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札幌弘栄堂書店北郷店、紀伊國屋書店オーロラタウン店の閉店から

8月31日をもって、札幌では二つの書店が閉店する。紀伊國屋書店オーロラタウン店、そして札幌弘栄堂書店北郷店だ。お気に入りの書店が閉店する悲しさはなんとも胸が塞がり、寂寥感で一杯だ。

閉店を機に、今回、初めて札幌弘栄堂書店北郷店を訪れた。中央区在住の筆者にとって、JR白石駅から徒歩10分という、特に用がない限りほぼ行くことがないため、これまで訪れる機会がなかった。初めてにして最後の北郷店訪問である。

訪れたのが閉店4日前ということで、ほぼ新刊は入荷しておらず、8割引で販売されていた文房具は全て売り切れていた。せっかくなので、何か買おうと決めていたが、閉店直前で品揃えの状態が良くなくて、購入の選択肢がほとんどなかったのが残念であった。
購入したのは、買い逃していた平野啓一郎『ある男』(文春文庫)、そして、FMAir-Gの「Be my radio」という番組で紹介されていた西加奈子『白いしるし』(新潮文庫)だ。この2冊を手にするたびに、北郷店で買ったことが同時に思い出されるのだろう。書店で本を買うことは、購入したときの思い出も同時に思い起こされることになる。これは、かけがいのない「思い出」として心に残ることになるのだ。

建物建て替えのため、隣接するマックスバリュー北郷店、GEOも閉店する。建物解体後の新築ビルに何が入るかは現時点では未定だ。もし可能なら、再び弘栄堂書店北郷店が復活することを願いたい。


紀伊國屋書店オーロラタウン店の変遷

私の記憶が確かなら、紀伊國屋書店オーロラタウン店は、かつて地上にも店舗があり、大学受験に時は、参考書の購入で大変お世話になった。その後、地上の店舗はなくなり、地下街の店舗だけになった。その地下街の店舗もかつては、通路を挟んで向かい側の両方にまたがっていた。現在、向かい側にはマクドナルドになっているが、そこもかつては紀伊國屋書店だったのだ。

思い返せば、地上にも店舗があった紀伊國屋書店オーロラタウンは、実に潤沢な床面積を誇っていた。あそこで出会えた参考書のおかげで志望校に合格したとも言えるわけで、大変な恩恵を受けた。当時は札幌駅に紀伊國屋書店札幌本店がまだ存在していなかった。

札幌弘栄堂書店には、桑園店、地下鉄店があった

むかしの札幌駅は、今のAPIAのような小綺麗な空間はなく、昭和の雰囲気が色濃く残る、札幌駅名店街という地下街であった。その札幌駅に君臨していた書店が札幌弘栄堂書店である。かつては札幌駅の東コンコースにも弘栄堂書店があった。他にも桑園店、札幌国際ビルの地下3階にも店舗が存在した時代があった。

昔のカバーには、経営母体のキヨスクのロゴと、かつて存在した店舗一覧が記載されている。

札幌弘栄堂書店桑園店には、桑園自動車学校に通っていた期間、講義や実習の合間によく店内をぶらついて時間を潰すのによく利用させてもらった(もちろん、ぶらつくだけでなく、何冊か購入したのはいうまでもない)。札幌国際ビルの地下鉄店は閉店後、文教堂が入ったが、そこも閉店して現在は居酒屋になってしまった。

9月末に閉店予定のパセオ西店も、かつては現在の倍のスペースの広さがあったが、いつの間にか改装して約半分のスペースとなり、元のスペースはセブンイレブンになった。

書店が姿を消す背景

こうしてみると、書店は次々と姿を消すか、規模の縮小を余儀なくされている。これも時代の流れだろうか。先日もある書店の前を通りかかった女性二人組が、「最近何か本読んでる?」「うん、電子書籍ばっかり」と話しながら、書店には入らず通過していった。ああ、そういう時代なんだなぁ、となんとなく寂しい気持ちになってしまった。

かつて700円台で買えた新書も、今では1000円を超えるのが当たり前になってしまった。翻訳の海外文芸作品はほぼ確実に1000円を超える。折しも、経済的不況や非正規雇用の増加で、読者の購買力が落ちているのも否めない。「本よりもパン」となってしまうのは致し方ないのかもしれない。

書店で「目に留まる」ことの価値

書店は冬の時代を迎えているが、一方で、蔦屋書店のようなカフェを併設した巨大な書店は、サードプレイスとして大変なにぎわいである。これからは、単に本を並べて売るだけでは書店としての魅力が感じられなくなるだろう。

だが、単にカフェを併設すればいいという単純な話ではない。何よりも大事なのは、品揃えのクォリティだ。断言できるが、Amazonのレコメンド機能だけで、予期せぬ面白い本にたどり着くことは不可能だ。リアル書店で新刊やフェア企画の棚をじっくり見ることでしか、面白いの本との出会いはありえないのだ。実際に書店の店頭で初めて目にすることで、「これは!」と、思える本が見い出されることがこれまで何回もあった。
この「目に留まる」という体験が重要である。
これこそ、書店で付与される「体験」として、ますます貴重な価値を帯びていくだろう。それに、スマホでは得られない情報、専門地を獲得できる媒体として、本以上の物は存在しない。
一方で、品揃えだけ良ければ安泰というわけでもないので、様々なレベルでの工夫がいっそう求められる。

まちの知的水準を維持する上でも、なんとか書店には踏ん張って欲しいと思う。

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