ウィル・スミスのビンタ事件と「政治的に正しいエンタメ」の難しさ
昨日は米アカデミー賞の作品賞について書きましたが、アカデミー賞ネタの続き(⁉)
皮肉なことに、今年の米アカデミー賞で最も話題になり、注目を集めたのは、作品ではなく、ウィル・スミス(主演男優賞受賞)の司会者への平手打ち事件でした。
詳細は別のメディアでも書かれているので、ここでは詳しくは書きませんが、司会のクリス・ロックが、ウィル・スミスの妻のジェイダさん(会場にいた)を侮辱するようなギャグを言って、キレたウィル・スミスがクリス・ロックに平手打ちを食らわせた・・・というものです。
司会者はジェイダさんが脱毛症だったことを知らなかったという報道もありましたが、まあ、本人以上に配偶者の外見をネタにするギャグを言っちゃダメでしょうねえ・・・
ネット上では、ウィル・スミスに共感する声の方が多かったんですが、法律的には先に手を上げた方が圧倒的に不利になります(日本でも、少なくとも忠臣蔵の時代からそうですからねぇ……)。
「法律の問題じゃない!」と憤る人もいるかもしれませんが、法律は人を公正に裁くに長い時間をかけて形成されたものなので、不本意ながらも「ウィル・スミスの方がダメだったね」ということになってしまいます。
アカデミー側がウィル・スミスを非難したのも、そういうところが根拠になるかと思います。
この事件を紐解いてみると、単純に当事者2人の諍いではなく、アカデミー賞、いやエンターテインメント業界が抱える矛盾を象徴しているように思えてなりません。
近年のアカデミー賞は「政治的に正しい」ということが、非常に重視されるようになっています。
人種的な多様性・平等、ジェンダー平等、障がい者差別やルッキズムに対する批判 等々。
実際、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン監督が直前に不適切発言をした影響で(⁉)、11部門ノミネートされていたにもかかわらず、監督賞のみの受賞に終わってしまいました。
平手打ち事件に話を戻すと、クリス・ロックって、過去にも問題発言を結構やっているらしくて、要するにたまに炎上させる「毒舌芸人」みたいな存在だったようです。
(政治的正しさを追求しているアカデミー賞が)そんなやつを司会にさせるなよ‼ と思ったりもするわけですが……
その裏側には、最近のアカデミー賞の視聴率低迷があるようです。
話題づくりのためには、集客力のあるタレントを起用したり、刺激的な内容にしたりする必要がある。
一方で、政治的に正しいことが求められる……
というジレンマに陥っているんですね。
日本のテレビ番組でも同じことが起きていますね。
日テレ「午前0時の森」で出演者が「差別発言」をして、生放送から収録に変わったというのもありましたが、アカデミー賞と同様の構造ですね・・・
ネットの世界では、YouTuberなんかがルール無用のストリートファイトを繰り広げている中で、マスメディアには「政治的な正しさ」を担保しながら、人々を惹きつけるという、高度な技が求められているんですよね。
広告やPRの世界においても同様ですね。
ジェンダー関連の炎上は近年すごく起きているし、最近は人種問題や国際紛争がらみで炎上が起きることも増えてきました。
厄介な問題ですし、「昔はもっと自由にやれた」みたいなこと思ったりsもしますが、昔は昔で、その自由さによって傷つけられていた人、虐げられていた人もいたわけですから、まあ、時代の要請には適応していかなければなりません。
それはそうとして、クリス・ロックのギャグには会場から笑いも起きていたし、ウィル・スミスが暴力に訴えず、口頭で抗議をしていたら、「アカデミー賞は問題だ!!」となっていたと思います。
アカデミー賞は、ウィル・スミスとクリス・ロックに責任転嫁して、うまく逃げ切ったな・・・と思ったりもしますが、邪推し過ぎでしょうかね???
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