まだ見ぬ適量を求めて
小さな本屋を始めて一ヶ月が経ちました。
バタバタ半分とベロベロ半分。慌ただしい中でもしっかり呑んで、気がついたら師走になってたって感じです。
閉店後、アームチェアに腰掛け、本を片手に一人ゆっくりビールを呑む姿を想像していました。だけど実際には、ベンチにだらしなく伸びて記憶をとばす現実。まあ、思い通りにいくことの方が稀有な訳で、願い通りだったら戦争なんて起こるべくもなく、私の理想とする「等しく足りない豊かな世界」が訪れているはずなので、これは願っても仕方ないことなんですかね。
用法用量を守って頂けば、お酒は良いものです。それなのにあと一杯、二杯と洗い物を増やし、シンクにグラスと空き瓶が積み重なる様は罪を重ねているようで、結果として呑まずにいられません。こうしてヘロヘロがベロベロになり、ベロンベロンからのグデングデンで迎えた日曜は、グルングルンな天井を見上げながら一日中布団の中で過ごすのです。
宵待草のやるせなさ、お客さんを待っている時間が危険です。お店には冷蔵庫があり、ビールが冷えています。お気に入りの音楽が流れ、好きな本に囲まれていたら、そりゃ呑んでまうのが人情です。邪智暴虐の王、アルト・ノンデマウは誰しもの心におわすのです。
ま、お客さんがいらしても呑んでますから、何を言ってるんだかって話ですけれど。
適量が分からないまま、いい歳になってしまいました。
だからでしょうか。
お店の方も同じ事がありまして、仕込みの量を見誤りがちです。
狸の取れ高を多めに計上し過ぎて、余った料理に震える夜もあれば、予想を上回る注文に機会をロスするなんて時もありました。
こればっかりは経験とデータの蓄積が必要になりますので、しっかりと数値管理することが求められそうです。呑みすぎて脳内フォルダのどこにしまったか、忘れている場合じゃありません。加齢とともに検索機能の処理速度も低下しているんだし、忘れないうちに残しておくのが大事です。
大切なことは適量を守って、記憶をとばす程お酒は呑まないってことなんですが、分かっちゃいるけどやめられないのが、人類の人類たる所以でございます。
つまりお伝えしたいことは、フードメニューはたくさんご注文頂きたく、品切れの際にはご容赦頂きたい、何ならお酒をいっぱい注文してくれたら嬉しいなって言う、誠に手前勝手なお願いなのでありました。
夜の図書室#3