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成功すると脆くなる?

今日は『反脆弱性』(著:ナシーム・ニコラス・タレブ)から「ストア哲学の「心を頑健にする法」」を読みました。

脆さと反脆さについて色々と考えると、「何が脆さを生み出すのだろう?」という問いに立ち戻ります。

成功は非対称性を生み出す。得るものよりも失うものがはるかに多くなるので、脆い状態になる。

成功が非対称性を生み出し、得るものよりも失うものがはるかに多くなる。著者は「資産」を例に挙げており、莫大な資産を築いてしまうと、失うほうに意識が向いてしまうとしています。

頭にふと浮かんだ言葉は「アンラーン(Unlearn)」でした。成功体験を得てしまうと、その体験に囚われてしまい、本来得るものが得られなくなる。

「非対称性」あるいは「逆説」に注目するというのは非常に興味深いです。

古代の人々は、このような善と悪、利と害の非対称性を理解していたに違いない。リウィウスはセネカよりも半世代も前に、こう記している。「人間は善よりも悪を強く感じる(segnius nomines bona quam mala sentiunt)」。古代の人々は、「リスク回避」とか「損失回避」といった考え方に基づいて理論を築いてきた。

「人間は善よりも悪を感じる」という言葉がありますが、ピンとくるでしょうか。善と悪に近いと思うのが、長所と短所。人の長所よりも短所が目についてしまう。そんなこと、ないでしょうか。

対置される概念は均衡しているようで、非対称かもしれない。それは人の身体的、心理的な特性によるのかもしれません。自然に潜む対称性、非対称性に意識を向けてみると何が見えるでしょうか。

実際、心を"最悪"の状態にセットしておくという方法には、癒し以上のメリットがあった。最悪の状況がはっきりとしていて、ダウンサイドに一定の限度があるようなタイプのリスクが負えるようになるのだ。物事が順調なとき、常に最悪を想定しつづけるのは難しい。だが、自制がいちばん必要なのはそういうときなのだ。

成功している時ほど最悪時を想定する。心を最悪の状態にしておく。それは「悲観的」ともまた違うように思います。

一定の歯止めをかけながらリスクをとっていく。それは「反脆さ」そのものではないでしょうか。反脆さとは「衝撃やストレスにさらされたとき、潜在的損失を補ってあり余る潜在的利益が生まれる性質」のことです。

リスクを限定するとは、まさに潜在的損失が過剰にならないようにしながら将来の利益を享受する姿勢です。

知的な生活とは、痛みを感じなくてすむように感情を位置づけることなのだ。そのためには、自分の財産を頭の中で帳消しにし、失う痛みを感じないようにすればいい。そうすれば、世界が変動しても悪影響を受けることはないのだ。

「知的な生活とは、痛みを感じなくてすむように感情を位置づけること」

何かに挑戦する。確実に成功、失敗が決まっていないからこそ「挑戦」になるわけです。そのときに上手くいかなくても、そこから何かを学び糧にして次に進んでいく態度にこそ「知性」が表れるのかもしれません。

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