教育の大切さー旅で触れた異文化と教養で変えられる人生
旅が先か、カメラが先か
諸岡:前回、カメラマン谷口京さんのことをいろいろお伺いして、旅が動機になっているというところがあったんですけれども、そもそも、旅が先なのか写真が先なのか。
谷口:旅が先ですね。
諸岡:先なんだ(笑。
谷口:はい、旅がしたくて、写真家になりました。・・・と、思います。
世界遺産バーミヤン遺跡破壊について
諸岡:旅をしながら気づいたこととかってありますか?
谷口:アフガニスタンに行った時に、2004年ぐらいだったかな、アフガン戦争が落ち着いた時に行った頃に、バーミヤンに行ったんですね。
諸岡:はい。
谷口:タリバーンが石仏を破壊してしまったりとか。そこの地域はハザラ族の地域なんですけど、同じイスラム教徒なんですけど、迫害されていたんですね。で、迫害されていて、その迫害した立場のタリバーンが、彼らの土地にある仏教徒が作ったものですけど、石仏を破壊してしまったと。そのことについて、「タリバーンがやったことについてどう思う?」って聞いたんですよ。そしたら、そこに集まっていた人たちが、「神様だったら壊れないだろ?」って言われたんですね。「神様だったらダイナマイトでやられても壊れないじゃん。だからどうしたの?」っていう感じで言われて。
諸岡:えー。
谷口:僕は「いや、タリバンひどいことをしたよね!」っていう答えを期待してたんですけど、全然違うボールが返ってきて、バットでもうでボッコボコにされたような、フルボッコにされたような気分でしたね。
あ、こういう考え方があるのか、と。要するに彼らは迫害をされていて苦しかったんだけど、それでもタリバーン、迫害した側がやったことに対して肯定している訳ですよ。だってしょうがないじゃん、壊れちゃったんだもんね、みたいな。
その時に、ああ、やっぱり教育とか宗教・・・子供の頃から偶像崇拝を禁じられて、偶像とか写真ていうものを否定している文化だったんですね、アフガニスタンは。そういうところだから、彼らとそのことについて議論してもこれは全く埒があかないし、こういう価値観の人がいるんだなって、すごくびっくりしました。
諸岡:歴史のあるものとか、先人たちが作ったものを大事にみたいなことではなくて・・・
谷口:ない。はい。「神様じゃないから壊れちゃったんでしょ?偶像作った人たちがいけないんじゃない?」みたいな。そこに何の価値もないわけです。
教育があれば変えられる?
諸岡:そうなんですね。なんか、分からなくなりますね。彼らの中では確かにそれが教育されたことで真実なのかもしれないですけれど、私たち・・・まあ、いろんな世界を見てきてこういうものを大切にしたいと思う感覚が、なんとなく世界共通のものだと思っているけれども・・
谷口:そうです、その通りです。あるいは、違うものを認めるとか。そうなるとボトムから変えていくしかないんで。やっぱり、教育。他者を認めるとか、何かを大切にする、何に価値を見出すか、そこは大事だなと思いました。
諸岡:確かに本当に世界には、教育がもっとちゃんとあれば、あのー、アフリカの女の子の体を切られたりとか、
谷口:ああ、割礼ね。
諸岡:あと、アルビノの人たちが殺されちゃったりとか、そういう迷信でいろんなことが起こっているけれども、ちゃんとした教育があれば、いろいろ変えられることってありますよね。
NYで女性社会学と出会った、スーダン出身の女性
谷口:ありますねえ。僕のNY時代の友人でスーダン難民の女性がいたんですね。彼女はアメリカに移民してきたんですね。それが多分彼女が中学生のくらいの時だったんですけれども。で、アメリカの中学校、そして高校に進学して。で、高校卒業する時に父親に「お前、こいつと結婚しなさい」って言われて、エジプト人の弁護士と結婚したそうなんです。
諸岡:うむ。
谷口:やっぱりスーダンでずっと育って、それこそ女性の割礼があるようなところですし、部族単位で法律みたいなものがあって、そういう中で生きてきたので、彼女は父親の言うことに何も疑問を持たずに、そのエジプト人男性と結婚したらしいんです。
