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『プールサイド」藤本和剛 新田君彦 

 近鉄郡山駅近くの本屋「とほん」。なぜかビニールフィルムに包まれて中身がわからないこの本があった。手に取ったのは、「この街をよく知る男が書く日記は、にぎやかなのに、どこか寂しい。大阪の街が賑やかなのにどこか寂しいのと同じだ。」という岸政彦さんの帯文に魅かれたからだ。
 神戸で生まれ育った私には、大阪のその雰囲気がよくわかる。よくドライと言われる神戸の方が逆に田舎のような温かみを感じることがある。帯文に撃ち抜かれて買い物カゴに入れた。
 藤本氏の日記と新田氏の写真が日付順に並ぶ。写真には新田氏による撮影場所と被写体についての短いコメントだけ。なのに往復書簡以上に写真が語りかけてくる。
 日記は読者に読まれることを前提に書かれておりノンフィクションに近い私小説と言えなくもない。編集という仕事に真摯に取り組みながら、家族、同僚、友人、仕事仲間と生きてゆく日々。ともすれば一瞬で過ぎ去る日々の営みが時に饒舌に、時に詩的に切り取られてゆく。この日記も逆に「写真」なのだと思う。
 最後は同じ日付の日記と写真。それを読み終えたとき、心から泣けた。

 ある日の日記で藤本氏は書く。

人は「決」と「断」を繰り返して生きていく。

 背中を強く押された気がした。寂しさの中に芯が通っている希望の書だと思う。

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