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3syuume
ピーピー豆の悪夢
ちいさな頃からずっと、「ピーピー豆」(カラスノエンドウ)で笛を作るのが好きだ。
いい具合にふくらんだ豆を見つけると、いまだについ作ってしてしまう。小学生の頃などは、よく友達と競い合いながら作ったものだ。五つくらい口にくわえて一気に吹くと、ひとりでも大演奏会みたいな気分なのである。
そんな無邪気な日々を送っていたとき、僕は素晴らしいアイデアを思いついた。
「ピーピー豆をいっぱい採って集めとけば、いつでも好きなときにつくれるやんけ!」
思い立った僕は大きなゴミ袋を手に、形のいいピーピー豆を手当たり次第に採りまくった。
「よっしゃ! これでいつでもつくり放題や!」
僕はピーピー豆の精鋭たちでいっぱいになったビニール袋を、大事に押し入れの中にしまっておいた。
そして翌日。
「よし、さっそく作るぜ!」
喜び勇んで押し入れを開けると、信じられない光景が目に飛び込んできた。なんとあの緑色に輝いていたピーピー豆たちが、みんな真っ黒に枯れてしまっていたのである。
彼らの変わり果てた姿を前に、僕はただうなだれるしかなかった。
その日から僕は会う人会う人に、
「人間は自然から必要以上の収奪を行ってはならない」
と説き続けたことは言うまでもない。