嫌われたくないと思う意識
※書籍『子育てを最高の宝物に』
第2章 <子供のために、自分のために、大人が考えておきたいこと> より抜粋(十数回に分けて公開中)
会社では「いつも自分に厳しい上司」や「揚げ足ばかりとってくる部下」「なんだか噛み合わない同僚」。
学校でも会話が噛み合わない同級生や話のペースについていけなかったり。
そういった人が周りにいると気が滅入ることがあると思います。
「嫌な相手がいれば付き合わなくても良い」と言うわけにもいきません。
会社であれば毎日顔を合わせますし、同じプロジェクトを進めていればコミュニケーションは必要になってきます。
学校でも同じクラスの子なら毎日顔を合わせたりして気を遣いすぎて心が疲れてしまうこともあるかもしれません。
最悪の場合、精神科に相談をしなければいけないくらい心の状態を悪化させてしまうケースもあります。
会社や学校以外では近隣住民での集まり、付き合いで何かの会に参加したりすることもあるでしょう。
「アドラー心理学」というのをご存知ですか?僕はそれほど詳しいわけじゃないんですが、【1:2:7の法則】というものがあります。
ちょっと専門的な話になりますが少しお付き合いください。
アドラー心理学は対人関係の法則のことですが、【1:2:7の法則】も対人関係の法則です。
例えば、あなたの周りに10人の他人がいるとします。
その10人の中で、あなたがトラブルを起こしてもあなたのことを変わらず好きでいてくれる人が1人はいます。
それは嬉しいことなんですが、一方であなたがどんなに良いことをしても、自分のことを「気に入らない」と思っている人が2人はいます。
そして残りの7人は自分がその人たちとどう接するかによって好意を持ってくれたり、持ってくれなかったりする、と言うものです。
この教えには科学的根拠があるわけではないそうなんですが、僕は的を得てると思っています。
学生なら学校の同じクラス、社会人なら職場にはどうも気が合わない、反りが合わない人は2・3人程度はいませんか?
そう言う人と今後付き合っていくということは当事者であればできれば避けたいことだと思います。
やっぱり気持ちよく学校生活を送りたいですし、仕事にも集中して取り組みたいと思う人が多いはずです。
特に日本人は無意識的に「よく思われなきゃいけない」もしくは「嫌われないようにしないと」という意識が働き、その思い込みにとらわれてしまう人は少なくないでしょう。
先にも述べましたが、
気の合わない人というのは10人のうち2人くらいは必ずいます。
しかし「良く思われなきゃいけな」「嫌われないようにしないと」という思い込みが無意識に働き、学校にいるだけで、会社にいるだけで非常に大きなストレスを抱えることになってしまいます。
「良く思われなきゃいけない」「嫌われないようにしないと」という意識が生まれてくる原因は色々あると思います。
僕個人の考えで科学的根拠はありませんが、原因の一つに幼児期や幼少期の【親御さんからの愛情】があると考えています。
この【愛情】の捉え方は人によっては様々です。
学校や塾でしっかり勉強させることも愛情でしょうし、自由に遊ばせることも愛情です。
個人的に考える愛情は、
【子供の感情が動く機会を与える】
ことが大切だと思っています。
「楽しい」「ワクワクする」「面白い」「なんでこうなってるの?」「もっと追求したい」「安心する」。
こういったプラスの感情が動くことで子供自身の集中力や好奇心、探究心が芽生えるんだと思っています。
そしてこういった感情へ導くのが親御さんや教師の愛情なのかなと思います。
もちろん他の方法で導く愛情もありますのでほんの一例です。
しかし、感情が動かないとどうなるかと言うと、もっと自分を見て欲しくなったりかまってほしいという気持ちが高まります。
そして、大人が自分を見てくれるような行動をとるようになります。
「良い子にしててね」と言うと良い子になろうとします。
しかし、良い子とはどんな子なのかを理解せずに言われた通りのことをするようになってしまいます。
「勉強しててね」と言うと勉強するようになります。
勉強が好きでするのではなく言われたからするようになります。
今上げた例はちょっと極端な例えですが、要は子供時代に好奇心やワクワク、安心するなどのプラス要因で感情が動く経験が少ないことが結果的に、
かまってほしい
もっと見てほしい
いい子になるから
という反応になってしまい、
良く思われたい
嫌われないようにしないと
おとなしくする
という行動になる気がしています。
これは僕個人が感じていることなので科学的根拠はありませんが、正直そう感じています。
