上野リチ展 クラシックな洋館でデザインを浴びる
東京駅近くの三菱一号館美術館で開催中の
上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展
に行ってきました。
これまで上野リチという方を知りませんでした。
展覧会を見終わった今は、こんなに素敵なデザイナーををなぜ知らなかった…!?と愕然としています。
もし上野リチが現代に生きる作家さんだったら、間違いなく全SNSをフォローし、インスタで新作の情報を見つけたら即「いいね」をしてその可愛さにニコニコしていたことでしょう。
「カワイイ」っていうけど何を作った人?
とにかく幅広いデザインを手がけた人です。
壁紙、布、箱、便箋、ドレス、手袋、ブローチ、ネックレス、花器、食器、部屋の内装……身の回りにあるすべてです。
展示品が作られたのは古いものでは100年近く前ですが、アイテム自体は自分も使っているようなものばかり。自分の生活の中に、素敵な工夫を加えられる部分がこんなにもあるのか、と気づいて嬉しくなってしまいます。
展示構成
第Ⅰ章 ウィーン時代 ファンタジーの誕生
リチが学校卒業後に所属した「ウィーン工房」を紹介するエリアです。
そのためリチの作品だけでなく、幅広い作家の作品が展示されています。
1章を進んでいくと、だんだん遠くからでも「これはリチの作品かな?」「これは別の人だろうな」とわかるようになってきました。
鮮やかなのだけれどうるさくならず、まさに「楽しそうな」という形容がぴったりくる色彩が、リチの特徴として際立っていたように思います。
第Ⅱ章 日本との出会い 新たな人生、新たなファンタジー
第Ⅲ章 京都時代 ファンタジーの再生
京都出身の建築家、上野伊三郎と結婚して以降のデザインです。
京都とウィーンを往復しながら活動していたというそのアクティブさ見習いたい!デザインの対象もどんどん広がり、とても見ごたえがあります。
三菱一号館は小さい部屋が連なっているため、お気に入りのお菓子を少しずつ味わって食べていくような楽しさを味わえます。
ファンタジーって何?
展覧会のサブタイトルは「ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展」。
展示構成の各章にも「ファンタジー」が必ず入っています。
ファンタジーといっても、魔法やドラゴンの登場する作品ジャンルとしての「ファンタジー」ではなく、より身近な言葉のようです。
考えてみれば英語のFantasyには空想、想像という意味がありますね。
リチの「ファンタジー」、創作をするときだけでなく、日常に取り入れて生活を楽しくしてみたいですね。
ウィーン工房
主に展示の第Ⅰ章で紹介されている「ウィーン工房」についてもよく知りませんでした。
※この部分は、美術史の詳細を知らない人が、自分の連想をもとに、見ているものの立ち位置をちょっとだけクリアにしておこう、という目的で調べて書いています。美術史の詳細な情報は出てきません。
テキスタイルなどの生活のためのデザインといえばウィリアム・モリスなどが有名かと思います。
ウィリアム・モリスが活動したのは19世紀末のイギリスで、ウィーン工房が設立されたのは1903年、という時系列になっています。かぶってませんでしたね。
ウィリアム・モリスの主導したアーツ・アンド・クラフツ運動からの影響としては、「ギルド組織」というシステムで活動したこと。一方、社会変革に関する意識は異なっていたようです。影響はしていたので、「ウィリアム・モリス」はまったく見当違いの連想というわけではありませんでしたね。
詳しくはこちら。
参考:「artscape」アートワードhttps://artscape.jp/artword/index.php/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E5%B7%A5%E6%88%BF
どう回ろうか
線を引く楽しさ追体験
くるくるした線がよく登場します。
こちらは壁紙「そらまめ」
下は「紫カーネーション」
予想がつかず、「なぜその軌道!?」と思うくるくる線。
この軌道を手元でこっそりなぞってみると、リチのデザインにあふれている楽しさが自分の中に取り込めるような気がして楽しいです。
(手の中でこっそりやるか、胸の前で手を動かして堂々とやるかは自由ですが、他の方の迷惑にならない程度に。)
リスト、解説は基本スマホで
展覧会の入り口に置かれている「作品リスト」。
作品情報を記したキャプションとは別に、見どころとなる作品の横に貼られている「解説」。展覧会ではおなじみの光景だと思いますが、この展覧会ではどちらも、QRコードを読み込んで各自のスマホで見るタイプでした。
解説はいちいち読み込むのではなく、すべての解説がひとまとめになっているpdfのQRコードです。(公式サイトからも見られます。)
私は最初に解説用QRコードを見落としてしまったのか、展示の途中から解説ページにアクセスしました。しかし、すでに展示の半分を見終わっていたため、かなりスクロールしないと今見ている展示の解説までたどり着けず、結局あきらめてしまいました。
ですが、終わってから帰りの電車で読んでみたところ、作品の記憶がよみがえってきたのでこれはこれで楽しめました。
作品リストについては、なくても十分楽しめましたが、終わってみるとやっぱり紙で欲しかったなと思います。
紙の作品リストをもらえる展覧会だと、会場を回りながら作品名の横に「♡」や「!」などの記号を書き、お気に入りやびっくりした作品を記録していくのが好きなのです。
スタッフの方に直接聞けばもらえたりしたのかも?と思っていますが、実際用意があったかどうか等は未確認です。
ただ、接触の必要がなく、ゴミも出ないオンライン作品リストのメリットは大きいですよね。いっそ私がタブレット上のリストにメモを取る習慣を身に着けることが、今後の世界を美術好きとして生きていくうえで必要なのかも?
見終わった後は、柄物の服を着て出かけたくなりました。
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