もっと楽しく茶文化を! 和文化コーディネート 茶雅馬茶道教室 鈴木美帆さん
日本の総合芸術である茶の湯の文化と職人の技と心を伝え、みんなで文化を学び守って行きたいと幅広く活躍中の鈴木美帆さんにお話を伺いました。
鈴木美帆さんプロフィール
出身地:東京都
活動地域:東京都内中心
経歴:子供の頃から茶道を学ぶ。高校生でドイツへ単身留学。海外生活を通して日本の魅力を再確認。 秘書を経て、茶懐石料理を学ぶ。茶道講師を務め、和文化を体験する“ご縁たび ”も企画。
現在の職業および活動:MIHO企画・茶雅馬茶道教室 茶道講師。
増上寺貞恭庵茶雅馬茶道教室、千代田区障害者施設モフカにて茶道体験教室、読売カルチャー京葉ららぽーと教室、幼稚園や小学生へ茶道教室、親子体験教室、海外企業茶道体験教室(中国、ドイツ他)
企業や外務省から茶道講師の依頼も多数。
日経カルチャー“ご縁たび ”企画プロデュース。
静岡茶発祥の地、足久保ティーワークス茶農業協同組合とコラボしたオリジナル日本茶も販売中。
座右の銘:「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
心と心が通い合う瞬間を創っていきたい
Q. お茶の文化を伝えることを通して、どんな夢や理想の未来を描いていますか?
鈴木美帆さん(以下、敬称略):文化と触れ合う場所を創っていきながら、みんなが輝ける小さなコミュニケーションの社会を創りたいなと思っています。
もともと私自身はお茶事が大好きだったんですね。小さな茶室の中でお茶一服を腹を割って味わって共有するという楽しみって、心を分かち合わなければできないと思うんですね。お互いの心の中のキャッチボールができると楽しいじゃないですか。
お茶事はコミュニケーションが取れお互いに分かち合える魅力があると思うんです。
狭い空間だからこそ、人がわかるし楽しさも共有できるし、人というものが落ち着ける場所が茶室であったりします。その場所をみんなで共有して、みんなで生きる場所として創れたらいいなと思っています。
Q. 夢に向けて目標や計画はありますか?
鈴木:東京タワーの側にある増上寺の『貞恭庵』という茶室に出会い、そこを茶の湯の文化を広げていける拠点として今の活動をしています。『貞恭庵』は幕末を生き抜いた徳川家十四代将軍 家茂公正室、皇女和宮さまゆかりの茶室です。
ご縁をいただいた大切な茶室をお預かりし、みんなで守っていきながら、お茶の魅力や職人さんの魅力に触れ、ひとつひとつの魅力を伝えられる人になれたら嬉しいし、そのことを通して誰かと繋がることや、誰かが誰かを助けることに発展していくのではと思っています。それが日本の文化を支える職人さんや作り手への大切な感謝の気持ちになるのかなと思います。
Q. 具体的にどのような活動をされていますか?
鈴木:貞恭庵では教室の他に毎月月例会を開催し、呈茶をさせて頂いています。
茶席ではお点前をもって良いおもてなしと思われますがこちらではお点前が主ではなく、歴史のあるお茶室をみんなで守っていき、気軽にお越し頂いてゆっくりして頂きたいということを目的としています。ご縁があるから一緒に集まっていると思うので、みなさまとコミュニケーションを取れる形になればと思ってさせて頂いています。
記者:だからあんなに温かい和やかな雰囲気だったんですね。
鈴木:そう言って頂けると嬉しいです。お茶というと、ちゃんとしないといけないというイメージがあると思うのですが、お茶という手段で茶室で寛ぐという一時を皆さんと共有したいと思ってさせて頂いています。
茶文化は肩肘はるものではなく、日常に行われていたことが始まりです。
日本の総合芸術はみるだけではなく、現代も使え活かせるものであると考えています。お茶も普段の生活の中で活かしてほしいと思っています。
茶文化はまた、多くの職人の手によって守られ、支えられています。茶道具も畳も一つ一つに職人さんがいて、お茶は成り立っています。今だんだん需要がなくなっているので職人さんが少なくなっていますし、後継者の問題もありますが、茶室は繋がりを大切にする場所でもあります。
貞恭庵も人が集まることによって、ある職人さんが「この壁直せるよ」と言って下さったり、自分のできることやわかることを皆さんが教えて下さる。この社会もそんな風に一つ一つが合わさっていくと、それが大きな力となるのかなと思います。
また、「ご縁たび」と言って実際に皆さんと現地へ行き、和文化を学び体験する国内旅行の企画も行っております。職人さんの作品を拝見させて頂いたり、静岡茶発祥の地 足久保の茶農家さんとご縁を頂き、5月はお抹茶の茶摘みも行いました。
茶農家さんは美味しいお茶っ葉を収穫するために、土に与える栄養を考えてコントロールし、抹茶ができるまでの導きを計算されて作ってくださいます。
