羽深昼

散文とか詩とか、読んでいただけると嬉しいです。

羽深昼

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最近の記事

詩「祈りの中で」

打ちひしがれてしまった君は また誰にも気づかれないように 一人で泣いているんだね どんどん小さくなって 幼い君の手が 探し求めていたのはなんだったのかな いつかきれいに想える日が来るから そこは緑色とオレンジが重なり合いとろけ落ちた、涙がこぼれ落ちるような美しい朝焼けだ。 私はまちつづけるよ きっとこれがいつかの最後だとしても ああまた美しい幻を見てしまっているんだね いつか君がいなくなってしまうことがこんなにも恐ろしいなんて 夜の闇の中で泣いていてもいいんだよ 私は

    • 散文「ひとりの朝」

      朝帰りが好きだ バスの中から見上げた薄い青空が 満たされなかった心の隙間にすっと入ってきて 静まり返った感情と重なる 窓ガラスに映る顔はどこか知らない人 通勤の人々が駅に向かってる中 ひとり逆流している魚みたい 孤独は感じてないの だけれど 家に帰るときの緊張感 親が何か言いたげな顔でただ「おかえり」って言ってくれる 許されてることがわかってるから 同じ事を繰り返してしまう 甘い気持ちとお酒が体に残ってる まだ夢の中にいるみたいだ 昨夜のことを思い出して 少し淋しくて、

      • 彼岸花が咲く頃に

        彼岸花が咲く頃に 逢いにゆくよ どこかできいた詩だ 道端の誰も見ないような隙間に おまえは咲いているんだろう 誰もがはっとする赤をたたえて きっともう見ることはない 彼のまなざし 赤く血がほとばしった こちらを見据えていた この憂愁は きっと秋のせいだろう 彼岸花が 彼岸花がとらえて離さない 彼岸花が咲く頃に あの道は一人で歩いてゆこう

        • 春を悼む

          泥流をなぞる桜の花びら 深呼吸をすれば桜に犯されてしまいそうだ 穏やかな春の日は突如絹に割かれたように裏切られた。 魔法なんて、生易しいものじゃない、魔術にとりこまれたようだった 昔から自分がわからなかった。生きてるのか死んでるのか。この人たちが家族だということも不確かに思われた。 弟だけが、この世界に私を繋ぎ止めてるものだった。その弟が失われた今、私自身がまた不明瞭になってしまった。透明人間みたい。 一つの季節、こんなに密度の濃い春はこの先二度とないだろう。 弟を、

        詩「祈りの中で」

          散文「昔好きだった人」

          カーテンの隙間から見えた曇り空が 寝起きの気怠さと頭痛で動きたくない私 まだ布団にいることが許されてるように感じた 支度をはじめた君に気づいているけど まだ寝ているふりをするよ 「行ってくるね」って頭を撫でてくれるから ごめんねってやっと返事をして送り出す もう会えないかな

          散文「昔好きだった人」

          散文「きみがいなくてもしあわせ」

          今日はとっても天気がよかったから 部屋の掃除をして ちょっと英語の勉強なんかをしてみて おやつにはチーズケーキを食べて お昼寝して 絵を描いたり 眠る前は詩集を読んじゃったりして 君がいなくても、いい日だったな

          散文「きみがいなくてもしあわせ」

          短編「喫茶店にて」

          「実際、俺に興味ないよね?」  うわー、なんでばれたんだろ。  ごまかすようにクリームソーダにのったアイスを一口食べた。  せっかくさっきまで楽しいデートをしていたのに。上野の動物園でパンダを見て、喫茶店でお茶をして、座り心地のいいソファに身をしずめてゆったりとしていた私に、彼は不意打ちを食らわせた。  この前のちょっとしたけんかをまだ引きずっているのだろうか。  おそるおそる彼を見上げた。なんとも思ってないようにも、感情を抑えようと我慢しているようにも見える。 先に好き

          短編「喫茶店にて」

          詩「白雪さんの最期」

          白雪さん白雪さん 世を儚んでいた白雪さん 魔女がくれたあのリンゴ 毒リンゴだって知っていたのに ひとくち ふたくち 食べた 食べた 「期待することに疲れた人生とはさよならね」 少し微笑んで 永遠の眠りについた 君には白馬に乗った王子様がいたというのに

