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データサイエンス講座最終回。「AIによる社会・企業の課題解決を考える」

こんにちは。MANAI 広報担当のヴィアナです。

2カ月にわたって開催した、中高生向けデータサイエンス「AI×10年後の社会とワタシの未来」。3月28日の最終回に出された課題は「AIによる社会・企業の課題解決を考える」。

これまで身に付けた内容を元に、AIを使って社会や企業が抱える課題を見つけ、その解決案を各チームごとに制作、発表してもらいました。プレゼンテーションの内容と、質疑回答、講師を務めてくださった『デロイト デジタル』執行役員・森さん、荒谷さんの講評などをまとめます。

チーム1「ごみ焼却場における分別の自動化」

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ごみ焼却炉の性能は自治体ごとに違うため「どこまで焼却しきれるか」が大きなポイントで、ごみ処理費用が高額で財政を圧迫しているところもあるのだそう。機械で破れなかったごみの袋は人が袋を破り、目視で確認を行うという地道な作業を行うんですって。また、分別がきちんと行われていないことも問題なのだそう。

そこでチーム1が考えた解決策がごみをAIに認識させ、収集所での分別を自動化するというアイデア。AIによく出るごみの画像を学習させ、自動化すれば人の負担は減り、財政も楽になるという考え。ごみ袋を市町村レベルで指定にする、政策にもごみ対策を入れる、というもので、日々の暮らしに深く関わっている課題を見つめた内容でした。

プレゼンテーションを聞いた生徒たちから出た質問も見ていきましょう。
質問1「どうごみを政策の主軸に置くのか。難しいのではないか」
回答「野党からの政策提案になる。徐々に行くのでむずかしくはないと考える」

質問2「画像だけの判断で分別の自動化はできるのか」
回答「まずAI、そして人という2段階でチェックを行う。経験のある職員とAIが行った分別の結果を見ると、AIの正確さは66%ほど。ふとんなども入れると70%以上という結果があるので自動化は可能だと考えている」

森さんからの感想は「AIが苦手な人へどう導入、定着させるか考えてあって良かった。実際僕たちの仕事でもいかに導入して定着させるかは大きな課題」でした。

チーム2「AIで日本の学校教育に物申す!」

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先生の質はピンキリで、教員免許の更新は10年に1回。これでは質を担保できないのではないか。声が小さくて何を言っているかわからず、全然授業内容が理解できなかったこともある。もっといい先生たちを増やしたいというのがこのチームが考えた課題。

解決策は、生徒からの提案として、フィードバックを取り入れることで客観的な視点を取り入れ、先生の質を上げるというもの。まず、生徒たちからは先生の授業についてアンケートを実施。「ここがいい」というポイントは具体的に動画で先生側へ共有し「こうしてほしい」という要望も伝える。教育委員会とも連携し、実際の動画を共有するなどして生徒、教育委員会と2段階で評価を行う。生徒からの評価はボーナス額に反映させる、という内容でした。

他のグループの生徒からの質問をまとめます。
質問1「生徒側から先生に対して意見が出るのか疑問。『良かった』とかないんじゃないか。白紙回答だったらどう評価に反映するのか」
回答「面白ければ書くことがあるはず。白紙回答に関しては、いいところがない、特徴がないと評価する」

質問2「教育委員会が最終評価をするという形でいいのだろうか。教育委員会は先生のいうことしか聞かないように思えるし、身内をかばうのではないか」
回答「生徒からの悪い評価が何度もあったら、教育委員会も動くと考えている。身内をかばう点などについてははっきりとわからないが、日本の教育のあり方の問題で答えられない」

質問3「AIを使うメリットはあるのだろうか」
回答「メリットはある。授業内容を録画し、アンケートでいいと評価された部分を自動的に抜き出し具体的に見せることで教育委員会やほかの先生の参考になる」

森さんからは「教育の目的は、みんなをやる気にさせることだと思うので、生徒が評価するという所が良い」とコメントいただきました。

チーム3「国民が十分に医療機関を利用できるようにするには?」

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この課題は実体験が元になっています。チームメンバーの家族が小指を骨折した際、病院に行ったがコロナが陽性かどうかの検査を行い、もし陽性の場合は手術が受けられないと告げられたそう。家族は陰性で治療が受けられたけれど、もし新型コロナウィルスに感染していた場合、治療を受けられなかったかもしれない。コロナ禍で医療体制が逼迫している中、コロナにかかっている人もそうでない人も、みんなが必要な時に医療を受けられるようにしたいというもの。