しかし、小さい時からの積み重ねが大人になった時に「お利口な人」として現れてしまうんだと思います。
大人になってからの「良く思われなきゃいけない」「嫌われないようにしないと」という意識はちょっとやそっとじゃ変えられないでしょう。
僕自身もまだ周りの顔色を伺ったり良い人を演じたりしてしまう傾向はあります。
個人的に意識していることですが、最近は誰に対しても良い人ではなく「この人になら」と思える相手にはできるだけ力を貸すようにしています。
全員に無難にではなく相手を選ぶようにしています。
「好かれたい」というよりは「力になりたい」という意識が強いですね。
全員に対して「好かれたい」は、常に周りを意識し続けなきゃいけないので心が持ちません。
だから「この人になら力を貸したい」って思うようにしています。
えこ贔屓かもしれませんが、そんな考えを持つようにすると少しは気持ちが楽になった気がしています。
あとは、わからないことや経験したことのないことをもし頼まれたとしても、自分の感情が動かなければできるだけやらないようにしています。
頼まれたことをするかどうかの軸は「感情が動くかどうか」です。
要は自分にメリット(楽しいか、学べるか、応援したくなるか)があるかどうか、そこを判断基準にしています。
改めて言うまでもないかもしれませんが、「誰からも嫌われない」ということはまず不可能です。
人それぞれ好き嫌いや個性が違う以上、あなたのことが好きな人もいれば、嫌いな人もいます。
もちろん嫌われるよりは好かれたと思う人は多いでしょうし、僕も基本人には良く思われたいですからむやみに人に嫌われるような振る舞いはしません。
周りに自分のことを嫌いな人が増えてしまうと学校では友達関係が悪くなって学校生活に影響が出てしまったり、会社なら上司に嫌われれば仕事がしにくくなる環境になってしまうかもしれません。
一般的に欧米人に比べて日本人は、他者に対して過剰適応の傾向にある人が多いと感じていて、その理由は様々なことが考えられますがその一つに、小さい時からの愛情の欠如による
もっと僕を(私を)見てほしい
かまってほしい
という意識が過剰に反応した結果、相手の求めることに応えようとする意識く強く出ているいる気がします。
仕事においての話しになりますが、仕事上の人間関係は本来利害関係がはっきりしているから、プライベートに比べれば割り切りやすいはずです。
少なくとも、家族との人間関係よりは、仕事の人間関係をうまくやるほうが、難易度は低いと思っています。
理由は会社が求めるものを働き手が提供し、働き手は見返りにインセンティブ(報酬や経験など)を受け取る。
互いのメリットがある程度はっきりしているからです。
もちろん仕事上の割り切った関係以外にも居心地の良い環境作りのためにコミュニケーションを意識することも大切です。
しかし、現実には職場での人間関係を必要以上に悩んでいる人は少なくありません。
それは多分、無意識のうちに「仕事上のお互いのメリットや利害関係」以外に、
もっといい関係を築かないといけない
ということを意識し過ぎてしまっているからかもしれません。
もちろんそれが苦にならない人もいるので一概にはいえませんが、コミュニケーション過多になって、【関係性作りを辛く感じる人もいる】ということを多くの人に、特に経営者やリーダー、教師の方々には知って頂きたいです。
好きではない人や嫌いな相手に対して、逆に自分からすり寄っていったり、相手を持ち上げたりする人もいます。
これを心理学的には「反動形成」と呼ばれていて、自分の中にある相手に対する怒りを隠すために、自分の本心とは反対の言動を取ると考えられています。
反動形成が起こっている人の心理にはいくつかパターンがあり、「嫌っている」という気持ちを相手に気づかれることが怖くて過剰にサービスする、という人もいれば、「誰かを嫌うという気持ちを持っていること自体を認めたくない」という心理の人もいます。
いい人でいたい
人を嫌う自分を認めたくない
反動形成にはこうした心理があると考えられていて、この反動形成のほとんどは、自分でも気づかない無意識な行動であったり当事者に自覚があまりないのも特徴です。
だから、相手のことを嫌っているという自分の本心には気づけないまま、相手が求めてくることに必要以上に応えようとしてしまいます。
必要以上に残業をしてしまう行為もこの反動形成が関係していると考えています。
反動形成の背景には小さい時からの「もっと僕を(私を)見てほしい」「かまってほしい」という心理からくる「過剰適応」というものが大きく関係しているかもしれません。
こうした傾向を持つ人に必要なのは、
嫌われても大丈夫!
