「こんなもんピュッと行ったらええんや」
ある初詣の帰り道。親父が運転する車に、僕とオカンが乗っていた。
その車が小さな横断歩道の前にさしかかった時だった。親父が少し怒気を含んだ調子で、口を開いた。
「ここをよく車で走っとるやろ、ほんならな、この横断歩道で、子どもが信号のボタン押して渡りよるねん」
「……?」
僕はそれの何が問題なのか計りかねて、問いただした。
「押しボタン式の信号やから、押して渡らなあかんのちゃうん?」
「こんなもんピュッと行ったらええんや!道路の幅狭いねんから!」
……このような環境の中で、まっすぐ育った息子の僕をほめてほしい。