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コレクティブインパクトとは? from "Japan Collective Impact Session" in 渋谷(ジャパン コレクティブ インパクト セッション in 渋谷) 〜組織の壁を越えた社会課題解決のアプローチとは?〜

Plug and Play Shibuyaで開催されたコレクティブインパクトに関するイベントのレポートです。

最初にコレクティブインパクトの説明をしてくださったのはETIC.の番野さん。ETIC.は社会課題解決を含めた幅広い分野において新しい価値を創造する起業家型リーダーを育成し、イノベーション創出に貢献しているNPOです。1993年設立なので、20年以上この分野に取り組まれています。番野さん自身も2002年から15年以上取り組まれているとのこと。

番野 智行
/ ETIC. ソーシャルイノベーション事業部  プログラム・マネージャー
/株式会社番野企画事務所 代表取締役
1977年京都府生まれ。東京大学法学部卒業。2000年よりNPO法人ETIC.にて社会起業家育成プログラムの立ち上げに取り組む。2005年に(株)エイコンに転職、取締役として企業や政府、教育機関等へのコンサルティング業務および同社の経営全般に従事。2010年に独立、現在のテーマは「人材・組織開発を通した事業開発」。米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブコーチ(CPCC)。  〜社会起業塾イニシアティブより抜粋〜

コレクティブインパクトがそもそもなになのかというところを2泊3日分くらい喋れる内容を圧縮して15分で、今までの「協働」とか「社会課題解決」と何が違うのかというところを含めて、と紹介してくださいました。

ETIC.においてゼロから始めるところや、始めた人がさらに拡大・成長していくところも含めて見てきた中で、社会課題を起業して取り組む人だけでなく、企業内やNPO、行政の立場から取り組む人たちと関わってきた。エリアも東京だけでなく、地方の人たちも含めて増えてきている実感がある。

一方で、日本は人口のピークを超え、少子高齢化になり、税収が減り介護も足りなくなり、核家族になり、仕事は忙しい。社会的にも責任を負いながら親の介護もし、子どもも育て、暮らしていくのはすごく大変。行政も企業も福祉も大変。高齢者のホームレスもこれから増えていくといったことも言われている。

アメリカの事例として、Year Up(就労支援NPO)というところがある。

2001年の設立当初は1都市で22人の学生にサービス提供するところから、2014年には12都市で2000人以上を対象へと拡大していっている。

一般的に考えると、順調に伸びていて良いと言えるはずだが、社会的な視点でみてみると、670万人が就労に困っているアメリカにおいて2000人に提供としてもそれが十分だとは思えないし、やってもやってもキリがないし、小さな成功では喜ぶことができなかったりする。そういう難しさが社会課題解決領域にはある。

教科書的なコレクティブインパクトの定義は、

「特定の複雑な課題を解決するための、異なるセクターの重要な当事者からなるグループによる、共通のアジェンダに対するコミットメント」

この定義よりもわかりやすいのが、コレクティブインパクトの5つの条件

5つの条件
①共通のアジェンダ
②共有された評価・測定システム
③相互に強化しあう取り組み
④継続的なコミュニケーション
⑤取り組みを支える組織

これらを揃えた方がインパクトが出やすいとされている。

具体事例)イスラエルのSTEM教育(5×2 initiatve)
理数系の教育に対してコレクティブインパクトのアプローチをしてきている。イスラエルは軍事的なバックグラウンドもあるのでハイテク産業が盛んで、それが国の経済を支えているような状況にある。しかし、人手不足があり主な原因として高校時点で高度な数学を学ぶ学生の数が激減していることにあるという分析があった。

従来の発想だと

・高校の教育を変えよう→政府が予算配分しよう
・予算配分しても教えられる人がいない→NPOで支援しよう
・数学がなくても立派な大人になれるという反論
・そもそも大学の入試制度がおかしい
・企業で育成の中で教えればいい
みたいな議論が行われがちだが、これでは進まない。

インドの寓話「群盲、象を評す」

全体は象でも、それぞれが見えてる立場でああだこうだいっても、本当に何が起きているのかわからない。良かれと思って色々みんなが動いてもうまくいかずに残っているのが現代の社会課題だから、多面的に捉えてみんなで考え直す必要がある。

