環境と経済。二つの持続可能性。
今日は『植物は<未来>を知っている 9つの能力から芽生えるテクノロジー革命』(著:ステファノ・マンクーゾ 他)から「持続可能な未来のために、植物が教えてくれること」を読みました。
海の上をフロンティアとせよ。人口増加とともに高まる食料需要を満たすために農地を開拓する必要がある。地球に存在する水の97%は海水であって、海の上であれば水に困ることはありません。海水に含まれる塩分などを上手に調整することができれば、です。
著者は「ジェリーフィッシュ・バージ」と呼ぶ海上農園を発明し、太陽光による水の蒸発・凝結を活用した淡水化の仕組みによって海水を真水に変え、ミネラル分が含まれない真水に一定の海水を加えて植物の生育に適した水を作り出し、海上での農作物の栽培に成功しました。
では、そのような持続可能性を実現するような発明が広がってゆくのか、と言われると必ずしもそうではないようです。環境的な持続可能性のみならず経済的な持続可能性も必要とされる、というわけです。
資源・エネルギーが形を変えながら循環する装置。環境負荷というコストが市場で考慮されるならば、低環境負荷での農作物が評価されるはずで、そのような農作物を支え、育てる土台としての「ジェリー・フィッシュ」も評価されるはずです。
市場で評価される価値・費用とは一体何なのでしょうか。そもそも評価するためのモノサシとして適切なものとは何でしょうか。
「市場にとって重要なのは、利益を増やせるシステムで、地球の資源を消費することなく人々を食べさせるシステムではない」との著者の言葉は、非常に重要だと思います。
誰もが無料で使うことができるシステム。金銭的利益を生み出すことはないかもしれないけれど、生活や生命を支える何かが生み出され、隅々まで行き届いてゆくシステム。
そのようなシステムのヒントは「自然に学ぶ」ということにある。特に植物が持つ、環境への適応的な進化能力に注目する。本書はこれにて読み終えますが、また読み返したい一冊となりました。