昼は太陽になって他人に温かい力を、夜は星になってみんなに輝きを与える存在になりたい
同期との飲み会
会社で久しぶりに同期一同が集まる会社内での取り組みの説明会のようなものがあった。
私の会社は、本社勤務の人もいれば、それぞれの出向先で働いている人もいる。
同期も過半数は、出向先に出向いて仕事をしたり、在宅ワークを行っている。
そんなわけで私は約1ヶ月ぶりに他社勤務の同期と再会した。
説明会のあとは華金なこともあり、同期の集まれるメンバーで飲み会をした。
くだらないことを喋ったり、なかなか会えない同期と久しぶりに話した時間は、懐かしくとても良い時間だった。こんなこと言うのはクサイけど、みんな話しやすくて最高の仲間だなと改めて感じた。
仕事のことを忘れてしまうくらい笑って楽しい時間だった。
二次会もぼちぼちの人数が残り、別の飲み会からこちらへ合流してきたスタイル鬼つよギャグ線高めの通称、姉さんと呼ばれている同期を迎えてみんなでカラオケへいった。
私はトップバッターという大役を任され、緊張しつつも、大人数の場では外さない誰でも盛り上がることができる魔法の1曲、ゆずの夏色を歌い上げた。
1時間半ほど楽しんだところで、終電の時間も気になる時間帯になってきたため、それぞれの帰路へ向かうこととなった。
ミステリアスな同期
駅のホームのロッカーあたりで私たちは小さくなってたむろっていた。見渡すと1人、最寄りの路線が一緒の同期の男の子がいた。
うわぁぁ、、、。
よりによってあまり話したことがない同期だった。さすがに同じ路線なのに別々で帰る訳にはいかないだろう。
理由も無しにあまり話したことが判断しているのではなく、いくつかの理由があってあまり話したことがないのである。
理由のひとつとして、彼と会話を試みても、毎回なぜか掴みどころがないトークになってしまうことが多かったため、話すチャンスを自ら逃したことが挙げられる。
自分で言うのもあれだが、私自身結構フレンドリーで人見知りせず色々な人と仲良く話せるタイプだと勝手に思っている。
周りからそう言われることも度々あるからだ。
話し相手がシャイな人だったり、自分との性格のタイプが違っていた場合でも、大抵は相手のテンションに合わせて、質問を投げかけたり、共感することで、大体の場合は穏やかにリラックスして会話することができていた。
だけど彼と話す時はそうではなかった。
彼と話していても、何故か主旨が掴めない会話になってしまっている。
上手く盛り上がるように話さないと、と気を張っているから尚更。
趣味が彼と似ていたからその話をして、なんとか少しでも話しやすくなればいいなと図っていたが、それも上手くいかず。
こういう出来事が何回かあったため、彼からミステリアスな雰囲気ですら感じていた。
別の同期も同じようなことを話していたから、結構人によって、性格とか分かれる人なんだなーと決めつけていた自分がいた。
彼は鈍行列車で帰ったら、最寄りまで1時間以上かかるかなり遠い場所に住んでいるから、どうやら快速に乗るみたいだ。
じゃあ電車までは一緒じゃないから安心だ、気まづくなることはない、なんとかやり過ごせそうだ。
彼にはとても失礼極まりないが、頭の中でこんなことを考えていた。
「じゃねーみんな気をつけてねー」
さあどうするのかと思った。
駅のホームで同期は各々帰路へ着くための路線へと向かう。
彼はスタスタと私の元に来た。
「くるみさん☆☆☆線(最寄りの路線)だよね?行こうぜー」
おおっ。
なんや、そんなに嫌そうではないじゃないか。
彼が他社勤務で1人で働いているのを聞いていたから、結構仕事は大変なのと当たり障りない会話をしながら、私たちはそのまま改札まで歩いた。
私は彼の話を聞きながら、今置かれた自分の状況について考えていた。
様々な部署にプロジェクトと、同期たちが配属されていく中、私は同期の女の子ととあるプロジェクトに配属になった。部長から話を聞いたところ、それは数年前から行っている結構大きいプロジェクトらしい。
最初は同期がいてくれて心強いなんて思っていたが、段々と仕事に取り掛かるうちに、同期の優秀さと、自分の仕事のできなさを比較してしまい、落ち込む日が多かった。
もう昔からのくせだった。
自分のことだけに集中して、一つ一つ仕事に取り組んでいたが、気づいたらやはり比べている自分がいた。
劣等感に苛まれていた。
全然心強くなんかない。
こんな思いになるなら、1人でどこか遠い所に配属になって、1人で頑張りたかった。
と。
