がん免疫療法の副作用 免疫チェックポイント阻害薬が効く理由と副作用が起きる理由
がんの治療の一つに「免疫チェックポイント阻害薬」があります。がん免疫療法の一つです。免疫療法って怪しくない?と思ったあなた、そうなんです。怪しいと言いましょうか、効果が検証されていないものもあります。それの話ではなく、こちらは治療の効果が検証されていて、保険診療の対象になっている免疫治療の話です。その免疫療法が効果を出す仕組みを知ると、副作用の理由もわかります。
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が嘘をつけなくするお薬です。
がん細胞は非常に賢くて、免疫にやられないように上手に嘘をついています。「自分は正常な細胞です」という信号を出すので、免疫細胞の攻撃対象にならないのです。
ちょっとだけ作用機序を説明します。めんどくさい方はここは飛ばしてください。私たちの体を異物から守っている免疫細胞はがん細胞も攻撃して壊していく作用があります。しかし、がんは賢くて「自分は正常細胞です」とウソの信号を出すので、免疫細胞は気づかずに「よし、合格」とスルーしてしまうのです。
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞の信号を受け取るセンサーに作用して、センサーを働かなくします。がん細胞が「正常細胞です」とウソをついても、そのウソを受け取るセンサーそのものが働かないので、目の前のがん細胞のウソに惑わされずにがん細胞を攻撃します。ウソがバレたがん細胞は免疫細胞にやられて、小さくなっていきます。これが作用機序です。
免疫チェックポイント阻害薬の効果
がん細胞が免疫細胞に「正常です」ってウソをつけなくなると、免疫細胞はがん細胞を攻撃できるようになります。免疫細胞ががん細胞を攻撃してくれるので、がん細胞減らすことができます。
免疫チェックポイント阻害薬にも副作用がある
自分の免疫でがんをやっつけることができるので、一般的な抗がん剤よりも吐き気や脱毛などの副作用は少ないと言われています。一般的な抗がん剤と働く仕組みが違うからです。しかし、この「免疫のセンサーに先回りしてセンサーを働かなくする」と、別の困ったことが起きます。がん細胞以外の自分の細胞も攻撃し始めてしまうことがあるのです。
そもそも、免疫チェックポイントは悪者ではありません。異物と自分の細胞を見分けて、自分の細胞は攻撃しないための安全装置です。
免疫チェックポイント阻害薬は、このセンサーの働きを邪魔しますので、自分の正常細胞なのかどうかもわからなくなってしまうことがあります。その結果、自分の正常細胞を攻撃してしまうことがあります。自分自身の細胞を攻撃して起こってしまう副作用で、免疫関連副作用と言われます。
というわけで、自分の免疫を使うからといって、万能で副作用のない治療ではありません。
免疫の力を引き出す治療、と言われるとすごく良さそうですが、効果と副作用のコントロールが必要な治療のようです。
不確かな免疫なんとか治療に惑わされないで
がん患者さんとお話をしていると、治療を決めて頑張るわ!という前向きな時期と、とても不安な時期の繰り返す波のような感情を体験されています。この中で、不安なときに良さそうな自費診療や、医療ではないセラピー的なもので痛みも副作用もない、治療と併用できる、などと魅力的な情報に引き込まれる気持ちはよくわかります。当たり前です。自分の命ですし、自分の毎日は少しでも痛みや苦しさが少ない方がいいです。でも、それ、本当に治療?と一旦立ち止まってください。そして、治療を受けている医療チームの医師・薬剤師・看護師さんたちに相談してみてください。
本当に問題なければ、別にダメとは言われないはずです。