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ロボットとのハグでも緊張はやわらぐ?

今日は『触楽入門 -はじめて世界に触れるときのように-』(著:テクタイル)から「身体をぎゅっと抱きしめてみよう」を読みました。

昨日読んだ内容を少しだけ振り返ると「ふれられないものにふれる」という話がありました。人は見えないものであっても信じることができます。例えばコンパクトな「肖像画」があげられていました。

大切な人の姿を水彩絵の具で小さな象牙に描き、肌身離さず持ち歩く。時間と空間が離れていても、肖像画に触れれば大切な人の存在を身近に感じる。つながりを感じる。大事なカタチを与えて実際にふれることで信じられる。

神社で売っている「お守り」もそうです。「何か」に向かって祈る。その「何か」は目には見えないかもしれないけれど、「お守り」というカタチを与え、触れることでより強く信じることができる。

客観的に観察される事実(ファクト)をつかむ力も大切ですが、等しく目には見えない何かに触れる力、つながりを感じる力も大切であるはず。偏らずに中庸に。

さて、今回読んだ範囲では「抱きしめるとき何が起こるのか」というテーマが展開されていました。

相手を包み、相手に包まれる。それがハグ。

「ハグをすると何が変わるのだろう?」という問いについて、変化を調べた実験が紹介されていました。実験参加者のカップルを2グループに分けて、スピーチをするものです。グループの違いは、「スピーチの前にハグをするかしないか」です。

人間は危機に直面すると、戦うか逃げるか、そのどちらかにすぐ取り掛かれるように、交感神経が優位となり、血圧や心拍数が上がり、興奮した状態になります。人前でスピーチをすることは、こうした緊張状態をもたらすため、どちらのグループでも血圧や心拍数が上昇します。しかし、その変動量に違いがあり、「ハグあり」のグループでは、「ハグなし」グループに比べて、心拍や血圧の上昇が低く抑えられていました。

人は危機に直面すると交感神経が優位になり、血圧や心拍数が上がる。ドキドキすることありますよね。そんなとき、どのようにして緊張を和らげるでしょうか。学生時代に所属していた吹奏楽部の想い出がよみがえるのですが、コンサートの舞台に立つ前に緊張すると先輩から「お水を飲みなさい」とアドバイスをいただいたものです。

話を戻すと、日本では日常的にハグをする習慣はあまりないように思います。もし緊張を和らげる効果があるとすれば、習慣化されてもいいように思うのですが、何が抵抗になっているのでしょうか。

ハグは相手との距離を縮める行為ですから、相手に対する信頼や安心が前提になってきます。以前「心地よいものに触れると孤独感が和らぐ」という話がありましたが、心拍や血圧の上昇が低く抑えられたのは「ハグしたときの感覚を身体が覚えている」からではないでしょうか。メカニズムは明らかになっていないことも多いそうですが、そのような気がします。

ロボットとのハグでも緊張はやわらぐ

ハグによる身体へのポジティブな効果を得るためには、ハグする対象がロボットでもよい。そのような事例が紹介されていました。「ハグビー」と呼ばれるコミュニケーション・ロボットで、電話機能の他に抱きしめることを考慮してヒト上半身の形をしています。

住岡さんらは、このロボットをハグしながら会話をした場合には、電話だけでのコミュニケーションよりもストレスホルモンである血中のコルチゾール量が下がることを発見しました。パートナーの存在を言葉だけでなく身体でも感じることによって、生理状態、心理状態にポジティブな影響がもたらされるのです。

ロボットをハグしながら会話しても、ストレスホルモン(コルチゾール量)が下がるとは驚きでした。人もロボットも等しく緊張を緩和する効果が得られる。「身体で感じる」ことは頭で考えることとは違う。ロボットなんて…と先入観を超えて、身体は直感している。

握手とハグを対比してみます。接触面の広さに注目してみると、手と身体の表面積では、身体のほうが圧倒的に広いです。握手もハグも相手を包み、相手に包まれる営み。無防備な自分、素の自分をさらけ出すことで初めて深いつながりを感じる、ということなのかもしれません。

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