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#ナッパの日常、#葉野菜

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ナッパの日常を描きます ※改名したので使っていないマガジンです
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#短編小説

あいつは何もわかっていない   #葉野菜

あいつは何もわかっていない #葉野菜

あいつはわかってない。
幼稚園に入る前から一緒にいる、いわゆる幼なじみってやつにも関わらず。
高校もあいつから同じとこにしようと提案してきたくせに。
あいつは全然わかってない。
本当に何もわかっていないのだ。

何がわかってないのか?
例えば、あいつと2人で遊びに行った時。
あいつは当然のように、車道側を歩く。
当然のように、僕の好きなところへ行く。
僕との会話で話題に出たスイーツはすべて把握して

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ママはお城のお姫様  #葉野菜

ママはお城のお姫様 #葉野菜

ママは金曜日の夜、家に帰ってこない。
たまに土曜日になっても帰ってこない。
でも、私は平気。
だって必ず帰ってくるってわかってるから。
それにね?
私は知ってるんだ。
ママは金曜日の夜だけお城のお姫様になるって。
ママが言ってたの。
そこには王子様もいて、
夢の世界に連れて行ってくれるって。
ママ、とっても嬉しそうに言ってたの。
それってシンデレラみたいで素敵よね。
それでね、私もなるんだ。
大人

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彼女は目が悪い     #葉野菜

彼女は目が悪い #葉野菜

「ねぇお兄さん。ちょっといいかしら?」
突然、その女性は俺に声をかけてきた。全くの他人であるその人は名前を「アカネ」と名乗った。妻に離婚を、上司からはリストラを突きつけられた俺は、行くあてもすることもなかったからその女性の誘いにのった。
「話しを聞いて欲しいだけなの。」
女性はそう言って話し始めた。

目が悪いのって不便だと思う?……そうよね。
世の中の大半の人が不便だって言うと思うの。
でも、私

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信仰心   #葉野菜

信仰心 #葉野菜

「今日もリンゴなんすね」
「そうよ」
お昼時、俺の言葉に綺麗な声で返したのは、俺の先輩である紗夜さん。彼女は全てが完璧で、出会って一目で惹かれてしまった。長いまつ毛に綺麗な爪、透き通るように白い肌と、窓から入ってくる風になびくサラサラの髪。本当に綺麗で、まるで造形物のようだった。
「白雪姫」
彼女をそう呼ぶ人は多い。高嶺の花である彼女がリンゴ好きだということで、そう呼ばれているらしい。
「どうした

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1D100は今日の運勢  #葉野菜

1D100は今日の運勢 #葉野菜

朝の電車以上に窮屈なものは無い。
そう実感できたのは高校生になって、通学が自転車から電車に変わってからだった。
他人と肌をピタリと合わせて狭い空間に押し込まれることは、言っては悪いが不快で、高校に入学して1ヶ月くらいたったある日から、1本早い電車に乗って通学することにした。

僕は毎日、必ず電車の中でやっていることがある。それは1D100を引くこと。よくTRPGで使われるあの変なサイコロだ。(わか

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