11月4日(木) #日記 得ることと与えること。
「何かを手に入れる最良の方法は、それを他者に与えることだ」
レヴィ=ストロース
英国詩人、ウィリアム・シャアプは、閨秀詩人フィオナ・マクロウドとの間で恋愛詩のやり取りをしたが、シャアプ氏の死によって2人と思われた詩人たちは、シャアプ氏一人であったことがわかる(内田樹 期間限定の思想より)。
国書刊行会が2018年に刊行した幻想小説集「夢のラウド」の紹介文には「尾崎翠が思慕し三島由紀夫が讃美した」とある。彼の生涯をWIKIPEDIAで見て、私が敬愛するラファエル前派のペイトンやロゼッティと関係があったことを知った。神秘学を目指し、黄金の夜明け団にも所属していたという。1855生まれ、1905年に死亡。
フィオナ・マクラウドの作品、「かなしき女王」を持っている(沖積舎、1989年)。とても、美しい本である。翻訳は松村みね子。これは翻訳を行う時の歌人・片山廣子の筆名だ。1878年生まれ、1958年死亡。片山はなんと鈴木大拙夫人のビア子ことビアトリスの勧めでアイルランド文学に親しんだという。ビアトリスは神秘学とも関係があった。芥川龍之介には「或阿呆の一生」で、「才力の上にも格闘出来る女」と評されている。芥川は片山に歌をささげたという。堀辰雄の『聖家族』等に描かれる母娘のモデルが廣子とその娘であるともいう。
シャープがマクラウドの名で上梓した小説は、翻訳した片山にどのような思いを齎したのであろうか。世間に幻の女性作家の作品を与え、その作家を得る。西洋人からアイルランド文学を教えられ、その翻訳を通して自身の魂の飛翔を得る。与えること、創造すること、で、自らの中になにかを得る。
シャープとマクラウド、片山と村松。一人が二つの名をもつことで、作り上げようとした世界のことを、想う。
(なにかが、つながっていますね)
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