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ままま な私
息子がうまれた日。
うまれたてほやほやのふにゃふにゃでこわれてしまいそうな赤ちゃんを隣に抱いていた。
ずっと会いたかった。
初めての出産を乗り越えた私にとって、やっと会えた息子は、「私の赤ちゃん」というよりも、「私のおなかから出てきたひとりのひと」というほうがしっくりくる、ふわふわした存在だった。
息子と2人の時間に自分のことをこっそり「ママ」とか「お母さん」とか言ってみたけれど、それまで「私」としてだけ生きてきた私にはこそばゆくてなんだか馴染まなかった。
赤ちゃんの国ではお菓子の家を作る大工さんで、毎日つまみ食いをしながらなかなか完成しないおうちをせっせと作っていた(夫の想像)息子は、この世界のことを少しずつ知り、発見して、1歳3ヶ月の今ではもうすっかりこの世界の人になった。
食べることが大好きで、ごはんにしよう、と言って準備を始めると、「ごっごっごー!」といいながらキッチンゲートの前で待ち構えている。
エレベーターのボタンを押したくて、よく行くスーパーではエレベーターが見える前から身を乗り出して指さしている。
公園や道端に自動販売機があると、点検せずにいられない。
意味のある言葉を話し始めた頃、「ママ」と言わせてみようと思って「まーま」と教えてみたら、にこにこしながら「ままま」と言った。
何回教えても「ままま」
そこから我が家での私の一人称は「ままま」になった。私にとって、「ママ」や「お母さん」ではない「ままま」が今、いちばんしっくりくる。
母になりきれていないということなのかしら、そんなのあんまりよくないのかもしれない、と思いながらも、それが等身大の私なのだから、これでいいのだ、とも思っている。