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設立2周年記念note「ママの休食は日本を変えたい 」

こんにちは。ママの休食を運営する株式会社MYPLATEの代表を務めます、しきです。

2021年2月9日に設立したMYPLATEですが、これまでママ向け宅食ブランド「ママの休食」を中心に、社食サービスや商品開発のサポート事業などに取り組んできました。たくさんの方に支えられながら成長してきた我が社は、先日2周年を迎えることができました

事業の要であるママの休食は、ママに休養と栄養を届ける宅食ブランドです。コロナ禍で外食の機会が減り、家での食事の機会が増えたことで、自宅で過ごす生活者に向けたサービスの需要が増えました。そんな影響から、宅食事業が存在感を高めている現在ですが、その中でも、ママの休食は「産前産後の女性向け」を謳っている点で、とてもニッチです(自分でいうのもなんですが…)。

ママの休食は、胎児の二分脊椎(先天異常)や低出生体重児の発症率の高さなどの日本の健康課題・社会課題に目を向け、コロナ禍に立ち上がりました。今回は改めて、この健康課題、“産前産後の女性を取り巻く健康課題を減らすことの重要性”について詳しくお話しできればと思います。

ママの休食が“ママ”にフォーカスする理由

胎児の二分脊椎(先天異常)の発生数が多い日本

妊娠初期(妊娠7週目くらい)につくられる脳や脊髄などの中枢神経系のもととなる神経管は、葉酸が不足することで「神経管閉鎖障害」を引き起こすことがわかっています。葉酸は、細胞の成熟に必要不可欠なビタミンB群の一種であり、妊娠初期の胎児の細胞分裂が盛んな時期には、とくに必要とされる栄養素です。さらに余談ですが、近年、動脈硬化や認知症、骨粗しょう症といった病気を引き起こす一要因であるホモシステインは、十分な葉酸摂取によって、その血中濃度を下げることが明らかとなっており、葉酸は、健康維持・疾病予防には欠かせない栄養素といえます。

さて、妊娠前からの十分な葉酸摂取が重要であることは、数々の研究により明らかになっているわけですが、アメリカやカナダでは、1998年より穀物などへの葉酸添加義務化により、同障害の発症率低下に効果を上げており、現在では、世界86ヶ国で食品への葉酸添加政策が行われていると聞きます。

一方、日本では、2000年に厚生省(現厚生労働省)から葉酸摂取に関する通達が出されましたが、諸外国のような国策による葉酸強化は実施されておらず、主要な神経管閉鎖障害の一つである二分脊椎の発生率は、通達が出された以降も減少傾向がみられません

出典:International Clearinghouse for Birth Defect Surveillance and Research.Annual Report 2014

神経管閉鎖障害:胎児のときに発症し、脳や脊髄に生まれながらにして異常をもった病気です。神経管は脳や脊髄などの中枢神経系のもとになるもので、妊娠初期(妊娠7週目くらい)につくられます。この神経管の形成がうまく行われないと、脳が作られず発育していない無脳症となり、流産や死産の割合が高くなります。二分脊椎は、背中の下のほうの神経管に“閉じわすれ”が起こり、中に入っている脊髄が飛び出してしまった疾患です。脊髄の中には神経が通っていますが、脊髄が外にさらされることで神経に損傷が起こります。

出典:次世代を担う皆さんに知って欲しい葉酸の話. 平岡真実 淑徳大学看護栄養学部 ビタミン 92(12): 560-563 2018.

日本の赤ちゃんの約10人に1人が低出生体重児

OECDの2018年のデータによると、日本の低出生体重児の割合は、ギリシャの9.6%に次いで9.4%と、2番目に高いのです。この結果は一時的なものではなく、この状態が2013年から変わらず続いています。

出典:OECD Health Status 2018(OECDがまとめた2018年のデータを基に作図 ※オーストラリア、フランス、チリは2017年データ引用)

低出生体重児:生まれたときの体重による分類では、2500g未満を「低出生体重児」と呼びます。 低出生体重児は、出生後にも医療的ケアが必要となる場合も多く、また発育・発達の遅延や障害、成人後も含めた健康に係るリスクが大きいことが指摘されています。

出典:平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「小さく産まれた赤ちゃんへの保健指導のあり方に関する調査研究」低出生体重児保健指導マニュアル

低出生体重児が多い主な理由の1つとしては、若い女性の「やせ」(低体重)の問題があります。妊娠前に「やせ」であった女性では、ふつう体型の女性に比べて早産や低出生体重児を出産するリスクが高くなることが懸念されています。また、妊娠中の体重増加の抑制も低出生体重児と関与していると考えられています。

日本は先進国であるにもかかわらず、胎児の二分脊椎(先天異常)や低出生体重児の比率が非常に高いという事実があり、産前産後の女性の支援強化が必要不可欠です。

産前女性はどれほど栄養が足りていないのか

20~30代の女性は、エネルギーや栄養素を不足なくとれているのか。とくに、産前女性の健康課題に焦点を当てて、その実態についてお話していきたいと思います。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」で定められた各栄養素の必要量を100%として、厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」の結果からエネルギーや各栄養素摂取量の充足率を算出してみました。

