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読書のすすめ|心温まる奇妙な同居生活ミステリー

乙一の作品が好きで、デビュー作品である「夏と花火と私の死体」から読んでいるのだが、ちょっとテイストが異なったこの「暗いところで待ち合わせ」が妙に気に入っている。

表紙からは、おどろおどろしい殺人事件が起こる様なホラー小説が連想されるが、そういったことはない。どちらかというとミステリーに分類される。
表紙は改訂されて、現在はアニメチックに描かれているみたいだ。
わたしは、発売当初のオリジナルの方が好きである。

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった――。書き下ろし小説。

物語は、あらすじの様にありえそうでありえないシチュエーションではあるが、ひとはこういった起こりえない状況に娯楽を求めるのであろう。わたしは大好物だ。

目の見えないミチルの家に、警察に追われるアキヒロが逃げ込んできて物語が展開していく。実際二人の立場を想像してみるだけで心臓が口から飛び出しそうである。
ミチルは誰かいることに気づいているが、目も見えないし、一人で外にも行けず恐怖だっただろうし、アキヒロは警察に追われている恐怖と、ミチルにバレてしまわないかという緊張感があっただろう。

わたしだったらビビりすぎて、なにかしらヘマをするのが目に見えてわかる。
きっと柱の角に小指をぶつけて悶絶するのだろう。

音も立てられないこの状況をドキドキしながら読めたことは、素晴らしい体験であった。こういった非日常を擬似体験できるのは小説の醍醐味である。

ふたりともどこか孤独感を抱いており、他人との関わりがうまくいっていない。そんなふたりが言葉を交わすことなく、こころを通わせていく過程が丁寧に描かれている。

わたしは人付き合いは苦手な方であるが、日々それなりに人とコミュニケーションをとりながら生きている。
内向的なふたりの心理は痛いほどよくわかるし、時折感じるであろう孤独感も、胸が締め付けられる思いで読んだ。

それぞれの視点で物語は語られ、切り替わりながらストーリーが進んでいく。そのためそれぞれに対して深く感情移入ができる。また、ミステリー部分も、きちんと後半に伏線回収されて、サクサク読める。

心温まるミステリーを読みたい時にぴったりの一冊。

最後に…あとがきを忘れずに読みましょう!


もし他の作品を読みたい方はウィキペディアを参考にすると良い。
(複数のペンネームをもっているため)


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mame
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