肉骨茶の裏切り
マレーシアのコタキナバルに行こうとなったとき、名物を調べていて出合ったのが肉骨茶だった。
肉骨茶と書いてバクテーと読む。iPhoneにバクテーと入力するとあっさり漢字変換できるので有名な食べ物なんだろう。
時を同じくして、ディーン・フジオカが都内でおいしい肉骨茶を探し回る番組を見た。ディーン・フジオカの好きなものに対するクセのあるこだわりが面白かった。でも肉骨茶は私の心に響かなかった。おディーン様がおいしいと言っているのにも関わらず。
肉骨茶とは、漢方スープに骨つきの豚肉が入ったもの。漢方スープか。苦手な八角が入ってる可能性もあるなぁ。豚の脂こってりもなぁ。見た目も茶色で地味だし。
そんな消極的な気持ちだったから、コタキナバルに着いても、すぐには手を出さなかった。ラクサや海鮮のお店のほうが明らかに興味をそそる。
それでもせっかく来たんだからと有名店に向かったところ、店の前まで地元の人で大にぎわい。人気者なんだな、肉骨茶。そして、出てきた肉骨茶のスープをひと口。初めましての味。あれ?あれあれ?そこからずーっとスープを飲み続けた。
漢方はそこまで主張せず、まろやかでコクがあって後を引く味わい。お肉もおいしいんだけど、とにかくスープのトリコになった。なんか気になってずっと飲んでいたくなる。これはいい裏切りだった。次の日も肉骨茶が食べようと心に決めた。
今でも思い出しおいしいをする肉骨茶。出合ったばかりで、まだ語るほど咀嚼できていない。だからもう一度。でも、あの味を東京のどこで味わえるのかが分からずにもどかしい。肉骨茶専門店なんかもできてはいるけれど、シンガポールの味が主流らしく攻めたコショウ味でまったくの別物だった。
肉骨茶はシンガポール、マレーシア辺りで食べられていて、調理法が地域によって違うようなのだ。あの、控えめの優しさでトリコにするコタキナバル式の肉骨茶は東京では食べられないのだろうか。
あの味を思い出せば思い出すほどに、コタキナバルに行きたくなる。