1.多面的な視点での原因究明
高校時点で数学に取り組む人が減っている理由を改めて探っていったときに、政府・行政がどんな施策をやっているのかも必要だし、高等教育機関)大学・高等教育機関)がどんな人を入学させているかも確認し、NPOの活動や企業がどう捉えているかも確認、親や家族、メディアなどが子供たちに対してどんな情報を届けているのかを探っていった。

2.あらゆる当事者が集まって、何が起きているのかを話す
上記の関係者がみんな集まって、何が起きているのかをみんなで話し合っていった。

後ろにあるホワイトボードに色々なデータをグラフにしたものを掲示し、単純にそれぞれで起きていること・見えているものを共有し、課題の共通理解を作っていった。

そして、共通の目標として、「イスラエルの高校で提供される教育において、高い探求・分析スキルの獲得できる学生の数を2倍にする」というものを設定した。

POINT:何をするかの前に、課題をみんなで共有してから、ビジョン・目標をつくる。

①一緒にやることはすごくいいことだが、その前にそもそも何が課題で何を目指すのかを共につくることが大切。
②上から降ってくるものではなくて、みんな「これが課題だ」というものを出すことによってそれぞれの人がオーナーシップをもつことができる。

3.それぞれができることをワーキンググループごとに考える
課題が共有された上で、企業・行政・財団で別れてそれぞれが何をやっていこうかと相互に評価し合う関わりの中で考える。

①教育省が予算を重点的に配分すると決めた。
②生徒が無事に卒業したかどうかで評価されていたの高校教師の査定を、ちゃんと難しいものの単位を取った人を輩出した先生を評価する形に変えた
③後押しする形で企業がボランティアとか仕事見学を受け入れたり、
④女性の高等教育促進やエンジニアがセカンドキャリアとして教師になることを推奨したりしていった
⑤その上で、NPOがこういった取り組みのサポートをするために自分たちの活動の見直しをしたり、先生同士の学びの場やオンラインサポートを作っていった。

セクターを超えて一緒にやるものもあるし、活動は個別だが、連携して同じ目標に進めるように設計されていたりということができた。

結果的に目新しい取り組みがあるわけではなく、すでにあった取り組みがきちんと組み合わさり、コーディネートされた形だったが、共通の物差しを持って定期的に振り返りをすることが継続されていき、やりながら考えるという形で進んでいった。(かつ、長期的な視点を持って仲間を増やしながら行われた。)

結果:V字回復した。

良い取り組みがそもそもあり、それらが協調・共同していったのだから、結果に繋がるのは最も。とはいえ、やってた人たちが改めて本質的な課題を見直し、行動変容への葛藤も超えて丁寧に共同したからできたことでもある。

大変なことではあるので、サポートする人たちが器のようになっている。

課題を解決するために多様なセクターからできることを持ち寄るそれに対して継続的に協力しながら取り組むからできるのがコレクティブインパクト。ティール組織にもすごく近いもの。

5つの条件を網羅するのは大変。時間も手間もお金もかかる。ただ、全部を一度にやるというよりは、うまくいっている活動から抽出されたものであるので、必須条件でというよりは、活動を見直して効果的に取り組むための物差しとして使えば良いもの。

日本でもコレクティブインパクト的な取り組みはある(この後の発表でもたくさん出てきます。)今日の会場でもある渋谷区もそうですが、地方でも取り組みはあって、当事者意識やオーナーシップを持ちやすいのが島根県の自治(雲南市の事例)などもあり、

「日本をどうしよう」となると1.2億人が対象になるが、渋谷区だと、夜間が22万人で昼間50万人くらい。日本全国でやるよりも、自分がやったことの影響も見えやすいし、課題が何が起きているか捉えやすかったりする。

また、最初の課題の設定に関してでいうと、カナダのハミュートン市が「貧困をなくす」というコンセプトにした時には関連分野の人しか集まらなくてコレクティブじゃなかったが、「一番子育てがしやすい街にする」と変えたら色々な人が集まった。結果貧困も含んだんだが、みんなが熱を持てる課題設定から始めることが大事かもしれない。

そして何より、完璧にやろうとすると手が止まってしまうから、まず一歩から初めて少しずつ理想とするところに近づけていったら良いのでは。

10月19日にもイベントがあるそうなので、よかったら是非。ご参加ください。



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シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。