同期とプロジェクトが一緒で、それで他の先輩社員達から、仕事の出来を比べられるんだったら、どこか1人遠いところに飛ばされて、そこで頑張る方がいい。
と気づいたら私の口は黙ることも知らずにベラベラと話だした。
やばいと思った時にはもう遅かった。
何を言ってるんだと。彼の状況も考えないで。
なんで話そうと思ったのか、自分でもよく分からなかったし、正直今でも分からない。
彼は優秀だから、優秀な人はこの出来事をどう捉えるのか自分自身が気になったのだろうか。
話し終えた瞬間、まずったな、こんなこと話すんじゃなかった。と心の中で落ち込んだ。
だが意外にも、それに食いついてくることは無く「たしかにそれは辛いよね」と彼は軽く共感だけしてくれた。
改札を通り抜け、「この1番右の快速乗るの〜?」と聞いたら彼はそうだと返し、逆にどれに乗るのか聞かれたので「私はこの1番左ので帰るよー」と返し、なんか変な会話で終わってしまうな、申し訳無いなと思い、別れの挨拶を交わそうとしていた。
「じゃあ俺もそれ乗ろうかな」
全く想定外すぎてびっくりした。
私はとっさに、
「快速で行かないと結構時間かかるからいいよ、申し訳ない、」って言った。
だって私が乗るのは鈍行列車だ。
時間はそんなに変わらないから大丈夫だって、急行に乗っても、そうじゃなくても意外と変わらないのに最近気づいたんだよねと言って、1人で帰るのつまらないからさと彼は言った。
まじかって思った。想定外すぎた。
私の頭の中では完全に、お互いに別の列車に乗って帰るシチュエーションしか無かったため、何が起きているんだと混乱状態だった。
彼にとってはきっと、何の気なしにそう言ったのだと思うんだけど、思わず優しいんだねと言ってしまった。だって優しいでしょう。時間が多少変わらないとしても、夜も遅いし、そっちは快速で帰った方が早いのに。
まあいいか。
こうして私は最寄りまでの帰路を、ミステリアスな同期と帰るという、全く想像もしていなかった時間を過ごすこととなった。
星のように小さく光る街灯を眺めながら
今まで2人で話すことなんて、全然なかったから、すごくすごく新鮮だった。(最も自分が少しだけ避けていた事もあったため)
当駅始発の電車だったため、向こう側の扉が開いて人々が降りていき、こちら側の扉が開いて、私たちは座席へ座った。
電車が出発し、時折揺られて、私は窓の景色を眺めながら、彼と色々話した。
通り過ぎていく白い光の粒が真っ黒な夜の中の小さな星のようだった。
彼の配属先の仕事は、彼がやりたかった道とは全く違う方向なのだと聞いた。その仕事は、配属前に行われた3ヶ月間の技術研修を行っていなくても誰でもできるということも。
なんなら今私が行っているような業務をやりたいと言っていた。私が行っている業務は、3ヶ月の技術研修で学んだことをバリバリ使うような内容だった。
ちらっと彼の方をみた。
すごく悔しそうだった。
私は1ヶ月前に終わったプログラミング技術研修を思い出していた。
研修期間、彼に対して色々思うことはあったんだけど、冷たいなこの人とか。でもいつも真剣、一生懸命のイメージがあった。彼がPCとにらめっこしていた姿を何回か見かけたことがあった。
プログラミングを学ぶことは本当に難しい。プログラミングが得意な人はほんのひと握り。そのような言葉を何回もきいてきた。
幸い私は専門学校でプログラミングを勉強している身であったため、なんとか研修について行くことができた。
研修期間、ほとんどの同期はキツそうに研修に取り組んでいた。
きつい。意味わからない。全然出来ない。
経験者以外の同期は皆、結構しんどそうだった。
きっと私の思っている以上にきつかったんだと思う。
だが、その中でも彼は違った。
彼は未経験だった。3ヶ月というプログラミングを学ぶには短すぎる期間の中でメキメキと力をつけ、周囲を驚かせた。彼はプログラミングが楽しいんだと、そう言っていた。
もちろん私もそうだし、きっとあの研修を受けていた人全員、彼が1番頑張っていたと言うに違いない。
今私がまかせられている仕事を、彼が貰ったとしたら、きっと真剣な顔で、あの時と同じようにじっくりPCを見つめているんだろうなってすぐに想像がついた。
2年間もプログラミングを学んできてもこんなポンコツな人間もいるのだから。私は彼に、心からすごいよと伝えた。才能だよ、と。
彼は(最初の休み8時間プロゲートで勉強したことがでかかった。だから俺には才能とかないよ)と言っていた。
彼は、頑張ったとか努力しているとか言わないけど、すごく頑張って、すごく努力しないとあの境地にはたどり着けないというのは、専門学校で何回も辞めたいと思ってきた私にはすごく理解出来た。
