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だから、なんで、そうなるんだよ

「タレント商法みたいで嫌なんですよね〜」

理解不能な言葉が私の目の前を横切った。これから話すことは、実際に私に起こったコト。

これはギャラリーでのオープニングパーティでの会話。エディトリアルデザイナーをやっている彼女のことが気になって私から声をかけた。

以前から私はエディトリアルデザイナーさんを尊敬している。膨大なページを脳内で処理しながら、紙のサイズに対して空間、レイアウトを加味して、テーマやイメージに合わせながらフォントの適正や間合いの使い方を匠に調整する。私には到底難しい所業だからこそ、彼ら彼女たちのことをリスペクトしてしまう。

制作に対する話や、デザインに対しての未来視座の話をした記憶はある。会話がおそらく弾んだのであろう。私はあるトピックを切り出した。

「OFS TOKYOとか行かれたことあります?」

私かわすると、このトピックはとっておきの切り札だ。お相手をデザイナーさんとしてリスペクトできる部分と興味軸がハマりそうな時にだけ切り出すようにしている。

この問いに対して彼女は数回行ったことがあると答えてくれた。そこで私はもう一歩踏み込んでみる。

「寺子屋という勉強会はご存知ですか?」

ここのタイミングで、会話の流れは一気に雲行きが怪しくなる。結論から言うと彼女はこの勉強会のことをよく思ってはいなかった。理由は著名なADの方々を引き合いに出しているのが面白くない点と受講者を顔で採用しているのでは?との見解があることを伝えてくれた、記憶がある。

ここで途中の会話を一部きりおっておきたい。

「顔採用との見解があるとおっしゃっていましたが、具体的にどのADの方が仰っていたんですか?それと、噂を聞いたとのことですがご自身の経験ではないという理解で相違ないですか?」
「それについては、答えられないです」

は?何故?というのが率直な所感。今回の件に関して問題点としては3つ。

1つは「噂」を信じているということ。可能性として自身の経験談である可能性も拭えなくないが、それであるならそのことをこちらに明示しておくべきだ。それと、圧倒的に信憑性に欠ける。何かに異議申し立てをしたいのであれば、リサーチをしてからでないと令和の荒波は乗り越えられないはず。世間話なら他所でやってくれ。

2つ目は「顔採用をしている」という点。結論からいうとあり得ないです。私は実際にこちらの勉強会の説明会に伺ってADの方々と対話を通じてこの勉強会への熱量を感じ取っている。正直、合否の細かいフローまでは追えてはいないので100%とは言い切れないが、噂を信じている彼女よりかは良質なインプットがある。その点を考慮して「あり得ない」と提言しておきたい。

3つ目は冒頭の「タレント商法」の指摘。講師でもある彼らの足跡を知らぬ、存ぜぬとは言わせない。何故ならOFS TOKYOに足を運んだ経験があると彼女は私に話をしているから。それであれば、どんなに過酷なクリエイティブ人生を歩んできているかは、想像に容易い。にも関わらず、それをネームバリューを持って呼び込みをする「タレント商法」の括りで認識している、彼女の思想は全くもって理解ができない。

以上の3つが到底承知できない部分である。が、加えて散々侮辱をした挙句「答えられないです」と逃避をされてしまった。『これが知識と教養の差か』そんなことをありありと見せつけられた気分は一周回って最高でした。

「結論からいうと顔採用ではないです。噂という点からリサーチ量が足りないことがお見受けされますね…ありがとうございます」

満面の笑みでそう言い残し、私はその場を去った。

その後も彼女は友人と軽食をその場で食べながら管理人の方と談笑をしていた。「良くもまぁ居られるな」彼女たちの神経を伺うほかなかった。

私は会場にあった日本酒を紙コップの半分より多く入れ3分で飲み干した。怒りをアルコールに消化してほしかったら、致し方ない。彼女のインスタグラムのアカウト名を書いた紙は誰にもバレないように引きちぎって丸めてゴミ箱に捨てた。

自分は激情すると怒りのボルテージが脅威的に上がってしまう。衝動を喉を使い震わせ怒号を会場に跳び交わせることだって出来た。ただ、それは出来なかった。本当に私にとってそこの場所が、そこには大好きな場所と、大好き人たちが居たから。

最近こんなことは日常茶飯事なので、流石に折り合いの処世訓を体得しなければと思いこの文章を書き殴っている。私は、もう彼女の名前を覚えていない数ヶ月もしたら顔も服も忘れる。そう思うと、元々私の人生には関係のない存在なのだ。

それと、彼女は東京藝術大学を卒業しているらしい。こういうことがあると、誰か1人の失態で学校そのもの品格も本当に下がるんだな。と沸々と思いながら一昨日のあの夜に、今、思いを馳せている。

ただ、明日にはもう、忘れる。

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