リトル・リチャード『グレイテスト・ヒット 16』 ゴールデン・ジューク・ボックス・ヒット・シリーズ(OVERSEAS UXP-764-V)
見ての通り、リトル・リチャードの16曲入りのお徳用ベスト盤なのですが……テイチクのオーバーシーズ(OVERSEAS)レーベルから1980年代の中盤にリリースされていた「Golden Juke Box」という一連のオールディーズのベスト盤シリーズから出たものになります。CDとLPが同時発売だったらしく、ブックオフなどでCD版を目にすることも珍しくありません。テイチクレコードの洋楽レーベルであるオーバーシーズからは、かつてヨーロッパのヒット曲、ヒット歌手のレコードを多くリリースしていましたが、70年代にディスコ・ブームが活発になると、「ソウルドラキュラ」に代表されるような一発屋や実態のないグループのディスコ・ヒットをあれこれ輸入し、おそらくそのおかげでヨーロッパの小さなレーベルとのつながりができたのでしょう、時を同じくして有名アーティストのアンオフィシャルな音源をリリースするようになります。例えばデビュー前のビートルズが残したデッカ・オーディション音源であるとか、デビュー直後の荒々しいライブテイクが聴けるがとにかく音の悪いスター・クラブ音源であるとか。たとえアーティスト本人が歌っていても、後年になって弱小レーベルで拭き込み直したリレコ(再録音バージョン)が混ざったりしている場合もあって、いろいろと要注意なシリーズではあります。
ディオンヌ・ワーウィックやシュレルスなど、以前からもテイチクからレコードがリリースされていたアーティストはおそらくオリジナル音源だろうとは思いますが、それ以外はちょっと怪しい。エルヴィスなんて、いったいどこから音源を調達したのでしょうか。
このリトル・リチャードの16曲入りもご多分に漏れず、1950年代に一世を風靡した際のスペシャルティー・レーベル時代の音源ではなく、すべて移籍先のVeeJayレーベルでの音源。有名な曲はすべてリレコです。1965年の『Little Richard's Greatest Hits』から「She's Got Soul」「Ooh! My Soul」の2曲をカットし、さらに『Little Richard Is Back』から6曲を足して16曲にしたもののようです。ただ、例外中の例外として、リトル・リチャードはリレコだろうと相変わらずパワフルで、演奏も1960年代風にアップデートされたバージョン。すばらしいセルフリメイクで、これはこれで聴きものです。それならどちらかのアルバムを完全収録してくれればよかったのにと悔やまれるところですが、勢いのある楽曲が1枚に16曲も収められているのでお得な編集盤ではあります。
現在、リトル・リチャードのVeeJay音源はCD1枚に収まったコンプリート盤が出ております。
キングレコードの輸入部門のキングインターナショナルのサイトにも情報がありましたので、まだ手に入りそうです。興味のある方はぜひ。