にっちもさっちもいかない日銀
メキシコの孫娘が通う小学校は、子どもたちの学校での様子をSNSにアップしている。そろばんを使った授業風景もあった。日本は今では小学校で数時間だけ教えているようだが、この学校は熱心に取り組んでいて、通知表にもそろばんだけの評価がある。
私の子どもの頃は、そろばんをランドセルに差して通学していた。商店には、使い慣れた大振りのそろばんが大抵あった。上手に使えると銀行や経理の就職に有利と言われ、そろばん塾の看板もよく見かけた。
一方で遊び道具にする子らもいた。当時、トニー谷というボードビリアンが、そろばんをリズム楽器のように巧みに振り人気があった。これを真似して教室で「シャカシャカシャッシャッ」と鳴らしたり、そろばん玉を車輪にして「そろばんカーレース」を競ったりしては先生に叱られた。
日本では16世紀末から広く使われており、そろばんにまつわる慣用句もたくさんある。「にっちもさっちも」は、そろばん用語が語源である。漢字では「二進も三進も」と書く。「二進」とは2割る2、「三進」とは3割る3のことで、ちゃんと割り切れる。そこから「二進も三進もいかない」が、うまくいかない、身動きがとれない意味になったそうだ。「にっち」「さっち」は「二進」「三進」の音の変化による。
4月から日銀総裁になった植田和男さん。黒田東彦前総裁による10年間の異次元金融緩和で、巨額の国債があり簡単に金利も上げられない。にっちもさっちもいかない日銀を引き継いだが、「ご破算で願いましては」とアベノミクスへの決別宣言をいつするのか。