『意見が言えない』『作文が書けない』は、もう心配いりません――ニュースで育つ、考える力・伝える力
先日、新中1準備講座でロサンゼルスの山火事のニュースを話題にしていたとき、ある生徒がぽつりと言いました。「なんで大人たちは、山火事が何度も起きているのに、しっかり対策をしないんだろう」
その素直な問いかけに、はっとさせられました。これは、大人の私たちには思い付かない発想かもしれません。と同時に、子どもたちの中には、私たち大人が見過ごしてきた本質的な「問い」を立てる力が、確かに息づいているのを感じた場面でもありました。
3月から、まなび研究所では小学5・6年生を対象に 読売中高生新聞 を活用した「意見を育てるニュース教室」を始めます。「意見を育てるニュース教室」は、これまで「新聞作文」として実践してきた講座を発展させたものです。
この授業では、「読む」「考える」「書く」の3ステップで、社会課題について考える力を育てます。まず、図表やイラストが多い記事を読み、課題の本質を理解します。その後、「なぜそうなるのか」「どうすれば解決できるのか」を考え、クラスで意見を交換します。
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この教室では、考えたことを文章にまとめる力も育てます。まずは要約から始め、少しずつ自分の意見を組み立てる練習へと進みます。書く量も、80字 → 120〜160字 → 200字と段階的に増やしていきます。書くことで考えが整理され、新しい発見が生まれることもよくあります。
第1段階:80字で文章を書く。一つの接続詞を使い文章をまとめる。(例)しかし(対比)、なぜなら(理由)、だから(結論)など
第2段階:120字~160字で文章を書く。具体例を示し、自分の意見とその理由でまとめる。
第3段階:200字で文章を書く。意見、理由、結論でまとめる。
「書く力」は、単なる表現技術ではありません。社会の課題に目を向け、解決策を考え、それを他者に伝える——その一連のプロセスを支える重要な力なのです。
ここで、余談ですが、以前行われていた「新聞作文」の授業での一コマをご紹介。
この授業では、食品ロスの記事をきっかけに白熱した議論が交わされました。「お店と協力して、売れ残りそうな商品を安く販売するシステムを作れば良いんじゃない?」という提案に、「でも、それだと貧しい人が『訳あり品』しか買えなくなるかもしれない」という反論が。その意見に「じゃあ、どうすれば公平になるかな?」と問いかけると、さらに深い議論へと発展していったのです。このようなディスカッションは国語や算数の授業では行えません。子どもたちの社会に向ける好奇心を育むことに大きく貢献していました。
受験のための作文指導を超えて、社会を変える力を育む。それが私たちの目指す教育の形です。子どもたちの「なぜ?」という問いかけが、文章となって結実し、よりよい未来への種となることを信じています。