の傾きが
人間が生きる上で表面に現れる『違い』であり、
曖昧に対する似たような価値観をもつ人同士が
互いに引き寄せあって
また新たな曖昧をつくるのだと思います。
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「なんなんだ?」と自問すること、
「なんなんだ?」と他に問うこと、
永遠に続く「なんなんだ?」の無限ループの中で
懸命に生きていきたい🍀
そんなふうに思えた曖昧な作品でした。
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【悪は存在しない】とシンプルに受けとるも、
・善【悪は存在しない】
・【悪は存在しない】のか
・自然界において【悪は存在しない】
・【悪は存在しない】の解釈こそが悪である
・【悪は存在しない】と思うのか、思いたいのか、思えるのか、思えないのか、思わないのか
…など、
作品名の前後に思い浮かぶ言葉も人それぞれ。
悲しい物語と捉えるも
前向きな物語と捉えるも
人それぞれ。
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「これは、君の話になる」
自分を内観できる時間となりました。
観た人がいたら、
どう感じたのかぜひ聞きたいです。
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鬱々からはじまり
陰鬱におわった
生涯かけて考えていきたい作品でした。
時間をおいてまた観た後に問いたい。
【悪は存在しない】
その前後に綴る言葉を通して自分を知りたい。