『エリコと思い出の波紋』 3分で読める超短編小説7
はじめに:僕の原文 x ChatGPT x 村上春樹の文体
この短編小説は僕の書いた原文を元にChatGTPに加筆修正してもらい、さらに僕自身が加筆修正をして完成したものです。文体と作風は村上春樹というプロンプトを入れました。「僕 x ChatGPT x 村上春樹の文体・作風」を楽しんでいただけると嬉しいです。(Claude 3.5にも加筆修正してもらっています)
『あの日のエリコ、思い出の波紋』
彼女の名前は「エリコ」だった。いや、「リエコ」だったかもしれない。どちらが正しかったのか、今となっては確かめようがない。記憶というのは不思議なもので、時として最も大切なことが、最も曖昧になってしまう。
エリコと僕はロンドン、パリ、ローマ、1週間の旅を共に過ごした。といっても、それはヨーロッパツアーの引率で、彼女は添乗員、僕は同行講師という立場だった。
ヨーロッパツアーの引率講師の依頼が来たのは高校の英語教員2年目だった。旅費と宿泊費なしで3都市を周遊できるというのは、教員になって多忙を極め、海外旅行などはもう想像できなくなっていた僕にとって最高の機会だった。学校を休んで(といっても春休み中ではあったが)、仕事として海外出張ができる。校長の問いに、僕はほとんど即答した。
だが、現実は甘くはなかった。引率するのは全国から集まった小中高生たち。30人という数字は、紙の上では大したことないように見える。だが、実際に引率してみると、それは途方もない数字だった。出身地も、年齢も、興味も、英語の理解力も、すべてがバラバラだった。僕は高校の教員だから高校生には対応できるが、小学生と中学生は日常生活の中で接触が全くなく、ほとんど未知の存在だった。エリコと僕、たった二人でその全員の面倒を見ながら、一週間で三都市を巡って無事に帰国するのは、無謀と言っていいくらい至難の業だった。
ルーブル美術館でコンタクトレンズを落としてしまった高校生。スーツケースの鍵をなくした小学生の女の子。夕食の時間になっても姿を見せず、部屋に電話をしても出ない生徒を探して、パリの街をさまよった夜(結局、その生徒は部屋で爆睡していただけだった)。
ローマやパリでは英語の案内が少なく、シャワーやバスタブの使い方の説明も必要だったため、毎晩の睡眠は2時間程度にまで削られた。そんな中、高校生たちを連れて、ホテル近くのディスコに出かけたのはいい思い出だ。(もちろん、旅程には入っておらず、今なら問題になるだろう)。
成田に戻った時の安堵感は、今でも体が覚えている。まるで長い潜水から浮上したような、そんな感覚だった。
偶然の縁でペアとなり子供達を一緒に引率したエリコはたぶん30歳前半。僕は25歳だった。子供たちに翻弄される旅の中でエリコとは何か特別なつながりがあった気がする。おそらくは僕の錯覚なのだろうけれど、彼女と交わした何気ない会話や、ふとした瞬間に感じる沈黙に、僕は妙な安堵感を覚えていた。エリコの言葉は、古い教会のステンドグラスを通り抜ける光のように、僕の心に不思議な模様を描いていった。
帰国した後で、参加者の一人の高校生とエリコと僕と三人で会うことになった。場所は銀座だった。たぶん僕がアルバイトしていたレストランがあったからだろう。その高校生は千葉からわざわざやってきてくれたから週末だったと思う。
その時、エリコは静かに自分のことを話してくれた。スペインに住んでいたこと、添乗員になった経緯、そしてスペイン人の恋人を交通事故で失ったことを。彼女は淡々と話していたが、その奥に微かな揺らぎを感じた。透明な湖面に、一瞬風が吹きつけるような、そんな揺らぎだった。その言葉の奥に隠れた痛みや孤独が、僕にも微かに感じられた。でもその時の僕には、彼女の悲しみをどう受け止めていいか分からなかった。彼女の物語は彼女のものであり、僕のものではないと、どこか線を引いていたのだ。
しかし、今、少しだけわかる気がする。あの時、彼女が僕に託そうとしていた何かを。たぶん、僕が今こうして言葉を書いているのも、その延長線上にあるのかもしれない。僕の意識の深いところで、あの旅と彼女との会話がゆっくりと結晶化していく。そして、その欠片が、時折意識の表面に浮かび上がり、僕を少しずつ変えていく。
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エリコさんへ
エリコさん、今はわかる気がする。
あの時、あなたが平静を装いながら渾身の力を振り絞って語っていたことを。
それは、『話すことは放すこと』『言えることは癒えること』ということを僕自身が体感しているから。
30年の時が過ぎたけど、あの時、僕に話すことが、あなたの心の癒しになったことを心から願っています。
そして、祈ります。
あなたがどこかで幸せに笑顔で暮らしていることを。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
❤️ この短編小説は友人の中川麻里さんの投稿に刺激を受け、背中を押されて誕生しました。中川さんに心から感謝いたします。
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