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不耕起農法(機械と肥料を使わない)について、土の専門家のインタビュー記事(随時更新)
・株式会社DGCテクノロジー 土壌の生物性分析 【世界初】土壌微生物多様性・活性値(BIOTREX)
・2024年3月13日(水)あいだの探索・実践ラボ主催【Regenerative Life Dialogue vol.9】「環境再生とデータ〜土壌の微生物多様性・活性を評価する〜」講師:櫻本直美さん(株式会社DGCテクノロジー)
・「6億年ほど前、原初の土はシアノバクテリアと菌類の共生体「地衣類」によってつくりだされた。地衣類は有機酸を分泌することで岩石を溶かし、生存に必要なリン、カルシウム、カリウム等の養分を獲得していた。地衣類は収縮と膨張を繰り返し岩石を砕く。この地衣類の遺骸と砂や粘土が混ざり合ったものが地球上に現われた最初の土だ。
農業との関係で重要な微生物のひとつが「菌根菌」だ。菌根菌の誕生は植物が上陸した4億年前より古い。菌根菌は植物が自前の根を進化させるまでの数千万年間、植物の根の役割を果たしてきた。根ができた後もこの関係は今日に至るまで延々と続いている。ところが土にチッソやリンが豊富にあると、菌根菌と植物の協働は止まってしまう。それは、養分が少ない時代から菌根菌は植物と共に生きてきた微生物だからなのである。」(引用)
・世界中を巡る土の研究者であり、『大地の五億年』の著者・藤井一至さんのインタビュー記事。「リジェネラティブ(環境再生型)農業」、とりわけ「不耕起栽培」について国や素人が気軽に推進できるほど単純じゃないよ、という話をされています。
・5年前の藤井一至さんのインタビュー記事も。「いまなぜ土が「アツい」のか 土壌学者が語る「土・貧困・未来」の深い関係」
印鑰智哉さんFB投稿(2015/12/7):
あと3週間ほどで国際土壌年が終わる。すでに地球上の3分の1の土壌が失われ、このままの傾向が続けば、あと60年ですべて失われてしまう。この話を大学でしたら、SFみたいでわからないと言われた。
土壌が単なる物質、泥として認識されていればわからないかもしれないが、土壌とは実は大変な有機物で構成されている。手のひらの土壌には地球の人口を超える微生物が存在するという。でもその微生物が死に、有機物がこわされてしまえば、それは抜け殻になってしまう。
抜け殻になってしまえば、容易に水に流され、風に飛ばされ、あとに残るのは岩や石ころだけ。遺伝子組み換え作物で大量に化学肥料や農薬を入れた畑が何年かすると石ころばかりが目立つようになるという。土壌が失われていくからだ。
この土壌に世界の大半の二酸化炭素が吸収されていた。そしてその炭素は土の中の生き物の栄養源となっていた。太陽光による光合成によって植物が作り出す炭水化物が根を通じて土に入り、微生物がその炭水化物を吸収しエネルギーとするが、その微生物がもたらすミネラルが植物の栄養となっていく。その栄養は人間に食べられ、腸内の細菌にエネルギーを与え、その力でわれわれは食物を吸収し、エネルギーに変えていく。発電だけでなく、再生エネルギーはこうしてわれわれを含む自然を生かしてきた。再生エネルギーの循環は命の循環であり、化石燃料を使うことは死への道。
温室化効果ガスの排出を止める、発電を化石燃料ベースから再生エネルギーベースにすること、そして化石燃料に基づく工業化農業(化学肥料、農薬など)から土壌を生かすカーボン・ファーミング/アグロエコロジーへの転換、これが人類が気候変動の危機から脱出する2本の柱だろう。
At end of International Year of Soils, UN chief appeals for reverse in rate of soil degradation
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=52729#.VmTMtOOLQo-
Soil loss: 1/3 of our most fertile land has vanished in the past 40 years
・2024年12月26日(木)、講談社からブルーバックス新書『土と生命の46億年史』が刊行されます。
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印鑰智也さんのFB投稿(2018/7/25):
最近、話しをする時に微生物の話しから始めることが多い。地球に生まれたこの微生物の果たしている役割を知ることで今、起きている問題をより理解できるし、その解決策も見えてくると思うからだ。
