ホルモン療法と副作用⑧-2海馬とエストロゲンの関係
☝今回の話はここに出てきた話とも関係します
エストロゲンの受容体はこんなところにあるよ、という話をしたのがこちら☟
今回の話に出てくるエストロゲン受容体は三つ。
・扁桃体
・視床下部
・海馬
です。
ホルモンは血液で運ばれて全身をめぐります。
でもどこでもどこでも作用するわけではなくて、決まったところでしか作用しません。たとえばインスリンは膵臓でしか作用しない。エストロゲンもそうです。受容体があるところでしか作用しません。
そして、エストロゲンが働くところは一つじゃない上に、受容体が脳、それも生命維持に関わるところに多い。それはエストロゲンが神経伝達物質と相関しているからです。
扁桃体は脳内において情動や感情、特に恐怖や不安やストレスと関係が深い。ストレス刺激を受けると扁桃体は「これは私にとって有害か、脅威か?」と判断します。
扁桃体が「これは敵!」と判断すると視床下部がそれを受け取って内分泌反応として表出して自律神経反応が起こります。
たとえば緊張して手に汗握る。これが自律神経反応です。緊張して体がコチコチに固くなるとか、呼吸が早く短くなるのもそうです。
でもそのままだと困ったことになるので「落ち着けよ!」とツッコミを入れて視床下部の暴走を抑えるのが前頭前野。
前頭前野は「脳の中の脳」とも呼ばれ人間らしさの根幹を担います。記憶や感情を制御し行動を抑制し理性的な言動を維持します。
「あいつムカつく!」と思っても顔にも口にも出さずやんわりいさめたり、衝動買いやドカ食いにブレーキをかけるのもここです。
ここが衰えると感情の起伏が激しくなり、抑制もききづらくなります。そしてやる気が起きなくなったり物忘れがちょいちょい起きたりします。
視床下部と前頭前野のせめぎあいを受けて今度は海馬が反応します。
海馬は性ホルモン受容体が密集していて、大人の脳の中ではもっとも体積が変化しやすいところです。
ストレスが長期にわたりうつになると、フルスロットルの扁桃体に対して前頭前野がブレーキを踏みまくり、それを受けて海馬が委縮していきます。
脳のこれらの部分はヒトの性格形成に影響します。
ある意味ホルモンがヒトの性格を決定づける。
第二次性徴期に入り怪獣と化したり色気づいたりした中高生が二十歳を過ぎて少し落ち着き社会人になる年齢域になると「あの怪獣のような子がこんないいお姉さん(またはお兄さん)に?」とびっくりしたことが何度あったことか。
かと思えばせっかく入った会社がブラックで毎日毎日ストレスで疲弊して心身ともに壊れていく。扁桃体が刺激を受けすぎて視床下部と前頭前野がせめぎあううちに前頭前野が燃え尽き海馬がどんどん縮んで廃人になる。
脳は回復するのに3年かかります。それも心と体を適切な環境下においたらの話。ストレスをかけ続ければそれだけ脳が回復するのに時間がかかります。養生するのに罪悪感はいらない。無理は絶対禁物です。
エストロゲンは海馬にあり、記憶に関係するアセチルコリンを調整します。
そしてエストロゲンは
・セロトニンの産生を促し
・セロトニンの作用を増強し
・セロトニンとノルアドレナリンの正常なはたらきを守ります。
セロトニンも神経伝達物質の一つで、リラックスや精神安定に関係しています。セロトニンもアセチルコリンも、どちらもエストロゲンの量と相関関係にあるので、エストロゲンが減るとセロトニンもアセチルコリンも減ってしまいます。
そして、セロトニンが減るとうつやパニック障害、睡眠障害などさまざまな症状を引き起こします。
セロトニンはドーパミンとノルアドレナリンを抑制するはたらきがあるのでセロトニンが減ると反相関関係にあるドーパミンもノルアドレナリンも増えていきます。
ドーパミンもノルアドレナリンも必要ではありますが、どちらも過剰になるとさまざまな問題を引き起こします。過剰なドーパミンは依存症を引き起こし、過剰なノルアドレナリンは不安や恐怖、パニックを引き起こします。そしてどちらも過剰になると攻撃的になります。
前頭前野を鍛えることと、セロトニンを増やすことに共通しているのは、
規則正しい生活と、ちゃんと栄養がとれていること、そして質のいい睡眠です。そしてそれにはセトロニンと胃腸の働きがとても大事な役割を担っています。
昼夜逆転生活は確実に脳を壊します。さまざまな事情はあれど、できれば朝起きて、昼は動いて夜は寝る。それがいいかなと思います。