解決方法は、患者の症状にあった対処法を判断し、診断が出来る病院を振り分けるAIを使ってすべての人が医療機関を使えるようにするというやり方。3月当時、新型コロナ患者が多くなり、一般診療などの患者受け入れが難しくなっているというニュースが多数報道されました。その問題に対し、患者がいる地域の病院の空き状況をデータで把握する、病院側がAI判断用に必要となる患者データを出せない場合はSNSなどで病状を把握するなどの案が出されました。

出された質問をまとめます。
質問1「ただ患者を振り分けるだけなら、コロナは関係ないのでは?」
回答「院内感染についてやベッド数も考える必要があるので役に立つと考えている」
質問2「コロナは突然重症化する人もいる。AIではなく医師の判断が必要なのでは」
回答「AIを良くするには時間が必要。コロナの人に使って進化させる」

森さんからは「昨年、今年とみんなが体感した問題。他のチームとの違いは個人情報を扱っているところ。データサイエンスのプロも扱うのと同じ内容に触れたのは良かった」との感想をいただきました。

チーム4「アメリカの銃規制改革」

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アメリカでは銃規制を強化するか否かの議論が長く続いていて、1つの解決法として注目を集めているのがスマートガンという新世代の銃。センサーによるロック機能などを搭載し、登録された所有者以外は撃てない銃です。しかし、今の所一般的に使われているものがないのだそう。そこでチーム4はAIを用い、スマートガンをより良くすることで「現状何も進歩していないアメリカの銃規制の新しい一歩になったら」と考えたのだそうです。

スマートガンは確実に動作する認証方法がなく、警察などの法執行機関で用いた場合、確実に動作させないと命に関わる場面も出てきます。そこで指紋や静脈などの情報から銃の保持者の識別と、GPS、音声認識などで周囲の状況を判断し、安全装置を解除するか否かを判断するAIを搭載する、という方法などが提案されました。

他のグループからの質問は
質問1「スマートガンを買うメリットは何か」
回答「例えば1メートル離れないと発砲は無理、などの設定ができること、登録した所有者しか使えないため、盗まれて犯罪に使われる可能性がない」
質問2「アメリカでは銃による自殺が多いと聞く。スマートガンは自殺に使われやすいのではないか」
回答「○センチ以上接近すると打てない、などの設定をすれば防げると考えている」

森さんの感想は「まさかアメリカの銃問題が出てくると思わなかった。銃の本当に問題に触れていてとてもいいテーマだと思う」でした。

チーム5「無差別教育」

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アフリカなど発展途上国での教育格差に着目、学習意欲があるのに学ぶという選択肢がない子どもたちに学ぶ機会を与えることを課題に選んだ彼ら。発展途上国の中でもウガンダに注目し、解決法を考えました。

教師の質が高くなく、貧困で小さい頃から働く必要がある。災害や紛争、それに学校で習う言葉と家で使う言葉が違い学習に支障が出る、学校まで遠い、などたくさん課題がある中で重視したのは「学びたい人が学ぶ」という点。年令を問わず、無料で教育と職業の選択肢を提供する、というアイデアで課題を解決するのだそうです。

具体的には、学校を建設。教室でAIを使い動画で勉強を進めます。まず読み書きを教え、次は計算。このように段階を踏んで勉強を進め、ワークショップなどを通して興味があることなどを学び、それを総合的にAIが判断。生徒が何に興味を持っているかを分析し、仕事のマッチングをするというもの。学習段階では動画を視聴し、テストで間違えた箇所を繰り返して理解を定着させたところで、AIが学習範囲の小テストを作成し、その結果が先生に送られコメントするという仕組み。学校の図面もプレゼンテーションに入っていました。

このプレゼンテーションに対して出てきた質問は
質問1「貧しい国では子どもは働き手であることが多い。学ぶことに反対する人も出てくるのでは」
回答「学びたい人だけ学ぶことを想定している。1つの動画を見てワークをするのは1時間で終わる流れ。仕事との両立は可能だと考えている。自分の予定でできるよう、動画で学ぶことを提案した。自分の予定でできるため、学びが早い人は自分のペースでどんどん進められる」