こうしたプロセスや想い、こだわりを共有することによって、協力関係が築けますし、お茶のお味に深みが増すように思うのです。これは現場がわからないとなかなか味わうことができないものだと感じています。
この茶摘みしたお茶を貞恭庵でもご呈茶させて頂いております。
記者:お話伺っていたら、お茶を茶室の中で味わうだけでなく、茶文化を成り立たせているすべてに意識を向けて、感謝をされているのが伝わってきます。それがいろいろな人達の仕事に繋がっていて、最後は土、地球環境とも繋がるし、すべてが和で繋がっていく世界ですね。
鈴木:そうなんです。ほどいていくと、この人もこの人もというような感じで、人間界でいうとお友達のご縁が繋がっていくように、全部が繋がっていく。そうなると気持ち的にも平和に動けるでしょ。
教室では2歳の小さなお子さんから、定年を迎えている方まで、また今年から千代田区の福祉施設でもお茶をお伝えさせて頂いております。障害がある方やいろいろな方が利用される場所で、コミュニケーションの場を創りたいという要望があり始めさせて頂きました。
私自身も当たり前にやっていたことがこれって優しくないんだなとか、気付きや発見もあり、こちらも学ばせて頂いています。
例えば、視覚障害でお茶は言葉でしか知らなかったという方に、不安な気持ちにならないようにと接することが私の中で多かったのですが、終わってみて「どうでしたか?」と感想を聞いた時に「信じているし全く不安ではなかった。丁寧に作らなきゃ」という言葉を発せられたんですね。
普段自分たちは「丁寧に」ということも目が見えて当たり前にやっていることが多かったり、初めて触れる世界に不安ではないという勇気が衝撃的でした。それに「信じる」って初めての人になかなか言えないじゃないですか。素直に受け入れられる心ってすごいなと思いました。
向き合い方の原点を教えて頂いたような、ちゃんと生きなきゃと活を入れられたような感じでした。一人一人に優しいお茶でありたいと思います。
Q. 夢を持つようになったきっかけは何ですか?どんな気付きや発見がありましたか?
鈴木:高校時代にドイツにいた時に、地元の方に日本の文化を伝えようという学園祭でお点前を披露しました。言葉が通じなくても心でもてなすことや心で感謝を伝えることは大切だなと気付き、その時のみなさんの優しさがありがたいなと思ったのが多分始まりだと思います。
同時に日本の文化を知らない、説明できないっていうことも実感して、紐解きというのが好きになったんだと思います。原点を知ることによって、自分なりに文化の広がりや繋がりを伝えられるようになっていったかなと思います。
Q. 職人さんへの思いや繋がりを大切にされるようになった背景には何がありますか?
鈴木:母方の家系は代々続く畳職人だったんです。吉良上野介邸に出入りしていたと聞いています。
参勤交代で殿様と共に江戸に来たけれど、昭和になって受け継ぐ人もなく終わってしまいましたが、それだけ続いたから道具もありました。半分くらい震災や戦争で焼かれてしまいましたけど。
職人さんというと一途で真っ直ぐに作品にするって、大変だけど今でも変わらないと思うんですね。
職人さんや作り手によって日本文化が受け継がれてきたので、職人の技を途絶えさせてはいけないなと思っています。
母方の畳職人も現在は終わっていますが、そういう江戸を支えた方の心意気を繋いでいくことが私にも何かしらできることがあるかなと。
小さな取り組みですがそこにあたたかな火というか灯りがあれば、いつか大きな灯りになっていくのかな。
ドイツでコミュニケーションができなかった時に、あたたかい優しい手に救われ、「心」っていうものに感謝しているのだと思います。そのバトンを渡せたらいいなとそれが今の行動に繋がっています。
だから茶の湯の醍醐味の一つである、心と心が通い合う瞬間が一番心地よいと感じて志ましたし、そんな社会を創っていきたいと思っています。
記者: 本日は素敵なお話をありがとうございました。
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【編集後記】
今回インタビューを担当させて頂きました塚﨑、福井、石塚です。
鈴木さんのお話を伺っているだけで、とてもあたたかい気持ちになり、茶道のイメージがとても広がりました。私たち日本人が大切に守りたい文化と職人さんへの感謝や和の心を自然と学ばせて頂いた気がします。
とても柔らかく優しくお話しされ、あまりアピールされてないのですが、書ききれない数々の素晴らしい実践と行動力が本当に素敵な方でした。これからも益々のご活躍を応援しております。
貴重なお話をありがとうございました。
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こちらの記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。