人類滅亡確率

｢本日の人類滅亡確率は10%未満です。それでは今日もいってらっしゃい」

かつての渡来人は三日月の縁で笑っているし
四季はとうの昔に｢四｣季ではなくなった

ゆっくりと呼吸を意識しなければ苦しくなってしまう
｢最近の流行りは熱的死なんだよ｣と言う女の矯正器具がひかった

まともに生活するために邪魔な感情を削ぎ落とし続けていたらいつの間にかわらえなくなっていた
戦争反対を叫んだセーラー服が銃を構えるまであと数秒

核心をつくSNSの投稿に無感情でハートマークをタップ　
かなしみから目を背けて心と体を切り離す
ドミノ倒しのようにダメになる月曜日　
他人に期待しない信じない　
小雨の朝、他人の傘の大きさが不快
通勤路で死亡事故が起きたらしい　目を背ける
目を背ける　目を
テナント募集中の看板が強風に傾く
二人称にあたるひとがいなくても生きている
終末論のWikipediaをながめる　1400億年、ながい

才能がない　キュートアグレッションを振りかざして握りつぶしたなにか
まともになりなさいと大人が言う。まともになりたいと私は思う。

ライブが終わったあとの会場で余韻のリズムをひそかにタップ
現実から目を背けて感情と記憶を切り離す
駐車場で膝を抱えた火曜日
自分を裏切らないでも信じない
強風の夜、音を鳴らす窓が不快
通学路で通り魔が出たらしい　目を背ける
目を背ける　目を
入居者募集の看板は色褪せる
二人称にあたる人がいなくても生きている
終末論のWikipediaをながめる　1400億年、ながい

あぶない、夜にのまれるところだった
眠剤を飲みに起き上がる
鈍色のシンクにぐらりとする
ルーティン化して枠にはめ込んだ日々を繰り返すことを見過ごせずにいたら、ふつうではなくなってしまったの

1400億年、ながい　
もう、いい