質問2「学力のサポートはどう行うのか」
回答「質問室を設け、年令問わず質問があれば直接来てもらい、随時サポートを行う」

質問3「やりたい人だけやればいい、というのは解決にならないのではないか」
回答「貧しくても意欲ある人に場を提供したいと考えている。学びたい人だけに学んでもらうのがこのアイデアの目的」

質問4「学校を建てるとあるがそのお金はどこから出すのか」
回答「今の所、寄付などを考えている。また、衣食住のサポートも行い、生徒にお金をあげるのではなく物に変えて渡すことも想定している」
すべてのプレゼンテーションを見た後、森さんが総括としてまとめて感想を述べて下さいました。

森さんは「ステップごとに考えられていた所が良い。ステージ変わる時どう解決するのか。これはとても大切な観点」と仰っていました。

チーム6「AIによる粒子シミュレーション利用した空調最適化」

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こちらのグループも、メンバーに花粉症の症状が出た人がいたという実体験からの課題選択です。現在、ウイルス対策で換気が行われていますが、窓などを開けると黄砂やPM2.5などの汚染物質や花粉なども室内に流れ込んで来てしまうため、アレルギーを持つ人にとって大きな問題となっているのだとか。

そこで、AIでシミュレーションを行う空調管理システム・サービスで感染症や花粉症の改善対策だけでなく、有害物質対策をするという解決法を提案しました。

それぞれ違う部屋の規模や人の多さなど、換気の適切なタイミングと、どの窓を開ければいいかなどの情報が不足しているという点に着目。気温・湿度や人の流れ、花粉飛散情報などをAIに分析させ、点在している情報をまとめて提供するというアイデアです。

質問は
質問「花粉飛散情報のデータはいろいろあり、どれを使うかの判断が難しいと思うがその点はどう考えているのか」
回答「環境省のデータを組み込む考え」

森さんからの感想は「どんなデータが使えるか、いろいろ調べたと思う。そこがとてもいい。AIを利用するのにたくさんのデータを見て使えるか使えないか判断するのは大事なポイント」でした。

*メンターたちからの言葉

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「緊張しない方法に、3つの間というのがある。1つは時間。きちんと準備すれば緊張しない。2つ目は空間。スペースを感じると気持ちが楽になる。3つ目は仲間。信頼が生まれると、緊張しないし、緊張しても『みんなの前ならいい』と考えるようになる。この講座での仲間はいろいろあると思う。チームの仲間、メンターの仲間。仲間はいろんなヒントをくれる。ぜひここで出来た仲間にこれからもいろいろ聞いて行ってほしい」。

メンターを代表して、荒谷さんからはこんなコメントをいただきました。

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「みんなの『これが言いたい』が分かりやすくて良かった。社会人になってそこを伝えられていない人もたくさんいる。この発表、この先も見てみたいと思った。特にチーム5。提案が具体的だった。これからも、興味があることは突き詰めてほしい。この講座で出来た仲間と意見交換とか続けて欲しい」

最後に「10年後にやりたいことがわかった、という人」という質問が出ましたが、手を挙げた人はゼロ。「1人くらいいるかなと思ったけど」苦笑してらっしゃいました。

その後の懇親会では、現役データサイエンティストであるメンターたちに進路について質問する生徒が多かったのが印象的でした。

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大学進学を迷う学生に「でこぼこなキャリアを歩んできた人と、きれいに大学を卒業して就職した人、両方を見るといい」というアドバイスも。

初心者向けに、デロイト デジタルさんが丁寧に考えてくださった講義内容とサポートのおかげで、みんなからは「いろんなサポートがあって良かった。ありがとうございます」「最後の課題を考えるのが一番楽しかった」という感想をいただきました。

メンターのみなさんからは「親心が出た。もう講座が終わりなのが寂しい」という意見が出たのにじいんと来ました。

MANAI は、この講座で仲良くなった人とはこれからも連絡を取ってほしいと思っています。そのいい例が、チーム5の無差別教育。当日プレゼンテーションが終わった後もかなり盛り上がっていて、今もチームのみんながこのプロジェクトをどう実現させるか、かなり密なやり取りをしています。

「自分も課題の続きに取り組みたいな」と思ったら、ぜひ連絡をくださいね。みなさん、2カ月間お疲れさまでした!




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