食事摂取基準では、推定エネルギー必要量、推奨量、目安量、目標量を引用。妊娠時については、妊娠中期の付加量を引用。

非妊娠時、妊娠時ともに、ほとんどの栄養素が必要量に達していません。妊娠時は、エネルギーや各栄養素量の必要量が増えるため、もっとも重要な栄養素である葉酸の充足率は51%、さらに鉄は42%とかなり低くなっています。体重増加に欠かせないエネルギーでさえも、非妊娠時82%、妊娠時76%程度にとどまっており、エネルギー・栄養素ともに摂取量が不足していることがわかります。

産前女性の栄養素摂取状況は、10年前と比較し悪化しています。こうした背景から、胎児の二分脊椎(先天異常)や低出生体重児の問題が深刻化しているのだと、私は考えています。

現代の食を取り巻く環境は確実に豊かになっており、数々の介入研究により、健康問題の背景や原因が明確になっていますが、良策が得られているかというと疑問が残ります。果たして、普及啓発活動だけで十分なのでしょうか。

支援の手は足りているのか

実体験より感じたこと

私は現在妊娠しており、間もなく5か月目を迎えます。妊婦健診もはじまり、定期的にクリニックに通っていますが、「葉酸や鉄をしっかりとりましょう」といった話はいまだ耳にしません。母子手帳の交付を受ける際に、地域保健センターでカウンセリングを受けましたが、そのときも、栄養指導はありませんでした。唯一あるとすれば、クリニックでもらったいくつかの資料と一緒に同封されていた葉酸サプリのチラシの説明を受けたことくらいです。

そんな私の信頼できる情報源は、先輩ママたちの声です。妊娠発覚後にTwitterで作った妊婦アカウントでは、日々励ましアイデアをくれるママたちがたくさんいます。出産経験者である母や姉の存在も非常に大きいです。

すべての妊婦さんが私と同じとは限りませんが、もっと頼りになると思っていた医療機関や自治体の存在が、今の私には、あまり心の支えには感じられないのです。

ママの休食に寄せられる栄養相談

ママの休食では、管理栄養士に栄養相談ができる機能があり、LINEから数々の栄養相談が寄せられます。その内容は、体重管理のこと、妊娠糖尿病や妊娠高血圧のこと、日々の食事のこと、カフェインや大豆イソフラボンのこと、妊活のことなど多種多様です。

※以下は、ママの休食に寄せられる栄養相談の一部です。

ママの休食が、このような栄養相談の機能を提供しているのは、食事のサポートだけでなく、ママ自身の不安にも寄り添いたいと思うからです。妊娠、出産、育児に不安はつきもの。そのため、知識やスキルのサポートの延長線上に“心の支え”としての存在価値があると思っています。

ネットを使えば、知識やスキルの向上につながる情報を手に入れることはできますが、心の支えという役割は、単なる情報には担えません。“人”が介入する価値はまさにこういった部分にあると考えており、「普及啓発活動だけでは不十分だ」と感じる理由もまた、同様です。

私が今、伝えたいこと

生活者に向けて

私は今、つわりがひどくてまともに食事がとれません。葉酸の必要性を理解しているからこそ、サプリでとろうと心掛けているものの、サプリですら喉を通らない状態です。

そんな私ですが、妊娠前から「ママの休食」の商品を食べていたし、そもそも葉酸の摂取をサプリ等で心がけていたという事実が、栄養が全然とれない今の不安を、少しだけ解消してくれています。

こんな状況だからこそ、声を大にして言いたい。将来、子どもを授かることを考えている女性は、今自分の思うように食事がとれるうちに、ぜひ栄養を蓄えてほしい、適切な体重管理を心がけてほしい、と。

企業や自治体が、生活者の健康づくりの一部を担ってくれる事例も増えています。生活者のより身近なところで、もっとあたたかな支援の手が増えるように、ママの休食がその役割を担うと同時に、必要性についても発信し続けていきます。

企業や自治体に向けて

現在の深刻な健康課題を予防・改善していくためには、単なる普及啓発活動にとどまらず、健康にアクセスしやすい生活動線の設計や、生活者が無理なく不足しがちな栄養素が摂取できる商品づくり、仕組みづくり、支援の強化が必要ではないかと考えます。

自治体あるいは地域や企業という組織単位で、社会の責任としても、もっと積極的に個人の意識や行動に変容をもたらすアプローチを行うべきです。

最後になりますが、現在の日本は、少子化が進み、さらにコロナの影響もあり、子どもの数が急激に減っています。こうした産前産後の女性を取り巻く健康課題を減らすことも、少子化対策の1つであると、私たちは考えています。


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