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掌編・短編集

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単発の掌編、短編小説を集めたマガジンです。様々なジャンルを展開します。
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#雨

【短編小説】雨の日に傘を閉じて・後編

そんな俺も執行役員まで昇り詰めたものの "会社を乗っ取ること" は辞めた。周囲からは「もっと早く独立すると思っていた」「このまま本当に天辺取ると思っていた」と散々言われたが、そういう期待を裏切るのもまた清々しい。 そして退職の日に社長からもらったのが、例の傘。新品をプレゼントされたんじゃない。 『俺の傘だけど、お前にやるよ』そんな感じだった。 * 社長は俺のために、何人かの幹部で簡素な "送別会" を開催してくれた。 肩書の付いたお硬い連中であったため、一次会で退散し

【短編小説】雨の日に傘を閉じて・前編

“久しぶりにしっかり降ってるな…” タクシーの窓ガラスを伝う雨の雫を見て思う。 最近の都心の雨は梅雨時であっても気づくと傘を畳んでいたり、あるいは真夏のように局地的にザッと降ってカラッと上がってしまう事が多いが、この日は朝から足元で雨が跳ね返るほどの強い降りが続いていた。 沿道には紫陽花が鮮やかに咲き乱れている。子供の頃習ったリトマス試験紙を思い出す。酸性が青、アルカリ性が紫。 しかし最近の紫陽花は子供の頃に見たそれよりも、もっと色鮮やかになっている気がする。真っ青だっ