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劇症型溶連菌感染症(STSS)が急増中:子どもによくみられる「溶連菌症」とは区別が必要です



「劇症型溶連菌感染症(STSS)」とはどんな病気?

劇症型溶血性連鎖球菌感染症(STSS)は、溶連菌の一種であるA群 溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因で発症する感染症で、「ヒト食いバクテリア」と呼ばれることもあります。

STSSは、通常は細菌が存在しない血液や筋肉といった組織に溶連菌が侵入し、数十時間以内に手足が壊死したり、複数の臓器が機能しなくなるなどの深刻な症状が急激に進行(劇症化)し、発症した方の30%の方が死に至るという、致死率の高い感染症です。

溶連菌が劇症化する具体的なメカニズムは、まだ完全に解明されていません。

STSSは5類感染症に指定されていることから、すべての症例について7日以内に最寄りの保健所への届け出が義務付けられている感染症です。


STSSの感染者が急増中

STSSの全国での届出報告数は、2023年一年間で941人(速報値)でした。2024年6月15日までの全国の届出報告数は1060人(速報値)と、すでに昨年の年間届出報告数を上回っています。

また、今年に入ってから50件を超える届出報告があった地域は、東京都154件、愛知県71件、埼玉県70件、神奈川県63件、大阪府56件、千葉県54件でした。

STSSの患者数の増加の理由については必ずしも明らかではありません。
しかし、COVID-19の対策緩和以降、様々な呼吸器感染症が増加する中で、子どもがかかることの多い「A群溶血性連鎖球菌咽頭炎」の患者数が増加したことも、原因の一つである可能性があると考えられています。


「劇症型溶連菌感染症(STSS)」と「A群溶血性連鎖球菌咽頭炎」は似て非なるもの

一般的にみられる溶連菌感染症は「A群溶血性連鎖球菌咽頭炎」というもので、子どもによく見られます。

溶連菌は感染力が強い菌ですが、A群溶血性連鎖球菌咽頭炎の場合、抗生剤を服用すれば24時間以内に周囲への感染力が弱くなります。

STSSとA群溶血性連鎖球菌咽頭炎は、いずれも同じ溶連菌によって発症する感染症ですが、症状の重篤さと治療法が異なることから、区別して考えることが必要です。


溶連菌はどんな菌なの?

溶連菌は人間の体内に常在する菌の一つで、特にのどや鼻の粘膜、皮膚に生息しており、菌の侵入部位や組織によって急性咽頭炎や蜂窩織炎など様々な症状を示します。

ヒトに感染して症状を引きおこす溶血性連鎖球菌には、A群、B群、C群、G群などがあります。これらの中で、溶血性連鎖球菌感染症の90%以上がA群によるものといわれています。


どうやって感染するの?

溶連菌の主な感染経路は、次のようなものがあります。
 ・飛沫感染:咳やくしゃみなどの際に発生する飛沫を吸い込むことで起こ    る感染
 ・接触感染:細菌が付着した手で口や鼻に触れることで起こる感染
 ・創傷感染:創傷部位や傷口から菌が侵入して起こる感染

しかし、STSSは感染経路が不明な場合も多くあります。


STSSはどんな症状がでるの?

一般的な初期症状は、腕や足に急激に痛みが起こります。痛みが起こる前には、発熱や悪寒、筋肉痛といったインフルエンザ様の症状がみられることもあります。

溶連菌が皮膚から侵入した場合は、その部位周辺の腫脹、圧痛、疼痛、紅斑のような症状がみられます。

これらの症状の進行は非常に急激で、発病後数十時間以内には組織が壊死したり、呼吸状態の悪化、播種性血管内凝固症候群(DIC)、急性腎不全や肝不全などの多臓器不全(MOF)をひきおこし、ショック状態となり、約3割が死に至ります。


診断方法

血液培養や組織検査で溶連菌が存在すると診断が確定されます。また、血液検査では白血球の増加やCRPの上昇が認められます。感染部位の確認のため、CTやMRIなどの画像検査も行われることもあります。


治療方法

抗菌剤による治療が行われます。抗菌薬の第一選択薬は、アンピシリンやペニシリンGといったペニシリン系抗菌剤の注射薬ですが、細胞内移行性の高いクリンダマイシン注射薬が使用されることもあります。

しかし、抗菌薬による治療のみでは改善が困難な場合が多く、壊死した組織を広範囲に切除したり、免疫グロブリン製剤を投与するなど集中治療室での全身管理を要する場合もあります。


予防方法

溶連菌に有効なワクチンはありません。

通常の感染対策で感染リスクを最小限に抑えることが大切です。
 ・手指衛生:こまめな手洗いが重要です。
 ・咳エチケット:マスクを着用し飛沫感染を防ぎます。
 ・傷口のケア:傷口は清潔に保ち、感染のリスクを減らします。
 ・消毒:日常的に触れる物品や手を消毒することで、接触感染を防ぎます。


まとめ

劇症型溶連菌感染症は、症状が急激に変化し、致死率も高い感染症です。
重症化のリスクを下げるためには、早期に診療体制の整った医療機関で治療を開始することが重要です。

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参考資料

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/341-stss.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137555_00003.html
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html
https://www.niid.go.jp/niid/ja/data.html


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