水瓶座のカミュ|日々の雑記#66
お酒のことばかり考え暮らしていると、アルコールに鼻が利くようになります。
路地裏にある飲み屋を見つけるのも、珠玉の酒エッセイに出会うのも、この身を酒に捧げているからでしょう。バファリンの半分は優しさですが、私の半分はアルコール、残りはもちろんアセトアルデヒド*です。
おかげで街に出れば酒を片手に闊歩する、アルコール中心主義者と出会うこともしばしば。人型アルコール検知器としては、すれ違う人が持っているお酒は見逃しません。傾向として男性はパックの日本酒かロングな発泡酒。女性はボトル缶のRTD飲料が多いようです。
結構な人が昼間っから歩き呑みしていることに驚きですが、生きていくには何かしらの「支え」が必要です。
まあ、お酒は液体なので支えになるかは怪しいところ。むしろ溺れる危険に溢れてますが、同志としては「酒で浮かぶ瀬もあれ」と願いたいものです。
そうしたなか駅の階段で、私なんぞじゃ足元にも及ばない、ハイクラスの酒呑みに出会いました。
意気揚々と階段を登るその人。丁度私の目の前、彼のウエストポーチには、フタに通してぶら下げるタイプのペットボトルホルダーが。
見るとはなしに見ると、そこにあったのはお茶やコーヒーではなく、ましてやお酒でもありません。金色に輝くウコンの力が、ご主人の歩みに合わせ揺れていたのです。
その瞬間、
「あ、負けた」
と思いました。
別にお酒は勝ち負けではありません。だけど会った途端にその力量と言いますか、器の大きさが分かる人っているじゃないですか?
この人の小宇宙(コスモ)には敵わない、彼が黄金聖闘士(ゴールドセイント)なら自分は青銅聖闘士(ブロンズセイント)だと、はっきり自覚したのです。
後ろ姿と服の感じから察するに、歳のころは60前後。夕方でしたから、きっとこのままお酒を呑みに行くのでしょう。軽やかなステップで歩みを進めるあたり、抑えきれないウキウキ感が伝わってきます。
準備万端、腰にウコンの力をぶら下げていることから、「たくさん呑むけど明日には残さない」そんなプロ意識を感じさせます。
やがて階段を登りきりひとつしかない改札。右に曲がれば飲み屋が多くある、愛してやまない場末の街です。
寸分の迷いも見せず、右に曲がる聖闘士。その水瓶の中身は不老不死のお酒、ネクタルという言い伝えがある星座、彼はきっと水瓶座のカミュその人でしょう。
人ごみに紛れる背中を見送りながら、まだまだ修行が足りないと感じた夜。
今夜のペガサス幻想(ファンタジー)は、どんな夢を見させてくれるのでしょうか。
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