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図書館万歳!

一昨日の僕。書店Aに立ち寄り、新刊コーナーを中心にうろうろしていた。
新刊の単行本は高くて買えない。なにしろ僕の月のお小遣いは1万円なのだ。平野啓一郎さんの「富士山」が読みたいけれど頑張って耐える。

文庫コーナーへ行き、新刊の棚を物色する。
角田光代さんのエッセイ、天野節子さんの「他言せず」が気になる。他にも面白そうなエッセイや小説があり、気づけば4冊ほど手にしていた。一見、本物の読書家みたいだ。片手に4冊なんてかっこいい。

見れば見るほど欲しい本が増えていく。4冊ではおさまらない。でもお金のことを考えると全部は買えない。泣く泣く1冊棚に戻す。続けてもう1冊戻す。そして最後に手元に残った1冊も悲しいかな、棚に戻した。
うろうろしていた時間、およそ40分。書店Aのドアを出たときの気分は、傘を忘れた日に急に雨が降り出したときみたいだった。

昨日の僕。書店Bに立ち寄り、新刊コーナーを中心にまたうろうろしていた。
一昨日も見かけ、実際に手に取った本が並んである。やっぱり読みたい、買いたい。だけど昨日のことがあったので、欲のピークはとうに過ぎており、心はだいぶ落ち着いていた。

新刊コーナーをあとにして、文庫コーナーをうろつく。
美容師さんがはまっているという綾辻行人さんの館シリーズが目に留まり、手に取る。無性にミステリーが読みたい。あ、そうだ、法月綸太郎(今知ったが「倫」ではないんだ!)も読みたいんだった。棚に1冊だけ在庫があったので手に取る。

買っちゃおうかな……。

自分と相談しながら、しばし本棚巡りを続ける。
「幸せな家族 そしてその頃はやった唄/鈴木悦夫」に惹かれる。結局昨日も気づけば3冊手にしていた。

今日は買っちゃおうかな……。
財布と相談すること5分。
品出しをする書店員のように1冊1冊丁寧に元の場所へ戻していく。

そして何もなくなった――。

書店Bを出ると本当に雨が降っていた。傘を持ってこなかったので、僕のアウターと眼鏡はしっかりと雨をかぶった。視界が雨のてんてんになった。

消化不良だ。
2日連続でこのまま帰ってしまったら、ただでさえ便秘で困っているのに、鬱屈したものまで身体に停滞させてしまうことになる。やはり買えばよかったか。たまには我慢せずに買っちまえよ。悪魔のささやき。早く出てこいオレの天使。

「呼んだ?」と天使。
「呼んだよ。おせーよ。本が買いたいけど、小遣い減るの、嫌なんだよ」
「じゃあ我慢しなよ」
「そんな身も蓋もないこと言うなよ」
「身も蓋もあると思うけどな」

僕の小遣い1万円は、主にコーヒー代として支給されている。
もちろん自由に使えるが、毎日コーヒーを飲んでいるから、月で計算すると新刊の本は何冊も買えない。それに1万円のうち、最低2,000円は貯金(という名のヘソクリ)にしたい。

「やっぱり、買うのやめるわ」
「それがいい」
天使が悪魔に見えた。

「図書館に寄れば?」と悪魔みたいな天使がつぶやいた。
「あー、そうだな、いいこと言うな、お前」
「天使だからな」
オレの天使は偉そうだ。

それでも天使の助言どおり、書店Bを出たあと、図書館に寄った。
書店AとBで手に取った本がある!
欲しい本のうち、貸出中のものは勢いですべて予約した。手元には綾辻先生、法月先生の本がある。これを持ち帰ってもいいのだ。無料だ。財布のお金は減らない。ここは楽園だ。

おかげで今日もコメダでモーニングを美味しくいただいている。
図書館万歳!
天使よ、お前にも少し感謝しているぞ。
あとは、お小遣い5,000円アップの交渉を進めるだけだ。
交渉がうまくいく方法、なんかないかな?
「おい、聞いてる? 天使」

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