ベガとレコード

織姫星のベガが瞬く日。

私はレコードプレーヤーを持って
いなかった

だって私、人生に音楽はいっときも
欠かせない。というような、
カッコいい人間ではないもの。

小さなスピーカーが内蔵された
プレーヤーを手に入れたのは

CDとは別テイクだという彼の歌を
聴きたいから。

やっぱり私は　彼の声の前では
即降参なんだよなぁ

宇宙物理学とは全然合ってないけど　

過去現在未来、あの世もこの世も　

方眼用紙のマス目上にある点だと
思ってる

点と点の間にピーッと線さえ引いて
しまえば

現在とあの世が繋がったり
過去とこの世が繋がったり
現在抜きで過去と未来も繋がれるとも
思ってる

安価のスピーカーから流れてきた
ザラザラの音は

まるでブラウン管テレビの深夜の砂嵐

その中から現れた彼の声が
リアルに２０００年してて

私が２０００年に戻ったのか彼が
２０００年からやって来たのか

でも確かに　私は点に線を引いて
過去を掴んだ

今見える織姫星のベガの光は　
２５年前　１９９８年の光

彼と私が大学３年生のときの光が　
実際に現在　目の前にある不思議

なんだやっぱり、あなたはここに
いるじゃない

写真に向かってフフッと笑う、
レコードは回る。