自分はやっていける!
という、ある種の「根拠のない安心感」が必要だということが言えると思います。
ただ、これを身に付けるのは過剰適応の傾向を持っている人にとっては、それなりに難しいハードルだとも考えています。
例えば「あの人に嫌われても大丈夫。他のみんなが君を嫌っているわけじゃない」と言われたところで、潜在意識に染み付いてしまった「嫌われることへの恐怖心」はそう簡単に払拭することはできません。
人に依存しすぎないメンタルを身に付けるための1つの方法として、【自分の得意なこと】をどんなことでもいいので1つは持っておくと効果的だと思います。
この「自分の得意」や「人に負けない何か」は、仕事と直接結びついている必要はありません。
むしろ、仕事とまったく無関係なもののほうが、かえってメンタルの支えになることがあります。
これは社会人以外でも学生でもどなたにとっても大切なことだと思います。
僕の場合、動画制作を25・6歳の頃から41歳の今まで約15年ほどやってきましたが、商業映画や大きなポジションを経験したわけではありません。
しかし撮影や編集を長年やってきて「これから動画を始めたいけどどうすればいいかわからない」といった方や「ちょっと編集で力を貸してほしい」といった相談には答えられる自身はあります。
大きな経験ではなくても自分の力を必要とする人がいて、僕の力を提供できることが心の支えや自信になっているんだと思います。
このことからわかるのは、何かに没頭したり時間をかけて取り組んだ経験がある人は、【自分の心を支える力を見つけられる人】なのかもしれません。
趣味の世界でも結構ですので、そういう「自信があるもの」を1つでも持っておくと、誰かから嫌われたり、いじめられたりすることがあったとしても、そうした困難を乗り越える力、ある種心の拠り所になることがあると思っています。
また、「承認欲求」という言葉はご存知の方は多いと思いますが、この「承認欲求」というのは「自分を認めて欲しい」という自分の願望です。
自分自身の心から出てくる欲求のことです。
「他人が自分のことを認めている」ということが分かっているからこそ、心が落ち着いていきます。
しかし、それは裏を返せば「他人があなたのことを認めてない」ということを知ってしまった、もしくはそう思ってしまった瞬間に「認められていない」という不安になり、「良く思われよう」という意識が生まれてしまう可能性があります。
他人に認められたい
という意識ではなく、
自分で自分を認める
という経験をする必要があります。
誰かに依存するのではなく、自分が自分のことを許す、または「それでいい」と自分自身が認める。
【他人】ではなく【自分】を見つめるような意識の変化が必要かもしれません。
「これだけは自信がある」「人に負けない」といった【得意分野】を1つ作っておくと承認欲求が満たされ、他人の目を気にせずにいられる。
そして安心感が育まれてくんだと、個人的には思います。
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