普通の子の中学受験、学力は2つの視点で見ていく
最近、学校へ向かう子どもの背中を見ながら、「そろそろ私も自分の道を行こう」と思えるようになりました。受験中はあれこれ手をかけ、必死に伴走していたので、子どもの人生か、自分の人生か、わからないような状態でした。念願のMARCH付属中に合格し、胸をはって自分の道を進んでいる子ども。私も他者の人生ではなく、自らの人生を歩んでいかなければと気持ちを切り替えつつあります。
ただ、今まさに中学受験の波にもまれている方にとっては、大事な伴走のさなか。気の抜けない毎日をお過ごしのことと思います。私自身、受験のど真ん中にいた時に、ちょっと気をつけていたのが、2つの視点をもつことでした。
ひとつは、「優しい視点」。親の愛といいましょうか、子どもの可能性をどこまでも信じ、「〇〇、まだ本気だしてないだけ!」と思い続けていました。今、この子はこのレベルだけど、きっと今後すごく伸びるはず。どんな学校だって受かるはず!と。実際、子どもをそう励まし続けていましたし、子ども自身も謎の自信をもっていました(笑)。
けれど、もうひとつ密かにもっていたのが「冷酷な視点」。冷静に、残酷に、子どもの学力をありのままに見る目です。中学受験を始めたばかりの頃は、親も夢見がちで「早慶だって、がんばれ何とかなるでしょう!」「テストの点が悪いのは、まだ受験勉強に慣れていないから」などと思っていました。けれど、半年、1年ほど経った時、それでも思うようにいかない現実に「あっ、これがこの子の現時点での実力だ」「非凡なタイプではなく普通の子なんだ」と、冷静に見れるようになりました。
人はこれを諦めと呼ぶのかもしれませんが、受験は「冷酷な視点」を親がもったところからが本当の始まりだと思います。きもがすわると申しましょうか、「今、この程度の学力なんだ」と納得できると、「じゃ、どこに穴があるのか」「どこを埋めたらいいのか」「今、どんな勉強法が足りないのか」など、戦略を考えられるようになります。
これが、「でも、きっと、うちの子なら、がんばってくれるはず!」と、いつまでも「優しい視点」だけで子どもをみていると、本人が希望するからと合格率が低く、過去問もとれない学校に玉砕受験してしまうパターンに陥りがちです。そういう場合に多いのが、第一志望以外はそんなに考えてなかった、第二志望以下に順番はないというパターン。本当にそれでいいんでしょうか?
ある難関の共立中を熱望していたお子さんの親御さんが、とても冷静な方で「受かる確率は1割程度」と考え、本人が希望する第一志望の試験を全回受けさせながらも、着実に受かって納得できる第二志望を用意し、そこに行くことになるだろうと淡々と話していました。ここにも、お子さんの夢を叶えてあげたいという「優しい視点」と、第一志望は無理だから現実的な第二志望を抑えにいくという「冷酷な視点」、2つの視点がしっかりと在りました。今、そのお子さんは、第二志望の学校で生きいきと勉強に励んでいるそうです。
特に、お子さんとの距離が近いお母さんは、私自身も含め「優しい視点」に傾きがちです。だからこそ、あえて「冷酷な視点」で子どもの学力をありのままに見る必要があると思います。「〇〇、まだ本気出してないだけ」と言っても、本気が出せることこそが実力であり、今の学力です。ただ、そういった「冷酷な視点」を子どもに見せる必要はまったくないと思います。私も子どもが少し点が良かったり、宿題をすぐにやりおえたりした時には、「エライ!」「さすが!」「天才!」と声をかけるのが定番の口グセ(笑)。子どもの前では、いつも「優しい視点」で子どものモチベーションが上がるような声がけをしています。
子どもを思うあまり、「冷酷な視点」で「だから、お前はダメなんだ」「こういうところが足りないんだ」と本音を伝えてしまう方(お父さんに多め?)もいますが、そういう姿を見るにつけ、「意味ないなー」「むしろ悪影響」と感じていました。親が子どものやる気を削いでどうなるんだと。子どもに対しては、いつも「優しい視線」であたたかく見守り、どんなときも味方でいること。そして、もうひとつの「冷酷な視点」で子どもの今の状態を見て、策を練るのが受験期の親の役目なのかもしれません。
今、うちの子どもは中学1年生で、数学はまだ私でもわかる範囲なので、たまに勉強をみています。そこで思うのが「数学のセンスないなー」ということ。もちろん、本人には言いませんが「冷酷な視点」でみるとそういうことになります(汗)。
それでも、毎日かなりの量の宿題をこなし、反復練習のおかげで先日の小テストでは満点をとったようです。もちろんこの時も、「さすが天才!」「トップ層、狙えるね!」と「優しい視点」からどんどん子どもを有頂天にさせる言葉を投げかけます(嘘ではなく、親として本気でそう思っているんです)。けれど、一方で勉強を一緒にしていてその理解力やつまずく問題をみていれば、将来、理系の中で戦うのは厳しいかなというのも、率直な想いです。もちろん、それを裏切ってくれればうれしいですが!
「優しい視点」と「冷酷な視点」。今、皆さんは、どちらの視点でお子さんを見ていますか?