さようならパセオ、弘栄堂書店、サンローゼ、トムズカフェ
札幌駅の新幹線工事に伴い、2022年9月30日にパセオが閉鎖された。当たり前のように何百回、何千回と通学、通勤で利用してきた通路がなくなってしまうのはなんとも悲しいものだ。
一番困るのは、札幌弘栄堂書店パセオ西店が閉店したことにつきる。7月半ばにAPIA店が突如閉店し、白石の本郷店も店舗取り壊しのため閉店した。パセオ西店の閉店に伴い弘栄堂書店の屋号も消滅し、その長い歴史に幕を下ろした。
このパセオ西店には何度も助けられた。大きな書店を探しても見つからない本が、ひょっこり置いてある、ということが何度かあった。ついふらりと立ち寄れるので、特に用がなくても何が発売されているのかをチェックするためによく通ったものだ。
最終日に私が来店したのは午後5時頃。既に棚の本はだいぶ減っているが、隙間を感じさせないように整理が工夫されており、雑貨コーナーの棚は空っぽだった。ふだんなら見ないような客層が見受けられ、最後の思い出として購入する本を選んでいた若者が多かった。レジには長い行列ができていた。
自分も最後なので何冊か購入。
このブックカバーを付けてもらうのも最後。リアル書店で本を買うのは、ブックカバーを掛けてもらえるというのも一役買っている。どこで買ったかが一目でわかり、買ったときの記憶も甦るのだ。書店が消えると、カバーも消滅してしまって、二度と入手することができない。これはとても寂しいことだ。
いつの日か、どこかのテナントで札幌弘栄堂書店が復活することを切に望む。
購入後は、フロアを降りて喫茶サンローゼへ。
何年か前に、とある講座のグループのメンバーでだべったのもいい思い出である。最後に注文したのはチョコレートパフェ。当初はクリームあんみつを注文しようとしたが、売り切れとなっていたので、急遽注文をチョコパフェに変更したのだ。甘くてチョコレートソースが底までたっぷりと入っていた。私の周りのテーブルでも老若男女問わずチョコパフェを注文している人が多かった。この店はライトが絶妙に薄明るく、座っているだけでも気分が落ち着くのだ。ふと店の入り口を見ると、行列がすごいことになっている。サンローゼという空間を味わいたい人がたくさんいるのだ。
サンローゼを出た後は、パセオを一通り歩いてみる。最終日なので、みんな最後となるパセオという空間を名残惜しむかのように歩いていた。歩く人の数だけ、パセオの思い出がある。その思い出をかみしめるように、在りし日を思い浮かべながら、みんな行き交っているのだろう。
かつてパセオにはマルフルという激安の服屋があって、大学時代にはよく買っていたものだ。そのマルフルもいつの間にか閉店してしまって、パセオのアパレル店はほとんどが女性向けになった。それからパセオの中央から東側へ足が遠のいてしまい、トムズカフェのようなすばらしい喫茶店があるのを9月の半ばになってから初めて知った。
落ち着いて過ごせる名店なのに、最初で最後というのがなんとも寂しい…。
またどこかで復活して欲しい、という店がたくさんある。移転が決まっている店もあれば、パセオとともに幕を下ろす店も多い。パセオという空間の偉大さに胸を馳せるとともに、大いなる感謝の念を抱かずにはいられない。
今後、エスタも2023年に営業を終了する。今後ますます札幌駅の店舗が激減してしまい、買い物やランチに困る「難民」が続出することが予想される。新幹線開通まで、消えた賑わいが早急に復活することを願いたい。