微生物の力を借りて、植物もわれわれも生まれてきた。その力がなければ生き長らえることもできない。「共生symbiosis」という言葉は使い古されてしまったかもしれないが、根圏細菌Rhizobacteriaと菌根菌糸Mycorrhizal hyphae、そして植物の関係を知る時、あらためて生命が互いに支え合ってこの生態系を支えているか、そのダイナミズムに心を奪われてしまわざるをえない。
根圏細菌は植物に窒素やリン酸など植物の生存に不可欠の栄養を提供するだけでなく、植物を病原菌の攻撃から守る。しかし根圏細菌は動くことができない。一方、菌根菌糸は根が入り込めない地下の微細な部分にも分け入り、植物に必要なミネラルを提供していくだけでなく、動けないものたちをつなぐ地中のネットワークを提供する。根圏細菌はバクテリア、菌根菌はキノコの一種。植物が提供する炭水化物が微生物すべてのエネルギーとなる。この活動により、大気中の二酸化炭素は地中に炭素として蓄えられ、地面に有機質が蓄えられる。それが生命の基盤となる。
しかし、化学肥料の大量投入により、この循環が止められてしまう。共生菌による防御を失った植物はさまざまな病虫害にやられやすくなり、農薬が不可欠となり、その農薬はさらに土壌微生物の力を奪っていく。そして土の中の炭素が失われていく。膨大な気候変動ガスが土から放出されている。アル・ゴアの『不都合な真実』が語らない巨大な問題がここにある。
世界の少なくとも3分の1あるいは半分とも言われる土壌がこうしてすでに傷んでしまっている。土は地球上の炭素の最大の貯蔵庫であり、土壌劣化、喪失こそが化石燃料の消費と並ぶ気候変動の根本的な問題であり、逆に言えば、この土の回復こそが気候変動の解決策となる。その上で、主役はこうした微生物だ。
現在作られている薬の大部分は実はこうした微生物が作り出した物質が素になっている。抗生物質もまた微生物が作り出した物質から生まれた。彼らはまさに生命の源であり、われわれの生命をつなぐ栄養をもたらすものであり、そして生命を守る盾なのだ。
でも、人類はまだその存在のほんの一部しか知っていない。世界で存在が確認された真菌類は約10万種あるらしい。でもそれは真菌類全体の数%に過ぎないだろうという。人類はその存在や力を知る前にその貴重な存在を破壊しつくそうとしている。人類が知る前にこの多様な生命が失われつつある。そして知ることができたわずかな微生物には多国籍企業が特許をかけて独占しようとする。
だから、これは生存をかけた闘いとならざるをえない。多様な生物の共生に基づく世界を築くか、それとも、その絶滅をもたらす道を選んでしまうのか。どのようすればその危険を避けることができるのか?
それを語るドキュメンタリーが作れれば、大きな方向転換も可能になるのではないだろうか? 現在の危機から脱出するためには根本的な方向転換がどうしても必要だと思う。自分たちの命とそして世界の環境のつながり、そして現在のそれを破壊する動きが進んでいることが結びつけて理解されることは大きな行動の変化をもたらすだろう。
以下の短い短編フィルムは上記の話しの一部をわかりやすく語ってくれる。特に根圏細菌と菌根菌糸の役割の違いはおもしろかった。12分弱の英語だけど、動画見るだけでもイメージがわくと思う。
・印鑰さんFB投稿:「気候変動を激化させ、世界の土壌をあとわずか60年で崩壊させかねない状況に追い込んでいるのは戦争技術が作り出した工業型農業システム。
しかし、生態系のシステム、特に土壌微生物の動きに学び、その力を生かす農業に転換すると、現在の危機的状況は劇的に変えることができる。気候変動を抑制するどころか、かつてそうあった安定した状況にまで危険な技術を1つも使わずに取り戻すことができる。そんなことは夢のように思われるかもしれないが、科学者たちもその力に太鼓判を押す。
生気を失い砂漠化した工業的農業システムの畑に、豊穣な生態系の力を引き出す農園が広がる。そして、前者の農場で働くものは国からの補助金がなければ赤字経営になってしまいかねないのに対して、後者の生態系を生かした農園は大きな富をもたらす(米国の平均の1エーカーあたりの利益は3ドル以下、それに対してRegenerative Agricultureを実践する農家の農園は100ドル以上をもたらす)。だからこうした農業の進展が止まらない。年々強まる気候変動の猛威を前に希望を失っていると、なんという夢物語だと思うかもしれない。でもこれは夢ではなく、実際に動いている、十分達成可能なもの。