で、その結婚した後に、地域のコミュニティカレッジ、まあ、誰でも大学教育を安い値段で受けられるようにアメリカってコミュニティカレッジが自治体にあるんですけれども、そこで、入学して、女性社会学を専攻したらしいんですよ。そしたら、勉強していくうちに、「あれ?私の人生おかしくない?」って気づいちゃったらしいんですよね。
それで、彼女、しゃべり方もなんか「もうさ〜」とか言って。「やってらんないわよね〜」とかいって。「そのことに気づいちゃって、そしたらもう結婚なんか破綻よぉ」って。で、離婚して、親にも勘当されて、で、私アーティストになったのって。
でも、根っこはムスリムなので、普段からバーガーショップに言っても、僕がベーコンバーガーとか食べても、「あんた豚肉食べるの?キモっ!」みたいな(笑。根っこはムスリムなんです。戒律がやっぱりあるんだけれども、見た目もドレッドの、ザ・アーティストないわゆるアフリカンアメリカンな女性だったんですけれどもね、女性社会学を学んだことによってどーんとアイデンティティが変わっちゃった、ものすごい子でした。
諸岡:さすがNY!まさに教育、教養によって自分の人生をガラッと変えられた瞬間ですよね。そう言うのって本当、現地に行ってそこにいる人と話をしないと感じられない、得られない体験ですよね。
谷口:そうですね。
諸岡:あれですね、もっと若い人、海外に誘っていきたいですね。
バケツで旅する女の子
谷口:結構、女性一人旅、強烈に印象残ってるのいますよ。もう、バケツで旅行してる女の子とかいましたもんね。
諸岡:あははははは、すごい!バケツに何が入ってるんですか?
谷口:いや、パスポートから着替えから全部。最初日本人とも分からなくて。
諸岡:え、日本人の女の子でですか?
谷口:日本人です、日本人。
諸岡:すごーい。
谷口:で、聞いたら、アフリカからアルゼンチンに渡って今、北上中みたいな。なんでバケツなの?つったら、バケツだったら安全じゃーんって言うんです(笑。
諸岡:はははは、超越してる!!
谷口:どこでも洗濯できるし〜みたいな。別にお金入ってるように見えないでしょ?とかいって。おお、そうだねって。
諸岡:確かにー。
身を守るために・・・
谷口:モンゴルの地の果てのちっちゃな街で、いきなり日本人ですか?って後ろから声かけられて振り向いたら、竹刀持った日本人の女の子が、しかもモンゴル人の服着て立ってて。「何やってるの!?」って聞くじゃないですか。「いや、身を守るために」って、道場破りみたいな格好してて。
彼女は、一回オートバイで世界一周したって言ってましたね。で、今回は、馬を買って、馬でモンゴルからカザフスタン、キルギスタンの方にシルクロード旅するって言ってて。とりあえず、馬を買って半年間トレーニングして、お尻が痛いんですって言ってました。
諸岡:結論がそこなのが面白いけど、本当の遊牧民族ですね。
谷口:いやあ、おかしいでしょ!?まあ、コロナが落ち着いたら、弾かれたようにみんなまた世界を旅できる日が来たらいいですけど。
諸岡:体験してもらいたいですよねえ。
編集後記
谷口さん、旅がしたくてカメラマンになったとおっしゃる通り、アマゾンからヒマラヤまで本当にいろいろな場所へ足を運んでいらっしゃいます。お話を伺っていると、ついまた遠くへ行きたい気持ちがむくむくと沸き起こってきてしまいますが、今はコロナ、しばらくの我慢ですね。
ただ、やはり旅の体験から得られる学びは、人生の可能性を大きく広げてくれるように思います。そういえば、東大生には子供の頃に海外旅行を経験している人が多いことも少し前に話題になりましたよね。遺伝とか経済的な要素ももちろんあるでしょうが、知識と体験が結びつくことは何よりも強固な学びになるように思います。そして、他者を認める力にも。海外と言わず異文化を体験する機会を探して、積極的に子供を関わらせてみたいと、改めて思った今回のお話でした。
皆さん、いかがでしたか?よかったら是非、ここやYouTubeのコメント欄にも感想などいただければと思います!!
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