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FACiliTY - 第37回: 13歳からのアート思考 聴講レポート


13歳からのアート思考の著者末永幸歩さん(以下S)

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アーティスト、マーケター、サロンオーナーのナカヤマン(以下N)


のオープンイベントを聴講しました。


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イベント参加ページの前書きはこうあります。


各所で資本主義やロジカルシンキングの限界が指摘される中、「アート思考」は代替案として必ずと言っていいほどセットで登場します。一方で、その結論に見られるのは「美術館に行こう」の様な表面的かつ稚拙な結論に溢れているのが現実です。

これらは当サロンでも頻繁に議論される話題であり、当サロンオーナーであるナカヤマン 。は「ビジネスOSの人間が、アートOSとのハイブリッドが必要だと気付くまでが限界」「実行プランになった瞬間に、ビジネスOS用のアートAPPを必死に開発して頓挫するのが関の山。実行フェーズに入るとパラドクス化するのは避けられない」と結論付けています。

さて、アート・教育サイドの末永さんはどのようにこの問題を見つめられているのでしょうか。



■世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?感想


N 前半部分の世間がなんとなく思っているであろう思考の言語化が良くできていて人に勧めた。後半のエグゼキューションが「美術館行こうぜ」なのはがっかり。タイトルださい。

S 社会から求められているものが言語化されていると思う。自分が得意でない論理の部分が参考になる。



■13歳からのアート思考について


S いち個人として興味主導で作成した、学校の授業の構成を本にしたもの。アート思考が流行する前から、自分の中にあったものがかたちになっている。思考論や美術史の教科書ではない。

N ビジネスは狙ってトレンドをつくりにいくが、アートは狙わず興味からの活動がゆくゆくのトレンドに合致する。変化が激しい状況では、世間とのそりが合いやすくなっている。

S ビジネス利用の話になることが多いが、最新の方法論や価値創出の飛び道具ではなく、批判的に自由にものを考えるマインドのこと。それ自体は昔からあるものの見方。

N 例えば、野性的な生活をしていた時代より現代人の免疫は下がっているように、近代化で様々なことができるようになった反面、捨ててきたものもあった。効率化を追求して社会に認められるものだけに偏ると、それ以外のことが重視されなくなるし、人々の考え方が画一的になっていくが、どこかで軽視されているものの存在意義を見直すタイミングがくる。ということ。


■アートを植物に例える。


興味の種 作家の自分起点での興味や疑問、好奇心

探求の根 アート思考(自分なりに物事をとらえた思考)

表現の花 成果物、作品


・鑑賞サンプル

アビニヨンの娘たち/ピカソ ~リアルってなんだ?~

写真みたいに一方向からキレイにかくことはリアルか?

裏側や経験や感覚も表現されていることがリアルではないか?


・自分のバイアス(常識、固定概念、視点)を知る。

新しい他の見方を知る。知らなかったことを知って世界が広がる。知り方として近代の作家を学ぶことが有効。それまでの伝統的方法論の芸術に向き合い、個人の軸で新しい表現を開拓してきた時代なので学びが多い。



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N 「アートとは」という話やものの見方、考え方を扱う点で、いわゆる、教科書+座学+実技というような、自分が経験してきた学校の授業とは違うような気がするが。

S 具体的には1学期は頭を使う。マインドセットと思考を壊してリセット。2.3学期は手を使う。興味と探求を実行して試行錯誤。という構成。

公務員時代はまわりからいぶかしげにみられていた。どうしても学習指導要領という指定項目をこなすことや、教科書的に見栄えの良いものをつくることが重視されるので。客員教授になってある程度自由になったことで実現できたスタイル。

■パッと見、美術は効きが悪いクソゲー

N 学校が、受験・偏差値で可視化されている競争ゲームと考えると、教科として数学/英語と並んではいるけど、美術/音楽は効きが悪いクソゲー。

S 点数にはならないし正解はないが、答えがたくさんあるアートは文科省の提言する「生きる力をはぐぐむ」に沿う。用意された指定項目をこなすことが正しい授業なのか、というところはある。

N 世間では「偏差値を上げるだけが学校教育じゃない」というようなコンセプトとして聞こえのいいものはあるが、業務やシステムとしては実態がそうなっていない。というようなことは社会でいっぱいあって絶望する。

感性を磨く(アート)と お金儲け(ビジネス)が対立したときに、お金が優先するのは現実問題仕方がない部分もあるが。「人間は動物」としてみたときに無駄をたくさんやってきたし、野生動物的な強さも大事。長い時間を経てから役に立ったこともある。伝達効率は悪いが。

S 即効性がないが俯瞰で見て、必要な教養だし長期的な教育。ビジネスの場面でも。世間はアート思考でひとくくりにしたがるが、あいまいな概念だし、その周辺の関係者個々で考えややっていることが違う。

N そこをどうヴァージョン2.0にしていくか。

S 本がもっと多くの手にわたって議論がうまれてくれると嬉しい。本をつくっている時に探検しているような感覚があった。一般的な編集より長い時間をかけたし、構成やレイアウトなど細部にもこだわった。数字を考えると無駄が多いが、初期の授業草案から内容量が3倍になって充実したし、その間、没頭して自分事化できていた。これからも自分が面白いと思えることをやりたい。



QA 哲学、成果、社会実装と今後・・・



Q.哲学とアートの関係についてどう思うか?

原稿に興味を持ってくれた編集が哲学修士だった。目新しくないことを考え続けてきた点とか。すごく近い関係だと思う。


Q.アートがある世の中の理想像とは?

ビジネスマン向けに出版したが、それ以外の人からの反響が多かった。こうあるべきという執着やKPIをたてて考えてはいない。届く人に届いて反応している感じがあるので、思考のきっかけが増えると嬉しい。


Q.授業の成果は?

多くの成果物は正直見た目はよくないし、そもそも作品にならないことも多い。そこに至る探求の過程をスケッチブックで残してもらったアートの根の部分を評価することにしている。

マインドセットの授業でいったん理解できたようですっきりするが、手を動かす段階でまた悩む。作品の出来が悪くても探求の出来が良いこともあり、それを、まわりの大人に理解してもらうのが課題。


Q.ナカヤマン。さんのアート思考体験

アート思考のビジネス実装にこだわると、組織で働く折合いの難しさから理想論になりそうだが、体験や思考という点で、ある。

ファッションの場合、ポップな売上げと歴史やブランドらしさの対立があって、研究者のような熱心なファンを納得させつつ期限内に会社からのお題に答えて利益を出す必要がある。その過程はアート的。ビジネスの場合、お題と期限がある仕事を重ねていくことで成長できるありがたさがある。

今は報酬より興味で仕事を選んでいる。自分軸で考える点で共通している。



---聴講内容は以上です---



■感想 良質なコンテンツでした!

Nさんは言葉選びは棘々しいところもあるのですが、発言がキレキレだし、ゲストにセレブディナーおごったり、部下いじったりして、ちょい悪アニキって感じでいいキャラしてました。

150名ぐらいの動員から世間の関心の高さがうかがえるし、中には勢いのあるベンチャー経営者や、T田倉庫、ギャラリーオーナーの方が聴講してたり、チャットも盛り上がってたりと、熱量高く雰囲気もいい感じだったので第二弾もありそうです。

イベントのデザインが秀逸で、他のオンラインイベントとは別格でした。エモーショナルに楽しめる良い雰囲気づくりや、抽象的テーマにつきものの「もやっとするがそれがいい」だけの終わり方にならない設計が効いていたと思います。これを毎週やってるってすごいな。サロン参加しようかな。



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