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キミにきめた!(秋刀魚)|酒と肴 その八十八

「秋来ぬと 目にも明らか 抜けた毛の 数の多さに 驚かれぬる」

はい、秋です。
九月下旬も暑い日が続き、エンドレスサマーヌードと思ったのも束の間、排水口にたまる抜け毛の量に、季節の移ろいを感じます。
気候は変動しますが、太古の昔から身体に刻まれた、生き物としての周期は確実です。永遠ではなくひと時の別れ。冬毛として生え変わり、再び会えることを固く信じております。

それなりに賑わっていた分、彼らが居なくなったあとの風景は寂しいもの。
だけどもういい大人ですから、過ぎた日々に縋っても、虚しくなるだけだと知っています。「去るもの追わず」の精神で、今この瞬間を楽しむことにしました。

楽しみといえばスーパーの特売、セールですよね。
月が替わるたび、値上げのニュースを聞くのにはもう慣れっこ。それでも限られた予算でやり繰りし、お買い得の一品を探すのは、知的好奇心をくすぐるゲームです。今回は魚売り場をステージに選びました。

いつもは仕事帰りでスカスカな売り場も、休日の午前は品揃えが充実しております。
戻り鰹がそろそろ名残りになって、秋鮭が出回り始める頃、今は秋刀魚が旬のはずです。かつてはトロ箱いっぱいに売られていましたが、このところは見掛ける機会がとんと減りました。

「えー、またさんまぁ?たまには唐揚げが食べたいよ」

なんて言ってた子どもの頃。
庶民の味方から高嶺の花になったのはご存知の通りです。運良くお店で出会えても、お値段はロング缶のビールよりお高めですから、気軽にお膳にのぼることも減りました。

ですからこの日は全くのノーマークでして、掘り出し物の秋鮭の白子が買えたらなんて思っていたら、不意に視線を感じたのです。
振り向けば、トレーに閉じ込められた秋刀魚の姉妹が、訴えかけるように私を見ています。その曇りなく澄んだ目に、思わず

「キミにきめた!」

と心で叫んで我が家にお連れしました。

値段も驚きの350ml缶クラス、一尾198円

午後は出掛けるつもりでしたが、これはもう呑まずにいられません。急ぎ塩を振り、グリルに火を入れます。
大根をおろし、グラスを用意して焼きあがりを待つ時間は、一日千秋の想い。何度先走ってビールの栓を抜こうとしたことか。
待つこと約10分。焼きたてに箸を入れ、程よく脂の乗った身を口に運びます。はらわたの苦味、大根おろし、ハートランド。やっぱり味覚で感じる季節ってのはいいもんです。

つまりは髪の毛も食材も、希少になるとありがたみを感じるというお話でした。現場からは以上です。

メニューと材料
・秋刀魚の塩焼き(秋刀魚、大根、塩、醤油)


■■■ イベントのお知らせ ■■■

お手伝い・参加・企画するイベントです。よろしければお越しくださいませ。

①日暮里のご近所市【2023年10月6日(金)~10月9日(月)】
日暮里駅構内で開催されている「日暮里のご近所市」で、西日暮里BOOK APARTMENTの皆さんと本を出品しております。棚主がおすすめ本を紹介する「ブックアパートメントだより」も配布中です。

②1箱本の市@稲荷湯長屋【2023年10月28日(土)】
東京は北区にあります稲荷湯長屋さんで開催されるイベントに参加します。当日は「辺境スナック西北西」の雇われマスターとして、豆料理とビールをご提供。
深まる秋、お隣の滝野川稲荷湯でひとっ風呂浴びたあと、本を片手にビールなんていかがでしょう?
【最寄駅】
都営三田線「西巣鴨」駅下車、徒歩6分・埼京線「板橋」駅下車、徒歩6分


③(仮)まつりのあとのお茶の時間【2023年11月12日(日)】
文フリ東京の翌日、棚をお借りしている西日暮里BOOK APARTMENTさんにて、ちょっとしたイベントを開催します。
こちら先日、リトルマガジン「ウミネコ」第2号を発売されたばかりのウミネコ制作委員会さんとの共同企画。お茶を飲みながら、本を通じた交流が出来ればなと。
詳細は別途、10/13(金)、遅くとも10/20(金)くらいにはnoteでお伝え出来ればと考えております。

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豆千|本と豆料理
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