【短編小説】雨の日に傘を閉じて・前編
“久しぶりにしっかり降ってるな…”
タクシーの窓ガラスを伝う雨の雫を見て思う。
最近の都心の雨は梅雨時であっても気づくと傘を畳んでいたり、あるいは真夏のように局地的にザッと降ってカラッと上がってしまう事が多いが、この日は朝から足元で雨が跳ね返るほどの強い降りが続いていた。
沿道には紫陽花が鮮やかに咲き乱れている。子供の頃習ったリトマス試験紙を思い出す。酸性が青、アルカリ性が紫。
しかし最近の紫陽花は子供の頃に見たそれよりも、もっと色鮮やかになっている気がする。真っ青だっ