その姿を描いたドキュメンタリー映画 “Kiss the Ground”。Vimeoで120円で視聴できる(ただし、Vimeoは英語。字幕なし1時間25分)。Netflixでは日本語字幕もあるとのこと。ぜひ、多くの人に見てもらいたい(この映画はEarthmanshipの講座で参加された大野さんから教えていただきました。Netflixでは日本語字幕ありとの情報含めて、ありがとうございます)。
こうした農業を Regenerative Agriculture と呼ぶが、日本語では環境再生型農業などと訳してきたが、映画を見終えて、環境再創出型農業と表現した方がいいように思えた。再生という以上に創出(generate)するのだから。
ただ、このやり方にはいくつか気を付けなければならないことがある。
その1。土壌を守り、化学肥料や農薬の使用を減らしていくことで環境は戻ってくるのだが、この実践は今、大規模化されつつある。一定の大きな規模でもできることは環境を取り戻す上では意義はあるものの、これが小農の権利を奪うような形で進展する可能性も否定できない。企業型農業に吸収されてしまえば、いかに環境的に維持可能であったとしても社会的におかしくなってしまい、維持できなくなることはありうる。企業農業が社会的格差を作り出し、その格差を社会が解決できなくなる危険がある。小農の権利をしっかり守る視点が不可欠。この観点はこの映画は弱い。
そしてその2。Regenerative Agriculture で重視される不耕起(耕さない)農法だが、土を守るためには大事な視点だけれども、不耕起であればいいとは言えない。というのも実は遺伝子組み換え企業は自分たちこそが不耕起農法を広めてきたという虚偽の宣伝を重ねているからだ。いくら不耕起だからと言っても、土壌微生物を損なうラウンドアップや化学肥料を振りまくのではまったく不耕起の意味はない。こうした企業に乗っ取られないためには、種子のレベルから闘うことが不可欠にならざるをえない。はやりの動きに乗りたがる多国籍企業をどう押さえるのか、それにはやはり社会運動が不可欠なのだ。
小農の権利を守り、そして、遺伝子組み換え企業に対して種子を握られずに守る農業は世界ではアグロエコロジー+食料主権の運動として描かれる。その実現には社会運動の存在が欠かせない。いくら革新的な企業だとしても、その実現を代行することは不可能であり、この世界を実現させるのは、小農、消費者、市民が主人公となった社会運動が鍵となる。
Kiss the Ground
・印鑰智哉さんFB投稿(2021/1/4):
ファクトリー・ファーミング(工場型畜産、超過密飼育)が危険なウイルスや病原菌の温床となるだけでなく、気候変動や人びとへのさまざまな慢性疾患の原因ともなることについて書いた。しかし、畜産自体を非難するとしたら大きな間違いとなるだろう。
アラン・セイボリーは地球の砂漠化を防ぐ唯一の方法は畜産の活用であると説く。現在、大地の3分の2で砂漠化が進行している。気候変動の最悪の事象の1つ。なぜ、畜産の活用が唯一の砂漠化の防止策となるのか?
キーは炭素の循環(カーボン・サイクル)だ。炭素が循環することで環境の中の命が育まれる。植物は光合成を行い、土壌微生物を養い、その微生物の力で植物が生き、そして動物なども生きていくことができる。もし、動物がいなくなればどうなるのか? 微生物や昆虫だけでは枯れた植物を分解することはできない。分解されなかった植物の遺骸が植物の再生を止めてしまう。土壌微生物も死滅し、土が死んでゆく。砂漠化が進行するのだ。気候変動は激化し、水資源は失われる。生命が生きられない環境へと変化していってしまう。
自然はすぐれた循環システムを構築していた。草を食べる動物が植物を分解し、そして新たな肥料へと変える。草食動物が食べた後に新たな植物が再生していく。そして草食動物を肉食動物が襲う。肉食動物を怖れ、草食動物は群れをなして移動しながら行動する。この繰り返しが過剰に植生を破壊せず、植生を再生させることを可能にしてきた。食肉動物を絶やした結果、このシステムが壊れ、広大な地域で砂漠化が進行し、止めることができていない。しかし、自然を模倣する畜産、包括的に管理された牧畜システムによってそれを止めることができる。砂漠化した地域が蘇える。この方法もまた気候変動を食い止め、逆転させるための不可欠な方策の1つとなるだろう。
そして、自然な畜産を復活させるためにもやはりファクトリー・ファーミングでできた畜産品はボイコットして終わらせなければならない。
アラン・セイボリー: 砂漠を緑地化させ気候変動を逆転させる方法
・絵とき『地球環境を土からみると』松尾嘉郎、奥薗壽子著
