同じ穴の狢の集会(鮑のおむすび)|酒と肴 その二十一
関東海なし県の住人なので、山梨と長野には親愛の情を持っています。
海なんて、魚がいなけりゃ単なる塩水、しかもベタつくおまけ付き。ビーチじゃ水着ではしゃいでますけど、あんなん氷河期がくれば死にます。潮騒は言葉の通り、ただただ騒がしいだけのシロモノ。
47都道府県のうち、海がないのは8県のみ。20%に満たない割合です。これを厚生労働省の調査(平成21年)に当てはめれば、年間所得800万円以上の世帯と同じくらいの割合。そう聞くと、海のないことがいいことに思えてきますが、当然私の勘違いでしょう。
そんな内陸人なので、海の幸に対しての愛情はいびつです。
ですから今回の肴は海なし県が誇る海産物の代表、山梨名物「鮑の煮貝」を取り寄せました。煮られて真空パックされたものが貝殻付きで届きます。(正月用にふるさと納税で入手したのですが、年末年始は腸炎で食べられず今回に至りました)
まずはタイトル写真の通り、スライスした身と肝をビールで頂きます。これだけでも鮑の味・香りを存分に楽しめますが、メインは煮貝の汁を炊き込んだおむすびです。
こいつを信州飯田のお酒、喜久水酒造の「猿倉の泉」でやっつけます。鮑から出た旨味を楽しむために、具は入れずシンプルに仕上げました。大根の甘糀漬けが酒にもおむすびにもよく合います。
おむすび、日本酒、糀漬け(糠漬けも可)という米の多様性と懐の広さを感じさせる組合せ、世に言う「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、こういうことなのかも知れません。
それにしても、敢えて具を入れないのは「こだわり」な雰囲気になりますが、正直なところ量が少なくおむすびに回す余裕がなかったのです。貧乏根性から煮汁の最後の一滴まで頂きたかったのです。海がないとそれだけ卑屈になってしまうのです。
ちなみに同じ海なし県でも、栃木と群馬には優越感、岐阜と滋賀には距離感、奈良には劣等感を抱いています。この辺り、ダイバーシティは導入できていません。海なし県人にも色々あるのです。
メニューと材料
・おむすび(米、鮑の煮汁)
・大根の甘糀漬け(大根、糀甘酒、塩)
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