しぬほど頑張ったんだろうな。
本気で頑張ってきたのに、今までの研修なんだったんだ。そう思っているに違いない。
悔しそうだった。自分怠けているなって思った。業務を変わって欲しいと言う考えがよぎった私をぶん殴りたかった。
優しさに救われたこと
一応彼には、先程の同期と比べてしまってることは内密にしてもらうよう伝えた。
彼は言っちゃおうかな〜?笑とふざけて冗談で笑っていた。なんかこういう話をすることが無かったので、酔いは冷めつつも少々酒が入った脳内で勝手に小さく喜んでいた。
彼は比べてしまう気持ちはわかると言ってた。ミステリアスな同期は自分の考えをしっかり持っていて、他人と自分を比べないで、努力で自分を貫いてるイメージがあったから、ちょっと意外だった。この人のこんな部分があるんだなと。
「懐かしいね研修」
「そうだね」
「先月の今日はちょうど研修の発表会だったよね」
「たしかに!もう1ヶ月も経ったのかあ」
その時、彼が話したこと、
あの時目で見ていた風景は
1日経ったいまでも鮮明に思い出せる。
「研修の3ヶ月での差なんて無いから、
今くるみさんが同期との実力差に悩んでいるけど
3年後にはどうなっているかなんて
分からないから
だから大丈夫だよ」
そう言ってくれたことが
じんわりと心に残ってる。
そんな真っ直ぐな言葉で人を励ませるなんて、
確かにこう思った。
嬉しかった。励まされていることが。
私はたしかに彼の言葉に救われていた。
少し感動して、気づいたら私はまた優しいんだねと言ってしまった。(何回言えばいいんや)
俺は優しくないよ。思ったことを言っているだけだから。とミステリアスな同期は言った。
なんか、色んなことに対しても、自分を褒めないんだなって思った。
これが謙虚というのかは分からないけど。だけど、自信すごくありそうなのに、意外とそんなことないよって言ってるところですらなんかいいなと思った。
隣に座っているその横顔みて、この人はきっと優しい人だと思った。
ひとつひとつ、言葉を選んで話していくその横顔はすごく印象残っている。
その時、もう電車が最寄り前まで来ていて、私はなにか彼に言わないとと思っていて。
私は今励まされて、だから私も彼に同じことをしてたいととっさに思った。
状況は全然違うけど、悩みを抱えている状況は同じだったから、なにか励ませることはないかと頭で考えて、一つ一つ言葉を選んでこれは話せて大丈夫だと感じたことをそのまま話していた。
自分の言ったことなんか説得性に欠けるだろうとは考えたが、励まされたら同じことをするのが正しいと頭で判断していた。
電車が自分の最寄りに到着して、私はここまで着いてきてくれてありがとうとお礼を伝えた。
そしたら、「じゃあ」手で🖖↩︎こうやってた。
そのハンドサインが何を示すか分からなかったが、私も🖖でかえした。
頑張ってね。
気持ちを込めて言った。
今だけじゃなくその先も視野に入れるということ
私は家までの道を歩きながら、彼と話した内容をゆっくりと思い出しだしていた。電車を通り過ぎる音が心地よかった。
一緒に電車に乗っていて、やっぱり優しい人だな、優しくてちょっぴり控えめで、自分の位を高く見せようとしないところがいいな、そう感じていた。
私も誰かが大変な時に心を支える存在になりたい。応援したい。
私は今の仕事が難しくて、1度聴いただけでは理解出来ない自分が嫌になってしまったりと、色々考えることあるけど、私の頑張りたい気持ちよりか、彼の方が頑張りたい気持ちが強いなと伝わった。すごいなあ。本当に。
私が彼に正直な気持ちを話した時に思ったことがあった。グチグチ、比べてしまうことが嫌だと言っていたらいつまでも成長しないのだと。こういう状況下に立たされたら、どんな行動を起こすのかにかかっていること。
相手が自分より実力があると結構きついけど
けど、こういってても何も始まらないし、自分の良いところに目を向けて、自分を振り返り、彼の気持ち毎日背負ってやるって勢いで仕事やろう。
時計の短い針と長い針が12の位置に綺麗に重なった。日付が変わった瞬間、心にそう決めた。
次の日。土曜日。ふと、この手🖖の意味が気になったのでググってみたら、検索結果の1番上にこんなものが掲載されていた。
長い文章を最後まで読んで頂きありがとうございました!
※題名は、2021年に行われた日中韓ガールズグループオーディション「Girls Planet 999」に出演していた中国人参加者チェン・シンウェイちゃんの言葉です。私が大切にしている言葉なので載せました。