【展覧会】小村雪岱スタイル l線と濃淡と空間で魅せる昭和モダン
小村雪岱スタイル
これはきた。久しぶりにきた。
すんごいよかった。ホンっト素敵だった。
展覧会を出るとすっかり小村雪岱の虜に。
三井記念美術館で開催されている「小村雪岱スタイル」(〜4/18)の感想です。
今回は好きすぎてちょっと感情的になってしまうかもしれません。
0. 小村雪岱ってどんな人?
小村雪岱_komura settai(1887〜1940)
大正から昭和にかけて、本の装丁、小説の挿絵、舞台装置のデザインなどを手掛けた画家、意匠家です。
商業美術の世界で時代を先導した「意匠の天才」と称されていますが、俗っぽくいえば、昭和初期の売れっ子アートディレクターといった感じでしょうか。
生まれは1887年(明治20年)埼玉県川越市。
東京美術学校卒業後、出版社で口絵の模写の仕事をし2年後に退社。
その後文豪「泉鏡花」に見出され、多くの本の装丁を手掛けていきます。↓人気の発端となった鏡花の小説「日本橋」の装丁と挿絵。
ちなみに「雪岱」という名前は泉鏡花から授かった画号なんですって。
きれいなお名前! しかも憧れの文豪に名付けてもらったなんて素敵すぎる!
本の装丁のほか、資生堂の意匠部に所属したり、新聞の挿絵を描いたり、舞台装置のアートディレクションを務めたり…と多忙な日々をおくります。
敬愛する泉鏡花がなくなった翌年、昭和15年に53歳で旅立つまで、作品を生み出し続けました。
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1. 線で見せる。
展覧会には、装丁本、木版画、肉筆画、舞台装置といった、雪岱が手掛けた作品が品よく鎮座しています。
作品のとくちょうというか、わたしが魅せられたのは、線。
「おせん 雨」
洗練された線は、美しい、の一言。
細い線、太い線、かすれている線、
ときにはまっすぐに、ときにはしなやかに
線だけでなんと表情豊かなことか!
そしてこの構図!
重なり合う傘のなかに見え隠れする人々。右下にこそっと隠れキャラのようにいる黒頭巾の女性が「おせん」というこのお話の主人公。(実際隠れて逃げている)
くーーーーー、しびれます。
ちなみにこの画像はわたしが買ったハガキを撮影したものですが、よさは1/10くらいになってしまっています。
ホンモノはもっともっと、ぜんぜん素敵です。
もっと繊細だし、色がうっとりするくらい美しい。
地は薄曇色(勝手に命名)。そこに繊細な筆使いでのせる墨色の線。センスある構図。大っ好きです!
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2. 濃淡で魅せる。
次にわたしが雪岱の作品で好きだった部分は「濃淡」。
「雪の朝」
しんしんと降り積もる雪と街並みが静かながらも、なんともドラマチック。グレーの濃淡で表現されています。
これも絵ハガキの撮影なので、実物の美しさとは比べ物になりません。
あと、もうひとつ。
濃淡が美しく好きな絵が、泉鏡花「愛染集」の表見返しです。作品集の表紙にもなっています。
この絵は絶対に美術館で見ていただきたい!
表紙はトリミングされていますが、本の見返しの絵なので、実際はヨコ長。
雪が降りつもる吉原の街と一人の遊女。
墨の濃淡で表現された世界のなかにコバルトブルーが一本。
そして遊女のきもの半襟がうっすらピンクなのもきれいです。
濃淡で表現された絵からは、街の奥行きだけじゃなく、音のない街並みやはく息の冷たささえも伝わってくるようです。
そして、広い空間のなかにぽつんと佇む遊女。。。
空間の美は次のセクションでお話します。
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3.空間で語る。
雪岱の作品の心惹かれる部分、3つめは「空間」。
さきほどの「愛染集」の絵もそうですが、ひろーい空間に、ぽつ、と小さく人物をおく構図が多いと思いました。
それがとてもその先の物語を想像させます。
作家さんが書いた物語をしっかり自分のなかに落とし込み、その世界観を絵とデザインで表現されていることが伝わってきます。
そして、これは本の装丁ではなく、肉筆画ですが「こぼれ松葉」という墨絵の空間も好きでした。
パッと見たら、気づかないかもしれなくいくらい、ほそーい松葉が1つ、音もなく落ちてくる(ようにみえる)。
その松葉を女性がただ見上げている絵。
たまらないのですよ、この繊細さと空間が。
装丁のお仕事もされて、空間の余韻をよくご存知だからこそ、できた作品なのではないかとわたしは感じました。
これも絶対、実物をみていただきたい!!
4.もっともっと知りたいが続く雪岱作品。
線。濃淡。空間。
今回はこの3つをテーマに書いてきましたが、実はまだまだほかにも雪岱の魅力はあります。
最初に登場させた泉鏡花の「日本橋」など、本の装丁は上品で愛らしい色づかいの作品がたくさん!!
もっと、もっと見たい!!と思っていたら、なんともう1つ!
雪岱の作品が日比谷図書館でも展示されていることを偶然知りました。(今回は感覚で展覧会をセレクトしたのであえて深く調べていませんでした。。。)
しかもそちらにも実際の本がたくさん展示してあるとか!! これは見に行きたい!!
資生堂意匠部でのお仕事も展示してあるそう!(資生堂書体は雪岱がベースをつくったらしい、、という話もまた次回)
ということで、次回は美術館ではありませんが、日比谷図書館の特別展示「複製芸術家 小村雪岱」についての感想も書きたいと思います。
そちらは撮影OKで写真もたくさん撮影してましたので、小村雪岱に興味を持たれた方はぜひ次回もおつきあいいただけると幸いです!!
つづく。
※追記※
「複製芸術家 小村雪岱」も感想書きました!