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政体循環論について考える

公認会計士の三浦真です。

今日は、政体循環論について、考えてみたいと思います。

先日、総選挙がありました。

国のビジョンを語る候補者、ビジョン実現までの施策を語る候補者、そして、これまでの政策の課題から改善を訴える候補者は、いましたか。

どうしたら、次の世代も平和に、豊かに暮らせるか、具体的な施策、道筋、フレームワークを語る候補者に、私は、出会えませんでした。

裏金の話、助成金補助金の話が、多かった。

民主主義から、衆愚政治に陥っている、という恐れを抱いています。

選挙で問われることなく、なし崩しで進む、日本の移民の話に、私は脅威を覚えます。安全のため衝突が起こらないように考えるのは、立法府と行政府のお仕事じゃないかな。

大事なことが語られない選挙を繰り返しても、お金の無駄、と考えます。

候補者の質の低下を嘆きますが、それは、必要な教育が国民に届いていないから、と考えます。

「今の日本は、本当に、民主主義国家と言えるのだろうか」と疑問を感じています。

選挙では、政策よりもスキャンダルや裏金の話ばかりが報じられ、将来のビジョンや外国人労働者の受け入れについての本質的な議論は行われていません

一方で、私たちは高い税金を支払い続けています

それにもかかわらず、労働人口が減り、企業はどこも人材採用に苦労しているのに、国が明確な未来像を示していないことに大きな不満を感じています。

これが「衆愚政治」への移行だとしたら、次に訪れるのは「君主制(権威主義)」ではないか、と感じざるを得ません。

これは、古代ギリシャの哲学者ポリビオスが提唱した「政体循環論」に通じる話です。

今回は、この「政体循環論」を考えつつ、現代の日本にどのように当てはまるか、考えていきます。

1. 政体循環論の概要

政体循環論は、古代ギリシャの哲学者ポリビオスが提唱した政治体制の変化に関する理論です。

世界史で習った方もいらっしゃると思います。

彼は、政治体制は一定のサイクルで循環すると考えました。

彼の考えによれば、政治体制は以下の6つの段階を一定の順序で移り変わるとされています。

  1. 君主制:1人の優れたリーダーが現れ、国家を導く。権威主義。

  2. 王政:法に基づく、正統な王が国家を治める。

  3. 貴族制:少数の優れた者(貴族)が協力して国家を運営する。

  4. 寡頭制:貴族が腐敗し、少数の特権者が私利私欲のために国家を支配する。

  5. 民主制:民衆が政治の主導権を握り、平等な政治が行われる。民主主義。

  6. 衆愚政治:民衆の感情が暴走し、大衆の感情的な判断が優先される無秩序な政治が行われる。

そして、混乱を収めるために強力なリーダー(君主)が求められ、再び、君主制に戻るのです。

この循環は繰り返されると彼は考えました。

歴史を学ぶと、そんなような感じもありますよね。

面白い考えだと思います。

私は、民主制は良い制度だなと感じています。

2. 現代の日本と政体循環論

では、現代の日本の政治体制をこの政体循環論に当てはめて考えてみましょう。

1. 民主制から衆愚政治への変化

現在の日本は「民主制から衆愚政治へ移行しているのではないか」と考えています。

民主制では、国民が議論を行い、投票によって政治家を選びます。

しかし、現在の選挙では、感情的なメディア報道やスキャンダルが選挙結果に大きな影響を与えるようになっています。

  • SNSの影響
    SNSでは感情的な意見が拡散しやすいため、冷静な議論よりも感情的な批判が優先されがちです。「バズる」情報が選挙結果に影響する状況は、まさに衆愚政治の兆候です。

  • 短期的な人気取り
    ポピュリズム政治家が登場し、選挙のためのバラマキ政策が増えています。これにより、長期的な国家の利益が軽視されるようになっていると感じます。

このような現象は、衆愚政治の状態なのではないかと心配になります。

2. 君主制(権威主義)の復活

衆愚政治が行き着く先は「権威主義(君主制)」です。

混乱した世の中では、人々は「強いリーダーを求める」ようになります。

現代では、ロシア、中国はじめ、権威主義の国が、民主主義の国より数の上で、多数となっています。強力なリーダーシップを発揮し、国家の安定を主張しています。

また、国家の緊急事態(戦争、経済危機、パンデミックなど)では、政府の権限が一時的に強化され、権威主義的な支配体制が受け入れられやすくなります

  • 日本の将来の可能性
    政体循環論に照らすと、「衆愚政治が続けば、いずれ強力なリーダー(君主)を求める声が高まる」と考えられます。日本もいずれ、権威主義的なリーダーの登場を受け入れる状況になるかもしれません。

3. どうすれば「衆愚政治」を回避できるか

政体循環論では、完全に1つの政体で安定を保つことは難しいとされていますが、いくつかの対策があります。

  • 1. 教育の強化
    国民が政治を感情的に判断しないようにするためには、メディアリテラシーや政治教育が必要です。選挙の際にも政策や未来ビジョンを議論する場が必要だと思います。経営者、リーダーはビジョンを語ることを怠らないようにしましょう。

  • 2. 政治家の質を高める
    ビジョンを語る政治家が増え、過去の施策の結果を適切な方法で評価して、改善する施策を提案できる候補者が増えれば、感情に訴えるだけのポピュリズム政治は抑制されます。結果を出せない経営者が交代するのと同様です。

  • 3. 国民が冷静な判断をする
    SNSの影響を受けにくい選挙制度や、情報の質を担保するメディアの役割が重要です。日本人は流されやすいと聞きますので、私を含め、冷静な判断ができるようにしましょう。多数の人の意見を聞く、証拠を集めるなど、日頃からどういう行動が冷静な判断に必要なのか、考える必要があると思います。

4. まとめ

ポリビオスの政体循環論は、現代の日本を考える上で重要なヒントを与えてくれます

  • 民主制 → 衆愚政治 → 君主制(権威主義)の流れは、日本でも見られ始めているように思います。幸せな人が増える方向であれば、良い変化、ですが、私は幸せな人が減る方向の変化と考えます。

  • SNSの台頭や、スキャンダル中心の選挙報道は、衆愚政治の象徴です。人は完璧ではないから、失敗することもあると思います。大切なのは、やってみて、評価して、そこから何を学び、どう改善するかです。

  • 衆愚政治の末に訪れるのは、強力なリーダー(権威主義的な支配者)です。もし、万が一、権威主義的な支配者が、将来、現れたら、顧問として、外部環境の変化に適応するように、お仕えする経営者には、助言するでしょう。ただし、独裁者に従う国家経営は、少数の幸せしか実現できません。

この流れを止めるには、国民一人ひとりが冷静な判断を行い、ビジョンを語れる政治家、ビジョン実現までの施策を実行できる政治家を選ぶことが必要です。

過去の歴史を振り返ると政体循環論は間違ってはいない気がします。私たちは歴史に学び、この循環を意識し、今後の政治の行方を見つめる必要があるのではないでしょうか。

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