1990年に出版された本ですが、30年の経過を感じさせない名著です。松尾嘉郎さんは京都大学の土壌学者で、退官後は有機農法を推奨して国内外を行脚していました。誰かが「易しい事を難しく説明する学者は多いが、難しい事を平易に説明出来る人こそ真に賢い人だ。」と言うのを聞いたことがありますが、正にその通り。松尾嘉郎さんの遺志は娘の壽子さんに受け継がれています。奥薗壽子さんはカリスマ家庭料理研究家と言われ、主に働く女性から絶大な人気がありますが、実はこの本では挿絵を担当されています。表紙の嘉郎さんの似顔絵もそうです。マルチタレントの彼女が家庭料理研究家として世に出たのも、この農文協の絵ときシリーズがきっかけだそうです。テレビチャンピオンの3分間クッキングで優勝した時、農文協の方から「ウチで料理本書いたら。」と言われて、書いた本がヒットして、その後出版社やテレビから引っ張りダコになったとのこと。
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40億年の生命誌からヒトの生き方を問い直そうとしている研究者・中村桂子さん。著書『人類はどこで間違えたのか――土とヒトの生命誌』から、土と人間との関わりについて興味深い話をご紹介します。
↓【原始の地球上に「土」が存在しなかったという驚き】
今週の本棚
『地球がうみだす土のはなし』=大西健夫、龍澤彩・文、西山竜平・絵
毎日新聞 2021/5/15 東京朝刊
(福音館書店・1430円)
土は何からできている? そう聞かれたとき、答えられる人はどれだけいるだろうか。私たちが毎日踏みしめ、生きる土台となっているにもかかわらず、実は知らないことばかりだと気づく。
噴火で飛び散った火山灰は、やがて粘土になり、水や空気、微生物と混ざり合う。生きもののフンや菌、虫の力も働いて、土は作られていく。その養分を吸った木の根や虫、動物たちのうごめきによって耕される。自分が変化する土に溶け込み、一緒にもまれているかのような錯覚をおぼえる。
著者は、水の専門家である水文学者と、日本の絵巻物の研究者という夫婦だ。夫による解説を、妻が読み手の目線で物語にしたという。地球をめぐる「水」を追った1作目に続き、水と深い関わりがある「土」を題材に選んだ。「科学」を地球の息づかいとして描く。
大きな岩から土ができるまで、100万年かかることもあるという。ダイナミックに循環しながら、気が遠くなるような時間を超え、足元に大地がある。(香)
・2月2日朝日新聞GLOBEの特集。「森は話す マザーツリーを探して」植物、菌類の世界はミラクルで、私の想像をはるかに超える社会があることがわかってきた。
樹木は単独で生きているのではなく、樹木同志、キノコ(菌根菌)を介して、独自のネットワークを作っているのだ。
生態系に天敵や農薬散布などの危険が及ぶと、それを知らせる機能があるということもわかってきた。
根、菌糸を介したコミュニケーションだけでなく、地上でも違うにおいを発して、周囲に知らせるという。
植物の世界は未来の地球に希望を見せてくれる。
人間は、植物界、菌類、全ての自然環境に生かされていることを忘れてはならない。人間が自然を支配できるなど、到底できないのだ。
この本もお薦めです
https://www.diamond.co.jp/book/9784478107003.html
「マザーツリー森に隠された「知性」をめぐる冒険」
ダイヤモンド社2023年発刊 スザンヌ・シマード (著), 三木 直子 (翻訳)
本の紹介文より
森林は「インターネット」であり、菌類がつくる「巨大な脳」だった──。
30年以上にわたり樹木たちのコミュニケーションを可能にする「地中の菌根ネットワーク」を研究してきた森林生態学者が明かす! 木々をつなぐハブとなる「マザーツリー」の驚くべき機能とは? 気候変動が注目されるいま、自然のなかに秘められた「知性」に耳を傾けよう。誰かとの「つながり」を大切にしたくなる、樹木と菌類の感動ストーリー!!
以下、朝日へのコメント
朝日新聞GLOBEはこのマザーツリーの記事をネットでまだ公開していない。朝日新聞は環境問題関連がイマイチなんです。ネオニコチノイドについてもこれまで記事がないし、PFAS問題も不十分!大手新聞なんですから、もっとしっかりやってほしい。
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・中村桂子著『人類はどこで間違えたのか』
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