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別れるのは「ちょっと思い出す」ためで
3月は「別れの季節」ということで、今回のテーマは「#別れ」。
これまで生きていた中でも色々な出会いがあり、そして別れもあった。恋愛的なことでもそうだし、友人や家族、仕事関係の人など、様々な別れがあった。
先日引っ越しをするために、4年間住んでいた部屋を片付けた。広い部屋ではないのでそこまで荷物はなかったけれど、ベッドの下の、奥の奥から、4年前に引っ越してきてから一度も開けていない段ボールがひと箱出てきた。
その段ボールを開けてみると、本当に懐かしいものが沢山出てきて、ちょっとしたタイムカプセルだった。高校生の時に大好きだったバンドのCDとか、大学生のサークルで後輩から貰った色紙とか、アルバイト時代の写真とか、懐かしいモノたちがぎっしり詰まっていた。
その中でも身震いするほど懐かしかったのが、音楽デュオ羊毛とおはなの『LIVE IN LIVING for GOOD Night』というCDだった。
手紙の封筒のような紙のケースがめちゃくちゃお洒落で、その見た目に惹かれて初めてジャケ買いしたCDだった。聴いてみるとそのメロディも歌声も最高に優しくて、当時ずっと聞いていた。
懐かしいな~と封を開けて、歌詞カードをめくる。と同時に、こういう曲が好きだった時代があったことを思い出し、このCDを当時好きだった子に貸したことを思い出し、ついでに当時よく行ったお店のことや、遊んでた友人のことなんかを思い出した。そういえばあの子は元気だろうか。
些細なきっかけで、そういえば、と思い出す人がいる。その人のことは日頃は忘れているのに、なぜかその瞬間だけ鮮明に、当時の温度感を持って思い出す。
『ちょっと思い出しただけ』
この映画は男女が別れたところから始まる恋愛映画だが、きっと男女に限らず、別れて会わなくなった人のことを思わずにはいられない映画だ。
元ダンサーで今は照明スタッフの照生とタクシードライバーの葉。物語はふたりが別れてしまった後の誕生日から始まり、その前の誕生日、そのまた前の誕生日・・・と6年間の1日だけを遡っていく。
(以下ネタバレがあります)
この映画は二人が別れて2年後から始まり、別れて1年後、別れる直前、ラブラブな時、告白をした時、出会った時、と6年間を遡り、最後には別れてから2年後に戻ってくる。
最後のシーンで葉はたまたまトイレ休憩で立ち寄った劇場で、仕事を終わりに無断で躍る照生を見かける。しかし彼女は彼に声をかけることなく、そのまま劇場をあとにするのだった。
この映画を観たときは「なんで声をかけなかったんだろう?」と思った。だけど多分それでいいのだと今は思う。
人生の中でずーーーっと一緒で、別れがない人なんてごく僅かしかいない。いや、人間死ぬときは一人と思えば、別れない人なんていないのかもしれない。
もちろん長く一緒に居られることに越したことはない。けれど、出会った全員とずっと一緒なんてありえないし、別れていく人数の方が多いに決まっている。
それなら思い出に保存して、ふとした時にちょっと思い出せるようにしておいた方が、その人との出会いを上手に捉えられるように思う。だから無理に再会をしなくたって良かったのだろう。
引っ越しが完了して、新しい生活が始まった。これから沢山の人に出会うと思うけど、きっとその反面で別れもあるだろう。だけど別れに臆することはない。「ちょっと思い出す」という距離感の人がたくさんいる方が豊かな人生だと思うから。
ここからは完全に余談だが、この記事を追加している「日刊かきあつめ」というマガジンをかれこれ3年以上やっていて、はじめた当初は今よりもメンバーが多かった。だけど別れていった人もいて、今は全然合わないけれど彼らは元気にやっているだろうか。こういうnoteを書いて、ちょっと思い出しただけ。
文章:真央
編集:アカ ヨシロウ
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