          詩「白雪さんの最期」

          散文「不思議なまま」

          恋をしている時がいちばん楽しいです 無かったことにしてきたことが多すぎて 何年生きたとて空っぽのままになってしまったのさ 誰もいないなにもない 肺は真っ黒それとも空っぽ? アリスの世界にいけたなら 空間は時間で時間は空間ではない 午後3時のティータイムにはモヒートを出してやるのさ どうぞミントの香りをお楽しみ遊ばせ 笑わない少女が一人首を傾げている 恋を知らない?それとも知りすぎているの? ピンク色の夢がだんだん紫色の夕焼けに変わっていくんだよ スモーキーに演出してみ

          散文「不思議なまま」

          詩「中秋の名月は終わりて」

          この恋する煙は お月様まで届きそうにはないわ 9月の名月は終わってしまったけど 雲の隙間で爛々と光っているあなたは 私だけを慰めているのだと 自惚れを抱いて 煙草がおいしい今日も眠れない夜を眠ります

          詩「中秋の名月は終わりて」

          詩「夏の幻」

          夏の夕方は 急激な雷雨にご注意ください 恐ろしくって外で煙草が吸えないや 煙が部屋に入りこんでしまった 一体どこまでが僕なんだろう 全てが僕の延長線ならば 輪郭が線引きしてくれないこの部屋で ぐずぐずしている僕は救えないね 閉じ込められたんだ もう一生この部屋から抜け出せない 早く死んだところで きっと貰い手もいないことだし いっそ飛び出して 夏祭りで神隠しにあってしまおう 2,3日戻ってこなくたって誰もわかりやしないさ お盆の百鬼夜行に巻き込まれたのさ 下駄は片方置い

          詩「夏の幻」

          詩「可笑しななぐさめ」

          例え太陽が偽物だって 僕を真っ直ぐに照らすこの月明かりは本物だ 微笑み返すのを忘れないようにしないと 君に日々をあげたいよ 夜光虫が飛び交う暗闇 長すぎる夜は 羽を落として地に堕ち落とされてしまおうね 道化師になり下がってしまったってかまわない 時計回りの世界に引き摺り落とされたから 砂糖に溶けたくまのぬいぐるみ 破れた水色のスカート ここに君が忘れてしまったものを ずっと大事にしている 正常と異常に きっと大きな違いはない おかしの世界で 分身のぼくら 9時にはコー

          詩「可笑しななぐさめ」

          詩「生活」

          午睡から目覚めた後 家の中に誰もいないと気づく瞬間 脱力感に打ちひしがれ 気怠さだけが残る昼下がり 自分の居場所を探すふりをしてる 生活の雑事は 洗濯できれいに洗われ乾くはずもなく 美しくもなんともない 世界に存在する理由を探してる ふとした退屈の隙間に 襲ってくる虚無感と 目を合わせないように 庭の花を摘んで部屋に飾るのです くだらない日々を縫うように 吹き抜ける風 ただ繰り返すだけのことを怖がるのは もうやめにしよう 日常は突如反旗を翻すことはないのだから

          詩「生活」

          詩「The Empty Night」

          悲惨な過去も惨めな思い出もありません 何もないことが僕を僕たらしめていて どう咽せいで叫んでもその事実に耐えきれないのです 痛みも歓びも与えてやれません 枯れた花に水をやることすらできません これを人は甘えと言うのでしょう 幸福だったはずの 何も知らなかった子どもの自分に もう戻れないこと 昔日の幻影にすがっている 醜い自分が今あること いつも夜の底で考えている 明日が来ることが怖いんじゃない この夜をやり過ごせないことがたまらなく不安なのです どうしても やりきれな

          詩「The Empty Night」

          詩「Memories 」

          雨が止んだあとに鳴くカラスの声 湿度を孕んだ生温い空気 緑の立ち込める匂い ほこりをかぶった白いシーツ 生活の惰性 夕方に迷子になってしまって 心細くなった感覚とよく似てる 手を離したのか、 離されてしまったのか ふと見た横顔が 夕陽の影になってしまって見えなかった 昔日たちが記憶に襲いかかってくる 悲しい予感があったあの日の 浮かび上がった頬の輪郭線 子どものような さみしげに遠くを見つめていたあなたは 夏の暑さの中で見た幻となってしまった

          詩「Memories 」

          詩「東京砂漠」

          歩いて 歩きつづけて 辿りついた 東京砂漠 真ん中一人 このまま干からびて死んでいくのが いいことなのか悪いことなのかがわからない 景色がぼやける 陽炎が揺らめく 意識は昏倒 宝を袋いっぱいにして 盗まれないように 慎重に旅をつづける キャラバンの列 白昼夢の中 いつしか使命さえ忘れて 人々が 気が狂ったふりか 正常なふりをするのだろう 疲れきってしまった 白骨化したウミガメの死体が うちあげられている 海辺で微睡みたい

          詩「東京砂漠」