君のいないこの世界で
―11月10日。
スマホの画面に表示されたその日付がなんとなく気になって、ほんの少し考える。
「・・・そうだ。今日は命日だ」
今日は、君がいなくなって14回目の11月10日。
計算が苦手な私は、毎年指を折りながら、こうして何回目かを数えるのだけれど、随分と長い時間が経ってしまった。
たとえどれだけ時間が経とうとも、毎年この日が近づけばいつも、1つの貝からつくられた君との最初で最後のペアネックレスを眺めては、そのことばかり考えていた。
けれど、今年は違った。
私の頭の中は、生徒たちのことでいっぱいだった。
そのことに気付いて、時の流れと、自分の薄情さに情けなくなる。
けど、これでいいんだと思う。
それだけ「今」を大切に、生きられるようになったという証だから。
本当に大好きな人だった。
過ごした時間は短かったけれど、何気ない1つ1つのことすべてが愛おしくて、幸せだった。そんな幸せをくれた人だった。
そして何より、自分を信じることができなくなっていた私に、命をもってその大切さを教えてくれた人。
だから、忘れられるはずなんてない。
けど、もうそろそろ、大切な思い出として、きちんとしまって生きていく頃なのかもしれない。
君がいなくなってから、どんな形でもいいから、会いに来てほしかった。どうして会いに来てくれないんだろうと思っていたときもあった。
けど本当は、君はいつも側にいてくれた。
誰にも愛されていないと孤独に飲み込まれそうになった夜も、
自分を信じられなくて不安に押しつぶされそうになったあのときも、
君と過ごしたあの時間が、
君が最期に教えてくれたことが、
いつも、私に前を向かせてくれた。
ずいぶんと時間がかかってしまったけれど、
ようやく、1人で歩いて行ける。そんな気がしてる。
君のいない世界は、つまらなかった。寂しかった。
けどね、今はほんの少し「君がいないこの世界も、悪くない」
そう、思えるようになったよ。
ありがとう、大好きな人。
安らかに。
私はもう少し、こっちの世界を楽しんでみるよ。もしまた出逢うことができたら、そのときはまたたくさん話をしよう。