情報の吟味をすることだ!(京大 霊長類研究所元教授の論文4本を捏造と判断 記載の実録がなし 朝日新聞 10月15日)
インターネットの世界では、フェイクニュースは常識になった。情報元としてインターネットを活用するのであれば、慎重に考えなければならないと誰もが思う時代になった。しかし、リアルな出版の世界や学術論文で、このような権威ある大学の、それもある程度有名な学者が、論文や著作で実験結果の捏造をするというのは、なかなか聞かない。随分前に、考古学の捏造が日本では問題になったことはあるが、それ以来のことではないか。
今回のことで分かったのは、どんな情報もある程度のバイアスがかかって世に出されるということだ。例えば、今回の件でも、実験の検証がなくとも仮説通りになっていたかもしれないが、それでは科学ではないのだ。しかし、そういうことが簡単に書けて、そして、誰が書いたかで流通してしまうのだ。そして、それを読んだ私たちは、簡単に騙されてしまうということだ。
こういうことは、実は、いたるところで起こっている。例えば、教育界では、アメリカの教育やヨーロッパの教育が、日本の教育よりも優れていると報道され、有識者と言われる人たちも声高に言っているが、果たして、
何を根拠に言っているのか、誰も言わないし、検証しようとしない。海外で見たことや経験談だけで語っているような場合が多いが、それが真実を表しているかどうかは、誰も問わない。根拠が、自分の主観にあるのだ。今回の捏造問題と何ら変わらないのだ。
◇私たちは、今回の件を境に、情報をしっかり吟味することだ。
同じような主題に対して、何人かの作家や学者の著作や論文を読む習慣をつけることだ。一人の学者や有識者の考えを鵜呑みにしないことだ。対局の意見を吟味することだ。そうすれば、簡単に騙されることはない。
【教育記事から教育を考える】
2021年10月22日(金) VOL.714
作者:中土井鉄信(日本教育コンサルタント協会 合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表)